【編集部への通信】井上 清著『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』 

【編集部への通信】井上 清著『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』 

 読者のKさんより、尖閣諸島問題につき、井上清著『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』(著者は京都大学名誉教授、1996年、第三書館発行)の紹介を強く勧められた。
 本書は、最初、現代評論社から1972年に刊行されたもので、その2年前から「尖閣列島」(歴史的には正しくは「釣魚諸島」)の領有権をめぐって日中間の争いが激しくなり、「日本政府とその与党はもとより、社会党も共産党も、マスコミ諸紙もいっせいに尖閣列島は明治28年(1895年)以来、日本が「無主地」を「先占」して領有し実効的支配をしてきた日本領であると主張してきた。「この日本側の主張に、日本帝国主義の再起の危険性を強く感じた」著者は、この問題の「歴史的真実、および国際法理上の真理を明らかにすることが先決である」として研究に取り組み、現代評論社から発行されたものであった。1973年2月には、本書の中国語訳『釣魚列島的歴史和主権問題』(英憲訳、香港・七十年代雑誌社)も出された。
 1972年の初めまではこの問題への関心は高かったが、72年9月、日中両国政府の共同声明で国交が回復し、日中平和友好条約締結の交渉が進む過程で、中国側は、釣魚諸島問題の解決は後世の人の知恵にゆだね、当面はこの問題を棚上げにしようという方針をとるようになり、日本政府も表向きは騒がなくなっていた。ところが、「1996年に入って、日本側は再び釣魚諸島に荒い波風を起こし、右翼の団体が釣魚諸島の一つの小島に灯台を建て、日本政府もそれを禁止しようとしない重大な対中国挑発行為」が高まる状況で、「24年前の本を再び世に問う」ことにしたのが1996年であった。
 そして、2010年、再びこの問題が日中間の重大な係争問題としてクローズアップされているが、著者の主張はきわめて明快で、一貫している。それは、国際法上の「無主地先占」はまったく根拠がない。だから、尖閣諸島は中国領である、というものである。その歴史的解明は、以下の目次のように行われている。

1.なぜ釣魚諸島問題を再論するか
2.日本政府などは故意に歴史を無視している。
3.釣魚諸島は明の時代から中国領として知られる
4.清代の記録も中国領として確認している
5.日本の先覚者も中国領として明記している
6.「無主地先占の法理」を反駁する
7.琉球人と釣魚諸島との関係は浅かった
8.いわゆる「尖閣列島」は島名も区域も一定していない
9.天皇制軍国主義の「琉球処分」と釣魚諸島
10.日清戦争で日本は琉球の独占を確定した
11.天皇政府は釣魚諸島略奪の好機を九年間うかがいつづけた
12.日清戦争で窃かに釣魚諸島を盗み公然と台湾を奪った
13.日本の「尖閣」列島領有は国際法的にも無効である

 以上、Kさんからぜひ読者の皆さんに知っておいてほしいあらましを、編集部によりまとめて、意義ある本書の紹介といたします。(I) 

 【出典】 アサート No.396 2010年11月27日

カテゴリー: 政治, 書評 パーマリンク