【投稿】「脱組織」「脱原発」とマニフェスト

【投稿】「脱組織」「脱原発」とマニフェスト –福井県知事選をふりかえって–                
4月13日に行われた福井県知事選挙では共産党を除く全政党相乗り・県内ほとんどの団体から推薦を受けた西川一誠元副知事が薄氷を踏む勝利を収めた。当初、参議院議員の山崎正昭氏が知事選に回る予定だったが中央でのヤミの候補者調整により西川氏に一本化され、「無党派候補」元外務官僚の高木文堂氏との事実上の一騎打ちとなり、万全の体制によって楽勝の予定であった。ところが、選挙戦突入後、「ハコモノ行政」批判、「地方空港計画の失敗」追求、脱原発を掲げる高木氏の猛追に合い、中央から野中広務衆議院議員や森元首相、最終盤には山崎拓幹事長が訪れるなど、必死の巻き返しを図っての「勝利」であった。
両者の得票数の差はわずかに4万6千票であり、西川氏は敦賀市をはじめ原発の集中する若狭地域で6~7割の支持を得たものの、大票田の福井市では逆に高木氏に3千票あまり差をつけられる結果となった。組織のない草の根運動の高木氏がここまでの肉薄したのは、企業、職能団体、農協、労組などの組織の集票力が確実に低下していることの現われである。特に高木氏の選挙を支えたのは公共事業・補助金・高収入といった「組織」の恩恵に属さない中小企業やパートなどの主婦層であった。こうした層が「利益誘導政治」から最も遠い立場で積極的に運動に加わったといえる。
今回の選挙のもう1つの争点は「脱ダム」ならぬ「脱原発」であった。もんじゅ違法判決をはじめ原発政策全体が行き詰まる中、もし福井県に「脱原発」知事が誕生してはという焦りから、太田房江大阪府知事までも動員して西川氏のテコ入れを行った。高木氏には結果として「若狭地域での得票率の少なさ」(西川氏は若狭地域で得票差の65%を稼いだ。)という裏目に出たが、「脱」というにはその経済的影響が大きすぎて誰も正面から言い出しにくかった福井県の原発の今後について大きな方向性を示したといえる。ところで、東京電力管内では現在ほとんどの原発がストップしており、「今夏には750万キロワットの電力が不足する」と盛んにキャンペーンを張っているが、現状のまま推移すれば「脱原発」が自動的に”実証”されてしまうことになろう。にもかかわらず、選挙戦の借りからか、西川新知事は「もんじゅの運転再開」について最高裁判決以前にも判断を示す意向を示している(4月23日:知事就任記者会見)。
争点の3点目はマニフェストであった。統一地方選前に三重県の北川前知事が提唱したものである。西川氏のマニフェストは行政機構内部で作成されたもので、高木氏への対抗上打ち出した「副知事の民間からの起用」以外は現状追認であり新味に欠けるものばかりであった。一方の高木氏は「脱原発」を除き、この肝心なマニフェストに弱点を抱えていた。たとえば「県庁職員の200人の民間研修」といった具体性のなさを終盤に突かれることとなった。最終盤に伸び悩んだ要因の1つとして説得あるマニフェストを用意できなかった不備があったのではないか。そもそも”政策集団であるべき”政党が担ぐ候補がマニフェストとも呼べないような雑煮「マニフェスト」をはずかしげもなく掲げ、素人集団であるはずの「無党派候補」にマニフェストを求めるというところに日本の政治の現段階での悲劇的水準があるが、逆説的に、4年後までには「無党派」という名の”政策集団”が「組織」を凌駕することを期待したい。(福井:R)

 【出典】 アサート No.306 2003年5月24日

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