【投稿】「再編と改革」が進む東京都立病院

【投稿】「再編と改革」が進む東京都立病院

 2001年4月独立行政法人制度が導入され、国立病院の法人化も決定されている。
 東京都では石原知事の提唱のもと、病院経営本部は「都立病院改革実行プログラム」(H15年1月)を出し「365日24時間の安全・安心と患者中心の医療」を目指して「東京発医療改革」を推進している。

  すでにこれまでに
 1、「東京ER・墨東、広尾、府中」の開設
 2、「都立病院の患者権利章典」の制定
 3、カルテ開示開始
 4、母子保健院の閉鎖
 を行っており、いっそうのコスト削減など経営改善を実施し、さらに15の都立病院の再編整備と「医療サービスの向上」を進める予定である。
 本当に患者中心の医療は実現するのか、本稿では、都立精神病院について考察する。
 都の精神医療を代表するM病院では、病床削減が進んでいる。平成20年までに1160床から890床へ削減の予定で、今年度すでに約60床が削減されているが、そのほとんどが転院と思われる。
 「日本全国で35万人といわれる社会的入院患者の7万2000人を地域に返す」という厚生労働省の指針に合致させていると思われるが、ほとんどが地域に帰る退院でなく転院であることは今後に大きな問題をはらんでいる。

<精神科救急の現状は>
 『脱入院化』を進めるには、精神科救急医療体制を整備し『365日24時間の安心』を用意しておかなければない。
 2003年10月精神科救急学会で発表された「東京都精神科救急医療体制の実績(2002年9月からの7ヵ月間の実績)をみると『電話相談 3387件、24条警察通報(自傷他害の恐れありとして110番通報して病院に連れて行くこと) 2347件、2次救急 146件、身体合併症救急15件』となっている。電話相談の数の多さと実際に受診161件(146+15)のギャップの大きさと警察ルートの多さ2347件が目立つ。この数字からは「なぜ、警察のお世話にならないと治療が受けられないのか」と素朴な疑問がわく。精神病者は『犯罪と同じルート』でよいという考えがあるとしたら「差別」そのものであり、医療を受ける権利が等しく保障されるように東京都の精神科救急体制そのものを再構築すべきである。
 さらに、退院して地域で生活して行く上で外来通院時・また退院時に十分な服薬指導が不可欠である。現状で何%の各患者が十分な指導を受けているか調査が必要だ。
 つぎに「怖くない精神病院」を実現すること。何をされるかわからない精神病院でなく、本人が嫌なことは拒否できるよう「説明と同意」を真摯に追求すべきである。
 これまでは「精神耗弱、混迷状態で話してもわからない」と患者の了解なしの電気ショック療法が日常茶飯事におこなわれていたのではなかっただろうか。患者中心の医療が言われるようになった現在でも、家族が承諾書へ署名することで無制限に医師に電気ショック療法の実施が委任される。気がついたら「記憶を失う」など侵襲的な治療をされた後だったということも起きているのではないだろうか。
 さらに「一度入院すると鉄格子と鍵のかかった病室から生きてニ度と出られない」と思われている精神病院では、患者は気安く受診できない。また家族もよほど悪くならない限り本人が嫌がる病院に連れていけない。そして本当に『精神症状も、身体症状もすごく容態が悪化してから、それも24条警察通報として医療機関に連れて行かれる』そんな状況が読み取れる。患者からみれば「信頼できる医療」とは程遠い。
 大切なのは「早期に直して退院させる」との医療側の明確な意思とその実行である。
 つぎに任意入院の患者は原則、開放病棟で処遇し退院の自由を保障すること。
 最後に、上記のさまざまを保障するために「患者の権利を擁護する代弁者の制度」の創設が不可欠だと考える。軽症のうちに受診でき、短期の入院治療と在宅医療、24時間救急
受け入れが可能になってはじめて脱入院化政策は有意義なものとなるであろう。
 身体的な病状で救急病院に行っても「精神科の通院歴がある人は精神病院へ行きなさい」と診療拒否され、死んでしまった例が先の学会でも報告されている。
 また、開かれた精神病院をめざしてユーザーと医療者の話し合いの場を労働組合が主催し、13回を重ねている「ご近所フォーラム」という会でも、参加者から不幸な結果になった診療拒否の例が何度か報告されている。
 
 <管理当直;32時間拘束の危険性>
 看護師は3交代(8時間拘束)であるが、薬剤師、検査技師、放射線技師と医師の労働条件は、「管理当直」という32時間連続勤務である。2日間の昼勤務と中の一夜間の勤務となり、翌日朝の9時にも帰れず「代休」といわれる休みもない。
 これは、労働基準法や男女共同参画社会の実現の配慮とは程遠い現状である。乳・幼児の世話、老病の親の介護など、家庭での役割はまったく無視されている。労基法の「人たるに値する生活を営むために必要をみたすべき」という理念は「人として家庭で果たす役割も大切」と私は考えるが間違っているのだろうか。
 『管理当直」では、朝の9時から翌日の夕方17:45分まで勤務しなければならない。人の命をあずかる緊張と正確で適切な判断が要求される。夜間でも仕事ができる状態で待機していて呼ばれれば眠らずに仕事をする、「明け」と言われる代休すらない。次の日はまた朝9時から夕方まで勤務しなければならない。「昼過ぎには眠くてたまらない、無意識に仕事はできるがハッとすることがしょっちゅうある」と管理当直経験者は異口同音にいう。
 組合も勤務条件の改善のために再三申し入れをおこなっているが、東京都は無視しつづけている。そのつけは、労働者が病気になったり、過労死したり、子供の世話や親の介護の必要から退職を余儀無くされたり、さらには医療事故となってあらわれる可能性も否定できない。
 「公務員の人件費削減」「給与削減など公務員攻撃」は不況から失業が増えている世間には受けがいいのかもしれない。しかし税金を何に使うことが本当に必要なのか?何時間も眠っていない医師や医療従事者の医療行為を受けなければならない状況が望ましいのか?
 1日も早く本当に患者中心の精神科医療が実現することを望むものである。(E.T)

 【出典】 アサート No.312 2003年11月22日

カテゴリー: 労働, 医療・福祉 パーマリンク