The New York Times International. Edition on February 13, 2020
“A new scaly suspect in the hunt for a virus host”
By James Gorman (先日の”bats”の記事を書いたと同記者)
「ウイルス宿主の探求における新しい鱗を付けた容疑者」
中国におけるコロナウイルスの動物における病原の探求において、最新の候補は、鱗に覆われ、蟻を食べる哺乳類 “pangolin” (穿山甲 センザンコウ)である。この動物は、絶滅危惧があるとはいえ、食用や薬(漢方薬)に供されるため、中国の市場に多数輸入されている。
穿山甲の市場は大変大きく、世界で最も多く取引(密取引、闇取引)(“traffic”)されている哺乳類と言われている。アジアにおける穿山甲の全4種目は、すべて、決定的に絶滅に瀕している。ウイルスの宿主として認定されることが、pangolins にとって、いいことなのかよくないことなのかは、明らかではない。このことは、この動物の取引を減少させうるであろうし、また逆のことを引き起こすこともあり得る。
Pangolin が新ウイルスを人に移した動物であるということも、未だ明らかになっていない。
Batsは、今もこのウイルスの最初の宿主(“original host”) であると考えられている。もしPangolin が、この病気の運搬にかかわっているとすれば、中間宿主(仲介者、媒介者)(“intermediate host”) として働いたと考えられる。科学は、これまでのところ結論的と言うよりも、示唆的のレベルである。伝統的な科学的検証を踏まずに、いくつかの意見が公にされて来ている。
動物から人に移る病気を研究することに専念している研究者たちの中には、他の科学者たちによって診断されて来ている研究が、いかになされて来たかという公に利用できる資料や評価という科学の息吹のない科学的主張についての議論の導き方に不満や落胆を表明してきている学者もいる。
科学者たちが、病気の根源の研究の詳細を待つ一方で、もっと単調なありふれた作業であるが、病気の道筋を辿る探検のような仕事に、解決の鍵があるかもしれない。新型ウイルスについて、何が起こっていたかを、確かにするためには、研究者達は、病気の拡散の助けになってきているであろう、どんな動物が武漢の市場にいたのかを、正確に知る必要がある。
そのウイルスは武漢市場や市場周辺-地上や、例えば囲われたものの中-に関係している人達にて発見された。しかし、いくつかの早期の事例では、何が一番に報告された事例であったかも含めて、その市場に関係のなかった人々の間においてであろう。Mr. John Epstein, vice president in science and outreach at EcoHealth Alliance in New York は述べている。即ち、最初の動物から人に病気が移ったのは、武漢市場やその周辺ではなかったかもしれない、と思われると。人々は、他の場所で動物からのウイルスで病気に罹ってきていると思われる。或いは、もっと早い時期に、未だ知られていない事例として、武漢の市場で病気に罹り、その後、他の人たちに移してきたとも思われる、と。
さらに、より複雑なことには、武漢市場にいた動物たちは、手早く処理された。もっとも、これら動物のサンプル検査では、ウイルスの存在は否定的であった、との中国からの報告はあるが。Dr. Epstein は、“このことは、われわれが持っているblack box である-どの動物がそこにいて、どの動物が関係していたのか?-と述べている。
前回のcorona virus の outbreak において、即ち、2003年の中国でのSARSと2012年のSaudi-Arabia におけるMERS-動物の宿主から感染した人たちとの会見は、病原の探究のために必須であった、と博士は述べている。
その流行に先駆けての、ある報告において、Pangolinが人へのcoronavirusの感染の源であり得る、との早い時期での兆候がある。中国の研究者たちが10月に、あるレポートを公表した。即ち、pangolin は多様なcoronavirusの宿主たり得る、と。彼らはその遺伝子配列 (“genetic sequences”) を public data baseに公表した。その後、Feb.7 新華社は、南中国農業大学が、pangolins が持っているvirus(このvirusは、今、45,000人以上に感染し、1,100人以上を病死させた。)は、99 % 新coronavirusのそれに合致していることを発見した、と報じた。この合致は、今まで、一番近い合致である。この報告は、この発見が証拠として決定的である、とは言っていない。しかしその結果は、Pangolinがこのウイルスの一つの中間宿主であろう、ということを意味する。この分野の科学者たちは、この発見の事実の公表を熱望している。それまで、彼らは評価を下せない。
加えて、website “Vro-Logical” への投稿では、batsよりのcoronavirusがpangolinsのvirusと再合体して新しいウイルスが生成され得る、とされている。
Mr. Joseph Petrosino, at Baylon College of Medicine (in Houston, USA) は述べている、即ち、彼の同僚のMatthew Wong-生物情報科学者-は、彼の分析結果を公表したと。
Dr. Petrosino は述べている。同氏ほこの作業結果を”bio Rxiv” に近々公表されることを期待している。そして彼と仲間たちは、それを論文審査のある専門誌に提出されることを期待している。さらに彼は述べている。即ち、直近12カ月に公表された遺伝子dataの研究-そのうち一番重要なのは、Pangolinに関する10月の研究-は以下のことを示していた。
即ち、pangolin が有している coronavirus の一部は、ほとんど新ウイルスのそれと一致していた。その部分は、ウイルスが人の細胞に侵入する手段を持っている。それゆえに彼らは、提案している。即ち、bat virus と pangolin virus は、組み合わさった(“combined”)かも知れない。おそらく野生のpangolinにおいて、または他の動物において。
Dr. Petrosino は、論文審査の過程に注目していて、新ウイルスへの関心の強さは、公での討議を不可避なものとしている。彼は述べている、即ち、web site ”virological”(ウイルス学)は、変人のためのtweeterであり、普通にニュースが載せられるsiteではないと。
彼の研究室の成果は、最初に南アフリカのnews site である “The Daily Marerick” にて報ぜられた。
Dr. Epstein は述べている。即ち、犯人(病気を移した感染源たる動物)についての情報(“smoking gun”)を知ろうと思えば、それ以前は健康であった、pangolinか他の動物を取り扱っていた人を見つけることである。彼らは、それらの動物を取り扱い、その後、病を得た。彼らを病気にしたウイルスは、彼らが取り扱っていた動物の体内にいた、と。
期せずして、この土曜日(Feb. 15)は、”World Pangolin Day” である。
[ 完 ]
この新しい outbreak は、次のAIDSの流行なのか、774人の死者を出したSARSの新しい型と同等の伝染病として推移するのであろうか? 単刀直入に、我々は「伝染の三角形/三角関係」(”epidemic triangle”)と呼ぶべき簡単な概念を使うことができる。病疫学の早期より学者達によって行われて来ているように、ある地方で発生した outbreak が、爆発的に伝染してゆくかどうかを予測することが、まずもって不可欠なのである。
“epidemic triangle” は基本的には、相関関係である。それはいかなる outbreak - その特性いかんにかかわらず – であっても、3つの要素の相互作用に懸かっていると断定できる。即ち、「病原体(菌)」”pathogen” (感染を引き起こす主体)、「宿主」”host” (感染の恐れのある生物)そして「環境」”environment” (感染が起きる背景、setting)。それがインフルエンザやコレラであろうと、飲酒運転のような行動の伝染であろうと、いかなる伝染病であっても、”epidemic triangle”のこれら要素の一つへの動的移動の結果である。そして、続いてドミノ現象のごとく新しい事態の突然の爆発を引き起こす。
この現象の古典的事例において、我々はインフルエンザの世界的規模での流行(”pandemic”)という環境変遷を経験している。16世紀中頃、中国の水田において、収穫を台無しにする昆虫を捕食駆除するために、アヒルやカモ(”ducks”)を放つ農法が導入された。このことは、ducksがもう一つの中国の農場での普通の生き物である豚と共に生きることを意味した。その特異な生態は、ducksをして多くのウイルスの寛大なる貯蔵庫にしている。他方、豚は異なったウイルスを、効率よく混ぜ合わせて新しい菌種(株)に育て、そしてそれらを人間に移す。この二種類の動物を近接して飼育することは、ほどなくして新しいウイルスの菌種への結合、移行へと導いた。新しいきわめて伝染力ある病原菌 – pig-duck インフルエンザ交配菌 – は、このようにして種目の垣根をこえて生成され、それ以来、人類を苦しめてきた。
その菌種の仲間に武漢の菌種も含まれるコロナウイルス(その形が「輝く冠」に似ているので、そう呼ばれている)は、抑え込むに大いに医師たちの手を煩わせている。コロナウイルスは普通の風邪や気管支炎の原因菌である。しかしコロナウイルスの仲間は、広がりを見せて、命に係わる恐ろしい菌種をも含んでいる。即ち、SARS (severe acute respiratory Syndrome) や MERS (middle-east respiratory syndrome) である。そしてこれらの死亡率は、それぞれ 15 %, 35 % である。大きい疑問は、この武漢のウイルスは普通の風邪に近いのか或いはSARS に近いのかである。その致死率は、月曜日(Feb. 3) の時点では知られていない。世界で17,000 の病例と少なくとも360人の死者が中国で出ていて、1人の死者がPhilippines で確認されている。Jan. 23 に世界保健機構(W.H.O.)は、世界的な健康への緊急性を宣言するか否かの特別委員会を招集した。2日間の協議の後、最終的に宣言しないことに決めた。もっとも WHO 議長の Mr. Tedros A. Ghebreyesus は、その前兆には気付いていたが「今はまだその時期ではない」とした。しかし、その時は来た。Jan. 30 WHOは再び会議をもって、Outbreak が世界的緊急性の明示に正当性を与える敷居を跨いで入ってきたことを確認した。委員会は、乏しい資料にてではあるが注目すべき公示という選択を掴み取った。即ち、世界的健康の緊急事態は各々の国連のメンバー国が行動を起こすことを要求する法的拘束力ある公示である、と。
私は、epidemic triangle が、WHOがこの公示に導くに至るに重要な手段であったことを疑わない。武漢から発し広まっていて人々を恐れさせている outbreak は、古い病原菌の遺伝子変化における実質的変異の故なのか、この地域に住む住民の病気に対する抵抗力の弱体的変化なのか、または環境の変化なのか? 武漢 outbreak は広がり続けているので、社会がヒステリックな状況に落ち込んで行くのを避けるべく、”epidemic triangle” の計算法 (calculus”) を適応するのが、人々の健康状態を効率的に表示するに最も頼れる方法であろう。
第一に、この新しい病原菌は、その伝染力と毒性において、前回の菌種からいかに多く変遷しているか、我々は知る必要がある。最初の菌群が Dec. 31 に報告されて以来の急激なる出現より判断して、武漢の菌種は、高い伝染力を有しうるであろう。全体的にみて SARSは、相対的に低い再生産率 (reproductive ratio “RO”) である 0.5 である。これは二件の病例が、ただ一つの追加病例を生むことを意味している。WHO も有している早い段階での計算では、武漢菌種の RO は、1.4 ~ 2.5 であり、最初の感染者より二次感染者として二例を生むことになる。この RO は、季節的に発生するインフルエンザよりは少し高目である。(参考までに、「麻疹(はしか)」のROは 12~ 18 である。)
さらに多くの病例が利用可能となって、もしこの新しいcoronavirusのROが低くとどまっていれば、監視と検疫によって我々は、その拡散を止めることに相対的に、自信を持ち得るであろう。もっともROが高くなれば、これらの手段は、着実に効力が劣化する。 その毒性については、武漢ウイルスの早期の染色体の連続性は、有り難くも、SARSとの関係性はかなり遠い、(これら染色体は、73% が同じであるに過ぎない。)このことは、SARSより死亡率は小さいことを意味している。(もっとも、確信をもって言えるには、未だ早すぎるが。)
第二に、このoutbreakは、その宿主(人間)の病原菌への弱さ、冒されやすさにおける変遷によって、いかに説明出来うるものか我々は問わねばならない。ここで科学が求めていることとは、その病状である。即ち、死亡した人々は老人か、免疫力が弱まっている人たちであることは、我々が他の普通のcoronavirus の感染と矛盾しない死亡率である。
このことは、epidemic triangle の最後の要素である”environment” に託されている。そしてそこにおいて事態が複雑化したのである。中国経済が成長拡大しているので、飛行機で移動する中国市民の数が天文学的に増大しているし、多くの国民が旧正月を祝うために大挙して都会より地方へと移動した。これは世界最大の人の移動である。3億人ものおおくの人々が中国国内で2週間を超えて車や列車、飛行機で旅行を計画した。この移動の間、検疫は意欲的には行い難たかった。もっとも中国は、多くの他の国々よりも、きびしい公衆衛生の手段や方法を有しているが。そして中国は、最終的には、5千万人以上の市民の移動を封鎖(“lockdown”)することで解決策を示した。
その状況が移り変わっているところは、世界中で中国と繋がりがあるところである。2005年、最初のSARS outbreakの2年後、たった233の国際航空ルートがあっただけであったが、2016年までに3倍以上の739になっていた。このことは、さらに多くのルートが、中国からのウイルスの持ち出しとなっていたことを意味している。同じ期間に中国に出入りする国際線旅客は、約3百万人より5,100万人へと爆発的に増加していた。簡単に言えば、中国の肥大する立ち位置は、武漢coronavirusが増殖できる環境を大いに広げてきた。(そして、この故に多くの航空会社が、中国へのフライトを取りやめている。)このことは、epidemic triangle の三要素間で、現行のoutbreak の広がりを予測するのを一層複雑なものにしている。
我々は、新しい伝染病の脅威に直面しているが、その病源はさて置き、一つの定理に頼ることができる。即ち、各々は最後には、epidemic triangle の三要素によってはっきり説明されるであろう、と。武漢coronavirusの場合、我々を最も困惑させているものは、それを介して病原菌(体)”pathogen”が、宿主”host”に伝染する環境”environment”の急速なる拡散拡大である。そして、このことは世界の一つの強国(”a global superpower”)としての中国の出現をはっきりと位置付けている。このような変化の規模では、武漢coronavirus は、SARSのような「怖さ」より菌が変異して、伝染病の歴史の一つの輝点として、次のスペイン風邪 (“the next Spanish flu.”)になり得るか、の現況である。
* Dan Werb : an assistant professor in the division of infectious diseases
and global public health at the University of California, San Diego
and the director of the Center on Drug Policy Evaluation.
[ 邦訳: 芋森 ]