【投稿】金融危機と金融再編成

【投稿】 金融危機と金融再編成
                    by 島田秀和

〈資産デフレによるキャピタルロス続く〉
 バブル崩壊後は、決算期の3月、中間決算期の9月には金融危機が問題となる状況が繰り返されている。その根底には、土地・株式の長期低落傾向、いわゆる資産価格デフレに歯止めがかからないことがある。「2002年度経済白書」によると、「バブルが崩壊した90年以降、日本経済全体では、株式と土地併せて1158兆円のキャピタルロスが生じた。このうち、土地が737兆円、株式が424兆円である」という。この資産デフレによる調整圧力は長期にわたる景気の低迷と同時に金融機関には多額の不良債権を抱え込ませることとなった。こうしたデフレ不況の下に、これを口実、免罪符に過酷なリストラと統合・合併という独占促進政策が金融界、産業界いずれにおいても何でもありの形で進められているのが現状である。

〈増え続ける不良債権〉
 全国銀行ベースによると、2002年3月期までの過去10年間に81兆円という多額の不良債権処理が行われてきた。それにも拘らずリスク管理債権として公表されている不良債権残高(破綻先債権、延滞先債権および貸出条件緩和債権)だけでも、なお42兆円という過去最高額になっており、これによる不良債権比率(リスク管理債権/貸出金)も8.9%まで上昇している。このように毎年増え続ける不良債権は、景気低迷による企業の業績悪化と金融庁の特別検査実施等による厳格な資産査定の結果、貸し剥がし・貨し渋り・支援打ち切り等により償却・引当額が増加したものである。増え続ける不良債権を銀行の業務純益と有価証券の益出しにより償却・引当を行ってきたが、最近は株価の下落により含み益どころか含み損を抱える状況に至っており、大手銀行は赤字決算を余儀なくされる程銀行の経営体力は低下の一途を辿っている。

〈金融機関の破綻と再編成〉
 1997年11月三洋証券が会社更生法申請を行い、経営破綻を表面化、続いて北海道拓殖銀行、山一證券、德陽シティ銀行が破綻する事態となり、金融システムは激しく動揺し、危機に見舞われて以降2002年3月までに破綻した先は、銀行が12行、信用金庫が25信金、信用組合が115組合もある。
 1998年4月金融機関の経営の健全性を確保するため、自己資本比率に応じて必要な是正措置命令を発動することができる早期是正措置制度が導入され、同時に金融機関の自己査定に基づく債権の分類もおこなわれることとなった。1999年に導入された債権分類の基準を示した「金融検査マニュアル」は、大企業を基準に作成されたものであり、中小零細企業を主な取引先とする中小金融機関、とりわけ信用金庫、信用組合といった協同組織金融機関にとっては厳しいものになつた。さらに、ペイオフ実施のため全ての金融機関が安全・健全でなければならないとすることで、これまで地方自治体等で行われていた中小金融機関の検査が金融庁に移り、これまで以上に厳しい資産査定分類がおこなわれた。このため、もともと過小資本であった信用金庫、信用組合は多額の償却、引当金の積み増しが必要となり、債務超過に追い込まれ、前記のように短期間にこれほど多くの破綻につながったと推測される。
 このわずか5年の間に、都市銀行においても、東京三菱、みずほ、UFJ、三井住友の4フィナンシャルグループおよびりそなグループに合併・統合されるという凄まじい変貌を遂げた。また、地方銀行も1県2行という当時の柳沢金融担当大臣の方針に添って現在も統合・再編が進行中である。

〈金融再生プログラムと竹中ショック〉
 2002年9月金融担当大臣が竹中平蔵経済財政担当大臣の兼務となり、10月に「金融再生プログラム」をつくり、金融システム強化策を打ち出した。そこには「資産査定の厳格化」「自己資本の充実」「コーポレートガバナンスの強化」規定されており、当初案どおり実行された場合は、大手行の一部でも事実上の国有化が視野に入ってくるかもしれない内容を含むものであった。これに対して、銀行業界は特に「自己資本の充実」のための「税効果会計の見直し」については激しく抵抗、先送りになったが、「資産査定の厳格化」のための特別検査が実施されるなど大手銀行にとっては早急に対応を迫られることになった。そうして発表されたのが、苦肉の策としての増資や合併差益を利用する帳簿操作などであったため、一層市場からの不信を買い、大手行の株価は暴落、増資により調達した分は株式の評価損で消えた勘定になった。こうした銀行側のなりふりかまわぬ対応により、3月危機は取り敢えず今回も先送りされることになったが、貸し渋り・貸し剥がしの一方で超低金利下の国債保有は増え続け、また、待ったなしの生保対策も進まず、危機の構造はさらに深化しただけであった。政も官も企業も単なる自己保身のみに汲々とし、利用者、労働者にシワ寄せするだけのその場凌ぎの対策を重ねるだけでは問題は解決しない。

 【出典】 アサート No.306 2003年5月24日

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