【投稿】 国際ダムサミットin長良川に参加して
「恒例」の長良川DAY行動が、9月14日、15日、16日と、三重県長島町で行われた。河口堰運用2年目を迎えて、すでに「長良川の死」は現実のものとなっている。私は後半の2日間参加することとなったが、今年の特徴と感想を報告したい。
<ダムの時代が終わったアメリカ>
特に強調されていたのは、アメリカでは、93年のミシシッピー川の大洪水以来、近代河川工法による巨大ダム建設が、実は大洪水を生み出したとの反省から、建設途中のダム計画の中止などが行われ、ダム建設の時代が終わったこと。この流れを、長良川や日本の川を守る運動に生かすため、アメリカのダムファイター、ダム政策を転換した政府内の前スタッフ、アメリカのジャーナリスト、さらに中国の長江・三峡ダムに反対するジャーナリストなどが参加した国際シンポジューム「世界中でダム建設が終焉の時を迎えている」と14日に長島町で行われた。
さらに、翌15日には、「21世紀の世界共通の河川思想を構築する」と題したシンポジュームが行われ(いずれも200名規模)、最後に行動DAYの前夜祭「河口堰運用早く止めナイト」、16日は、集会とデモが行われた(主催者発表3000名の参加者)。集会にはC・W・ニコル、近藤正臣、野田知祐、本多勝一などいつもの支援者も駆けつけている。
<停滞する運動、なぜなのか>
私もこの運動に関わって5年余りになるが、4年前の「工事再開に反対」した長良川DAYをピークに、参加者は確実に減っているのが現実である。盛り上がったにも関わらず、堰工事完成後に野坂建設大臣(当時)が、堰の運用を「決断」し、ダムとして動きはじめた現実が一番影響しているのは事実である。私も多忙のため、現在の運動の中枢部分の議論に触れる機会も少ないのだが、天野礼子市民会議事務局長は依然元気、しかし、そのもとで実際に各地で活動する「スタッフ」連中には、疲労感が感じられる。
3000人が集まったと発表されているが、デモ参加者は600名前後、カヌーデモも最高で500艇が出たときもあったが、今年は200に満たないのではなかったか。
市民運動的な、NGO的な運動論的な総括が必要なように感じるのだが。
<各地のダム建設反対運動が結集>
一方で、長良川での運動を契機に、各地のダム建設運動が動き出し、代表者が一同に集まる場になっていることも事実であり、大いに評価できる。今年も、熊本の川辺川ダム、神奈川の相模大堰、石川県の辰巳ダム、岐阜県大垣の徳山ダム、北海道の千歳川放水路計画、徳島の吉野川河口堰、岡山のとまだダム計画に反対するグループが行動に参加、ダム反対ネットワークが確実に生まれていることは力強い限りだ。
<公共事業チェック機構の実現>
五十嵐建設大臣時代に、公共事業のチェック機構の構想が出されたが、依然進展していない。超党派による「公共事業をチェック機構を実現する議員の会」(衆参23名の議員で結成)からも、高見裕一(さきがけ)、竹村泰子(社民党)、秋葉忠利(社民党)も参加し、一定の活動報告が行われていたが、この動きにも注目する必要はありそうだ。労組では、全電通名古屋、自治労連名古屋水道労組、国労名古屋、連帯労組などが参加をしていた。
<堰運用をやめさせよう>
河口堰建設に反対する会ー岐阜を中心に7月に行われたシジミ調査では、特に河口堰下流にヘドロがたまり、シジミは皆無で、ヘドロの調査になってしまったという。これが堰運用1年の現実である。堰の運用を止めさせる、この一点に集中した「原点」の運動を粘り強く行うことが求められているように思う。(96ー09ー17佐野)
【出典】 アサート No.226 1996年9月21日