【投稿】経済恐慌の始まりとパンデミック危機--経済危機論(18)

<<「ドミノ倒し」ブラックマンデー>>
3/9、週明け月曜日のニューヨーク株式市場は、主要企業でつくるダウ工業株平均が歴史的な急落となった。終値は前週末比2013・76ドル(7・79%)安い2万3851・02ドル。1日での下げ幅は、これまで最大だった今年2月27日(1190ドル)を抜いて史上最大となった、パニック売りを誘発する、まさにブラックマンデーである。同市場では売買を15分間停止する「サーキットブレーカー」が自動的に発動され、下落幅は一時2100ドルを超える事態である。続く3/10、東京株式市場も続落し、一時1万9000円を下回ったが、終値1万9867円で2万円割れの事態となっている。欧州株も軒並み大幅安となり、ドイツの株価指数は7.9%安、フランスも8.4%安、イタリアは11%安、英CMCマーケッツのアナリストは「株式市場は『血の海』となった」とまで述べている。
株式市場は、新型コロナウィルスによる全世界的なパンデミック危機の拡がりに加え、石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」の協調減産体制が崩壊し、サウジアラビア対ロシアによる石油価格戦争の勃発で原油安ショックが広がり、3/9、原油価格は1バレル=32.09ドル、前日比22.3%も暴落、下げ幅は一時30%を超え、昨年末比実に52%の下落であり、1バレル=20ドル台さえ予想される「ドミノ倒し」が進行、株式市場はまさに原油市場からの「火に油を注ぐ」事態に見舞われたのである。

世界中の金融市場が不安と急落に押し流され、収まる気配がない、崩壊寸前の段階にきている、と言えよう。2月末から3月第一週にかけて、ニューヨーク株式市場は累計3000ドル以上も下落、つい直前、1カ月前の2/11史上最高値を更新した2万9551ドルからすれば実に5700ドルもの下落である。
世界の株式市場は例外なく大きく下落し、明らかに、2008年の世界的な金融危機以来最悪のクラッシュの局面のただなかに浮き沈みを繰り返す、新たな危機の段階に突入しているのである。金融危機の進展と、実体経済が恐慌局面に移行する最悪の事態への進展が差し迫っており、株式、債券、資産などのすべてのバブル資産が実質的に大幅に減価する、紙切れと化す事態、まずは、一部あるいは多くの金融機関の破綻が発生する可能性がきわめて高い事態に直面していると言えよう。

<<株急落「フェイクニュースのせい」>>
表面的・現象的には、新型コロナウィルスによるパンデミック危機と同時進行であるが、あくまでも主たる危機の進行を牽引しているのは、金融市場の肥大化したバブルである。年間外貨取引総額が955兆ドル、実に世界のGDP総計63兆ドルの15倍以上という異常な金融市場の実体経済に対する独裁、マネーゲームを支え、肥大化してきたバブルをもはや維持することができなくなりつつある、経済的にはもちろん、政治的・社会的にも許されない段階に来ているのである。各国政府・中央銀行はこの期に及んでも、超低金利による金融緩和、金融資本救済策程度しか処方箋を持ち合わせておらず、相も変わらず、米経済の基本は健全であるなどと主張する米連邦準備制度理事会のパウエル議長の発言は、何の状況好転ももたらさず、今や市場からも見放される事態である。
そして、パンデミック危機はこの経済危機の原因ではな

いが、この危機をより一層深化・拡大させる触媒としての役割を果たしていることは間違いがない。その意味ではパンデミック危機は経済危機と明らかに結合しており、実体経済に非常に大きな打撃を与えている。このパンデミック危機にいかに対処するかが、感染拡大防止と結合した、経済危機打開の可能性をも大きく左右することは間違いないであろう。
トランプ米大統領は3/9、株が急落したのは「フェイクニュースのせい」だとツィートし、コロナウイルス感染拡大を“過大”に報じるメディアを批判し、フェイクニュースで株価が暴落したとまで極言している。進行する経済危機と感染拡大に対して、現職の大統領がこんなことしか発言できないのは、喜劇を通り越して悲劇であろう。
トランプ氏は、感染拡大をできるだけ過小評価し、サンフランシスコ沖で停泊しているクルーズ船「グランド・プリンセス」乗客の下船を拒否したり、同船の21人の感染拡大もアメリカの感染者数にカウントしない、感染検査拡大を妨害するなど、駄々をこねてきたことなど、安倍首相と全く同じである。トランプ大統領がコロナウイルス緊急チームのタスクフォースの責任者に任命したペンス副大統領は、進化論を信じず、科学を徹底して信じない福音派の原理主義者として知られており、彼が最初の会合で公開した会議の動画は、メンバー全員が祈りをささげている場面であった。「ウイルスに対処する政府機関の会合は、公の祈りの写真撮影の機会ではない」とごうごうたる批判が寄せられる始末である。メンバーは17人、女性1人を除いて他はすべて男性、製薬大手のロビイストや投資顧問やビジネス界が大半を占め、当初、医師は2人だけであったが、バーニー・サンダーズ上院議員から「科学者ではなく政治的な陰謀」だと非難されて、医師2人が追加された。こんなタスクフォースに期待することなど到底できないであろう。パンデミック危機を拡大こそすれ、最大限利潤追求の絶好の機会として、新自由主義による市場原理主義を徹底して追及するタスクフォースだと言えよう。
要請されているのは、このような新自由主義政策を許さない、パンデミック危機に対応できる、より強力な社会的セーフティネットの構築であり、そこに大胆な財政出動を発動させることこそが、危機を緩和し、経済危機をも緩和させることができる最善の道であることを示すことであろう。何よりも優先されるべきはウィルス検査の拡大と診断、治療の無料化、緊急支援の強化であろう。ここでも、新自由主義の自由競争原理主義に対抗する、ニューディール政策こそが要請されている。
(生駒 敬)

 

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