<<トランプ大統領「イラン攻撃に青信号」>>
12/30、イスラエルの大手ヘブライ語新聞・Yedioth Ahronoth イェディオト・アハロノトは、一面トップ記事で「トランプ大統領、イラン攻撃を承認」と大きく報じている。その英字ニュース・ynetnews は、「イラン攻撃に青信号」と報じ、イスラエルが待ち望んでいたイランへの青信号であり、これは、「トランプ大統領はイランのミサイル増強に対するイスラエルの行動を支持し、核問題への米国の介入を誓った。これは、イスラエルが先制攻撃を仕掛けるのか、それともイランが次のラウンドを形作る最初の一撃を放つのかという疑問を提起する。」と述べた後、その詳細を以下のように報じている。(ynetnews 2025/12/30)
* 「今、イランが再び勢力を拡大しようとしていると聞いている。もしそうなったなら、我々は彼らを打ち倒さなければならないだろう。徹底的に叩きのめしてやる。だが、そうならないことを願っている」とトランプ大統領は語った。
* イランが弾道ミサイル戦力の再建や核開発計画の再開を試みた場合、米国は介入するかとの質問に対し、トランプ大統領は前者については「イエス」、後者については「直ちに」と答えた。
* トランプ大統領は、珍しく率直な言葉でイスラエルへの支持を肯定し、イランの長距離重精密誘導ミサイルによる脅威を認め、中国がテヘランを支援している可能性が高いとの認識を示したものの、具体名までは言及しなかった。彼は、イランの能力を弱めることを目的としたイスラエルの計画された作戦を公的に承認するところまで行った。
12/30のネタニヤフ首相とドナルド・トランプ大統領の会談の結果は、同盟国間の通常の協議といったものから、対イラン戦争拡大、さらなる壊滅的な地域戦争拡大への転換点となり得る、危険極まりないものである。
イスラエルのネタニヤフ首相にとっては、トランプ氏をイランとのより広範な戦争に引きずり込むことに自己の政権継続の命運をかけてきたのであるが、いわば一歩前進であろう。 なにしろ、イスラエル国内でのネタニヤフ政権支持率は、今や、イスラエル在住のユダヤ系住民のわずか4分の1、イスラエル在住のアラブ系住民のわずか17%強でしかない。エルサレムの超党派のイスラエル民主主義研究所(IDI)が実施した直近の世論調査では、ユダヤ系イスラエル人の67.5%、アラブ系イスラエル人の76%が、自分たちの意見を的確に代表できる政党は存在しないと回答するという驚くべき結果であった。12月下旬に実施された別のIDI世論調査でも、ネタニヤフ首相の続投を望むイスラエル人はわずか15%という、末期症状である。
ともに支持率の低下に悩まされ、翻弄されている、トランプ、ネタニヤフ両氏は、危険な戦争政策推進で事態の転換を計ろうとしているわけである。
<<イラン:「全面戦争に突入している」>>
同じく12/30、このような危険な事態の進展に対して、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、イランが米国、イスラエル、そして欧州と「全面戦争」に突入していると宣言し、新たな攻撃に対してより断固たる対応を取ることを明確に表明している。同時に、イランは、一貫して核兵器開発の追求を否定し、核開発計画は平和目的であることを明確にしている。
「イラン・イスラム共和国は、いかなる侵略と抑圧に対しても厳しい対応を取り、後悔させるだろう」とペゼシュキアン大統領はXニュースで表明している。
この表明には、今年6月の「12日間戦争」と呼ばれるイスラエルの奇襲攻撃に対して、イランのミサイルが猛烈にイスラエルに降り注ぎ、イスラエルのミサイル防衛システムがあと1日で尽きる寸前という状況に陥いらせ、多くの国々がイランに圧力をかけた結果もあり、イランは「停戦」に同意したのであったが、その際、イランは、「イスラエルが再びイランを攻撃すれば、再び停戦は行われない」と明言していることを想起させるものであり、それが「厳しい対応を取り、後悔させるだろう」という表明となっている。
イランと同盟関係にあるロシアのプーチン政権は声明で、「イランとその核開発計画をめぐる緊張の高まりを控え、2025年6月に彼らが犯した致命的な過ちを繰り返さないよう呼びかける。この過ちは、イランにおけるIAEAの検証活動に深刻な悪影響を及ぼした」と述べている。(スプートニク 2025/12/30)
ここ数週間、トランプ政権はカリブ海域で国際法に明確に違反して、各国の商業タンカーを拿捕しているが、拿捕された船舶の一つ、ベラ1号はイラン産原油を積んでいたと報じられている。12/17、トランプ大統領は、「ベネズエラに出入りするすべての制裁対象石油タンカーの全面封鎖」を発表し、「この包囲は今後さらに拡大し、彼らにはかつて見たことのないような衝撃が降りかかるだろう。彼らがかつて我々から奪った石油、土地、その他の資産をすべてアメリカ合衆国に返還するまでは」とまさに露骨な帝国主義戦争の開始を宣言している。
そしてまた、台湾への大規模な武器移転など、トランプ政権の戦争挑発のさまざまな同時行動は、イランと中国両国に対するより広範なエスカレーションを示唆しており、トランプ政権のあがきとも言える強硬路線を露呈させている。
年明け早々の、危険な展開が危惧される事態の進展である。緊張緩和と平和への外交・経済政策の全面的転換こそが喫緊の課題であり、要請されている。
(生駒 敬)
