『詩』 呼び換え遊び

『詩』 呼び換え遊び

大木 透

いやはや 慌しいことだ
「インフィニット ジャスティス」では
マホメットさまに申し訳ない
「十字軍」では
ハンチントンの罠にはまってしまう
そんな名前は いや
ちょっと呼び名を変えてよ
それで なんと呼ぶようになったの?
そんなこと知るもんか
自由もちょっとは腐るかな
なんて言っちゃあいけねえよ

ちょっぴり呼び名を変えて
剥製にするっちゅう算段は
ずいぶん 昔に
ジョージ・オーウェルさんが教えてくれたこと
賢人は「一九八四年」に書いている
ニュー ニュー ニュー ニュー
ニュースピークって

さては 俺も
年とって 騙されたのかな
こちらの国でも
魔法はずいぶん流行っているようだ
スパイ防止法・盗聴法→個人情報管理法
大量解雇→リストラ
職安→ハローワーク とは
これいかに

「名より面影は偲ばれる」
とりどりの「対案」は
甘い麻薬みたい
心穏やかに 安らかに
「対案主義」に耽っているうちに
つぎつぎ 見事な「対案」が紡ぎだされて
「成熟社会」の夜は
いよいよ更けていく

ねえ きみ
どう呼ばれたら
嫌なものはイヤと
言えるようになるんだろうねえ
なんと唱えたら
この魔法が
解けるんだろうねえ

(二〇〇一・一〇・六)

【出典】 アサート No.288 2001年11月24日

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