【コラム】ひとりごと —迷走する民主党に思う— 

【コラム】ひとりごと —迷走する民主党に思う— 

 ○民主党政権の迷走が続いている。尖閣問題、小沢問題、そして柳田法相の失言問題とマスコミネタに事欠かない。○しかし、どうもそれだけではないようである。マニフェストを墨守するべきか、否かの議論にも繋がるが、民主党のコアな理念がはっきりしないことであろう。○小泉路線=極端な市場原理主義・新自由主義に対して、「生活が第一」を掲げ、ポジションとしては、中道右派的な立場を取ったことや、「消えた年金」問題や自民党の政権たらい回しに飽きた国民の選択により政権交代が実現したのは、つい1年前のことであった。○私自身は、民主党独自の理念が曖昧になってしまったのではないかと思っている。鳩山の「友愛」や「アジア共同体構想」、「温暖化防止政策」までは、理念として、「民主党らしさ」を映してはいた。○財政再建問題の解決にあたって、民主党の「看板」であった「事業仕分け」だが、費用対効果に純化する傾向が強かった。確かに官僚の天下り先を確保するような「無駄な事業」は、徹底的に廃止すれば良い。ただ、行政の守備範囲には、費用対効果だけでは判断できない事業・仕事がある。○福祉や教育の分野に多く見られる。まさにこうした分野に「民主党らしさ」を出さなければいけない。○旧来の自民党的手法に対して、際立った政治運営の手法さえも、明確にできていない。小沢書記長時代には、利益誘導・配分型政治への回帰とも映る手法が復活されもした。○
 そこに、尖閣問題などのように、深刻な国際問題が起こると、経験のなさからか、官僚のサボタージュなのか、迷走としか映らない混迷が生じて、非常に不安定な印象が目立ったのである。○尖閣問題だが、私は自身は明らかな海上保安庁の「暴走」が発端だと見ている。そこに民主党の外交戦略の不徹底が重なり、事件解決を長引かせたのではないか。○映像流出事件で我々も「事件映像」を見ることができたが、故意の衝突とは見えにくい。船上での始末書を確保することで十分ではなかったか、と思う。○中国政府も、反日デモを当初は容認していたが、反政府の要求が色濃くなった時点で、沈静化へと舵を切った。この動きも十分に予測できる範囲だろう。○結局、民主党の基本政策が明確でないこと、、政権としての政策方向の徹底、行政機関・官僚への徹底がされていない事を浮き彫りにしたにすぎない。○TTP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題も同様であろう。突然の首相発言のように報道されているが、この議論は自民党政権時代から始まっている。そして、民主党内で「内紛」状態などと報道され、目も当てられない。○関税なき経済関係は望ましいものであり、少なくとも輸出なしに成り立たない日本経済である以上、基本的に前向きに考えることが大切だというのが基本であろう。その上で、デメリットをどう解決するのか、だと私は思うが、党内論議不足が原因であろうが、この問題でも民主党の混迷と映っている。○私の仕事分野である生活保護行政を見ても、民主党政権になったからと言って、ほとんど何も変わっていないし、何か新しい政策提案や制度運用の変化は見られない。○本気で考えているなら、生活保護法の改正議論を主導すべきであろう。リーマンショック以来の失業問題への政策は、ほぼ麻生政権末期の政策が、ほとんどそのまま延長されているにすぎないのである。○政権発足直後の昨年末は、東京の派遣村やハローワークでの「ワンストップサービス」の実施に向けて、相当の労力が費やされたように思うが、今年は、あまり聞こえてこない。若干の労働市場の上向き感があるものの、すでに生活保護受給者が激増した後なのか、「政権の危機感」も薄れているのだろうか。○補正予算審議は、尖閣問題・柳田法相発言問題で時間を取られているが、本当の勝負は、来年度予算であろう。ただ聞こえてくるのは、確かに「増税」議論ばかりだ。○再来年からだろうが、介護保険本人負担の2割化や「環境税」の新設。そして、少し封印された感のある消費税問題。○2回目の予算編成こそ、「民主党らしさ」を鮮明にすべきである。ただ、その「民主党らしさ」が少々怪しくなってきているのである。○民主党には綱領がないらしい(?)。私も確認していない。選挙マニフェストがそれに替わるものだそうだ。ここにも問題がある。ここの政策の羅列では、一貫性は生まれない。私自身は、社会民主主義的な方向であるべきと思うが、実際は、新自由主義に傾斜した議員が多いのも事実である。○山口二郎氏の近著「ポピュリズムへの反撃」に詳しいが、現在の民主党は「新しい政治」を理念・政策・実行手法を貫いていく必要があるのではないか。○菅総理は、「市民派」であったが「革新派」ではない、という話もある。○混迷が続くようなら、政権空中分解の恐れは十分に迫っている。(佐野秀夫) 

 【出典】 アサート No.396 2010年11月27日

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