【日々雑感】最近涙したこと、その2

【日々雑感】最近涙したこと、その2

 今から思えば、あー、この夏は何と暑い夏だったことだろう。お天道様に痛め付けられ、日本中の人々が、焼き尽くされんばかりの猛暑を味わいました。多くの人々が熱中症で亡くなりましたね。毎日、夕刊を配達している私でさえ、頭がクラクラーとなり「これはヤバイ」と感じたことが2度3度とありました。
 そんな8月の下旬だったでしょうか。灼熱の炎天下で、細身の中年の女性が、80才位のおじいさんを背中に負ぶってヨロヨロと歩いては休み、を繰り返し、座り込んでいるのを目にしました。そのおじいさんは、足がお悪いらしく、難儀しているようでした。私は見兼ねて、「どうしたのですか?手伝いましょうか?」と声をかけると、そのご婦人は、気の毒そうに「お願いします。」と言われました。私は、おじいさんを私の自転車の後ろの荷台に座らせ、ご婦人に後から支えてもらい、自転車を押しながら、ゆっくりゆっくりと運んでおりました。その時2人の若い建設作業員が声をかけてくれて、「力仕事やったら、俺らにまかせとき」と、おじいさんを2人で背負い、私は、おじいさんのお尻を支えて運びました。細身で痩せてはいるが背の高いおじいさんで、身をまかせきった時には、人間1人がこんなに重いものかと感じさせられました。私が必死の思いで、お尻を支えていると、2人の若者から「おっちゃん、息が上がっとるなー」と笑われました。1kmほどの道のりを、旧家の一軒家の玄関に、おじいさんを運び入れ、お礼の缶ジュースを1本ずついただいて、3人とも名も告げずに、その家を後にしました。
 この件は、これで終わったと思っていたのですが、何と言う偶然でしょう、私が大腸ガンで手術をした病院へ、2ヶ月に1度の術後通院をした10月半ばのこと、診察待ちしていた多くの人の中に、あのおじいさんがおられたのです。親族の方々と共に付き添っておられたあのご婦人が、私の顔を覚えておられ、ツカツカと私のそばに寄ってこられ、お礼を言われたのです。「あの折は本当に有難うございました。お名前や住所も伺わず申し訳ございません。あの2人のお兄さん達の住所も教えていただけませんか?あんなに狭い地域のことだから、いつかはお目にかかれるのではと思い、いつも3枚のお礼の封筒を持ち歩いておりました。どうぞお受け取りください。」と小さな手かばんの中から商品券の入った封筒を、押しつけるように渡されました。私は固く固辞したのですが、再三にわたっての親切に断りきれず、拝み手をして拝受しました。数m離れた所から「どうぞどうぞ」と笑顔で手を指し出している、おじいさんを見た途端、私はボロボロと、溢れる涙を、押さえることができませんでした。
 ”かけた情は水に流し、受けた恩は石に刻め”とは、私の最も好きな格言ですが、そのご婦人のお心使いに感謝しつつ、その場でお別れをしました。「あの2人のお兄さん達は、道の途中にあった、○○という看板が出ている、小さな建設事務所に入って行かれましたよ。」とお教えしておきました。
 小泉政権以来の、この殺伐とした格差社会で、人々が自分のことで精一杯、他人のことまでかまってられぬ、見て見ぬふりをすることは、当り前の砂漠社会で、厄介なことには、関わりたくないと考え勝ちですが、社会的弱者や手助けを求めている人々に、手を差し伸べる、小さな勇気を、自分の心のなかで、育ててゆきたいものです。恥ずかしいから等の気おくれを振り払い、困っている人には、できる人が、できる形で、できる限り係わってあげたいものですね。最低限でも一声、声かけをすることの大切さを学ばせてもらいました。(早瀬達吉) 

 【出典】 アサート No.396 2010年11月27日

カテゴリー: 雑感 パーマリンク