【コラム】ひとりごと–自治労事件に思うこと

【コラム】ひとりごと–自治労事件に思うこと

○とんでもない事が起こった。労働組合と右翼(暴力団?)が関係、そして簿外口座の存在、そして簿外の借入金の存在。金額も億単位。どうしてこんなことが労働組合で。連日のマスコミ報道に少し気が滅入る。○一方では、これは先の参議院選挙で郵政族の高祖議員派の摘発に対抗して、自民党内から自治労・労組潰しの攻撃意図があるんだ、との意見もある。特にこの秋は、公務員制度改革が正念場を迎える時期である。○だとしても、である。組合費や組合共済の剰余金などは、あくまでも組合員の財産である。組合からの組合離れが進んでいる中で、一番公明正大にしなければいけない組合財政への信頼が揺らぐとなれば、最悪の事態といわねばならない。○毎日新聞はその主張で「組合費を払うに値するか」と厳しい論調で、述べている。読んで見て少しムッとするほど厳しい内容だが、率直に受け入れるべき内容だ、と思う。○私は、旧来の労働組合観、それは「社会主義」や「政治革新」を暗黙の了解事項とするような組織感覚から早く脱却するべき、という意見を持っている。これらの組織感覚は決して運動方針には出てこないが、明らかに底流に存在する意識である。それは目的のためには少々の逸脱も許される、目的が正しければ(正しいと思っていれば)、許されることもある、というような感覚である。旧来の左翼組織にも共通の感覚である。○組合は、NPOの一種というくらいの感覚が必要である。そして組合費は執行部に預託された活動資金ということになる。大組織になればなるほど、組合員一人ひとりの顔は見えなくなり、遠くなる。この距離をどう埋めるか。○幸い自治労の場合は、単位組合の連合体であり、本部への組合費はあくまでも、単位組合からの上納金方式であり、単位組合は独立して執行権・交渉権を持っている。だからこれが、すぐに組合脱退につながるケースはそれほど多くはないと思う。もちろん共産党からの組織破壊は覚悟しなければならない。○だからこそ、徹底した真相究明と公開、責任の明確化が求められている。組織が萎んでいくのは、権力の弾圧からのみではない。組織構成員からの信頼が失われる時である。この試練を正面から乗り越えていく中にしか、信頼の回復は有り得ないのである。(佐野) 

 【出典】 アサート No.287 2001年10月20日

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