【投稿】きわどい勝利 大阪堺市長選挙

【投稿】きわどい勝利 大阪堺市長選挙

先月号で都市部の自治体首長選挙におけるオール与党対共産党という構図についてふれた。大阪の堺市長選挙はその時点で選挙戦終盤を迎えていた。
昨年O-157集団食中毒事件が発生した堺市では、3名の死亡を含む1万人を超える発病者を出すなど、市民の心の中に深い傷が残っていた。現職幡谷市長に対して共産党は前回も出馬した医師の安賀候補を立候補させ、「O-157の責任を取らない無責任市長」「敬老無料パスの廃止など福祉に冷たい」「新日鉄跡地に4000億円を投入するなど大企業奉仕」などと批判。共産党の名前は表に出さず、「市民団体」候補として宣伝戦が繰り広げられた。
現職陣営も、告示を前後して「現職危うし」の危機感が高まり、やっとのことで選挙らしい選挙行動が開始され、その勢いが終盤まで続くことになった。
共産党の躍進傾向と「O-157問題の責任追求」という上げ潮ムードの中では、共産党候補はかなり強いという認識は現職陣営にもあったし、それ以上に「本当に勝てる」という意識が共産党側にあったと思われる事実もある。一度も出さなかった共産党の市長選挙ビラの全戸配布が投票日2日前にまかれたが、それまで自治省出身知事と市民団体の医師候補という構図を演出してきた共産党の余裕でもあったし、過信でもあった。
「O-157」の責任問題とは言え、未だ原因は学校給食にあったとしても、食材の特定も科学的には出来ていないし、責任追及も「道義的責任」や、「市長は減俸した後、報酬を10万円引き上げた」などの「感情的批判」に終始したことも、良識判断からすれば「ためにする批判」との判断もできる。補償対象者約1万人のうち9千数百名と補償が成立、残るのは共産党関係者ではないか、との声もある。
ともあれ、そうした「Oー157」の責任追及と「共産党市長の誕生への危機感」という逆の争点の盛り上がりは、投票率を前回より2%押し上げることになった。
結果は1万票余りの差で、現職市長は逃げ切った。
共産党陣営は、善戦として「神戸市長選挙につなげたい」とわけのわからないコメントを毎日新聞に載せた。
そして、現在は神戸市長選挙が終盤を迎えている。ここでも阪神大震災への対応・責任問題みたいな争点で闘われているという。10月号発行の翌日26日が投票日だが、果たしてどんな結果がでるのだろうか。(佐野)

【出典】 アサート No.239 1997年10月25日

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