【コラム】ひとりごと —労組内のあれこれを暴露—

【コラム】ひとりごと —労組内のあれこれを暴露—

◆自治労が、経理不正・脱税事件で揺れている。その不正事件の内容は、マスコミ報道に任すとしても、組合員の自治労への不信・批判は相当なもので、その波紋は組合脱退への動きにまで広がる様相となっている。筆者も自治労傘下労組の職場役員であるが、私の周囲にも、これを理由に脱退意志を示す者がちらほらいる。そこで私なりにも、かつての労組幹部役員の経験から、「こんなことをしているから、だめなんだ!」と思ったことを暴露して、組合への思いを伝えてみたい◆マスコミ報道では「組合員同士の飲み食いにもー」と言われているが、実際、これはよくある話である。会議が終わった後の食事や二次会までも組合が面倒みたり、委員長をはじめとする組合三役には役職手当が支給されているにも関わらず、非公式な接待費用も別に組合が肩代わりしてるなど。特に組合御用達のスナックは、日常的に組合が飲食代を支払って、そこに組合員が組合三役に群がることもあったりする。もっとも小さな組合や組合下部組織では財政基盤も弱くて、そんな贅沢はできないが、組合組織が大きくなればなるほど、ありがちな話でもある。ただ、こうした腐敗風土も幹部ばかりが悪いのではなく、「高い組合費を払っているのだから、それぐらい当然」だとか「労働組合は酒を飲んで意志を固めあうもの」などと開き直る一般組合員や中間幹部の意識にも問題があるとは思う◆今回の自治労不正事件では、共済事業会計が舞台となっているが、こうした事業系部門が腐敗を生み出しやすい土壌となっていることも事実である。例えば生命保険などの共済事業の場合、組合組織が大きいほど、その手数料などのリベート収入も大きくなるし、加えて組合の保険事業も利益追求と言うよりは共済互助を一応の目的としている以上、その契約手続き・支払い事務も性善説をある程度、前提としており、そのチェックシステムも甘くなりがちである。さらにはこうした保険共済事業には、それなりの専門的知識が必要であり、その事務処理も、担当部門が属人的かつ長期的に委ねてしまうのである。また機関紙発行などの教宣関係も腐敗を生み出しやすい部門である。小さな組合なら教宣担当者の手作りの味で発行されて、まさに大いに組織強化に資するのだが、組合が大きくなると、そのボリュームも発行部数も多くなり、印刷業者もできるだけ固定的に受注されるよう接待攻勢をかけ、教宣担当者も、これに甘んじてしまうなどの癒着が生じてしまうのである。本来、こうした継続的な契約業者は、役所のように定期的に入札替えするなどの措置をすべきであるが、それがなかなかできないのもまた癒着の実態である。このように労組にも腐敗を誘引しかねない状況は多々あるが、これを防ぐためには、少なくとも組合員に対する組合経営の公開と担当者の定期的な異動ぐらいは必要不可欠である◆さて、こうした労組の陥りやすい不正・腐敗の構造的な問題とは別に、そもそも労働組合という組織自体の風土的な問題にも、その背景的要因があるように思える。労働組合の組織運営は、意外と家父長的なもので、よく「相撲・歌舞伎・労働組合」と古いものの代名詞に使われるぐらいである。いくら組合民主主義と言ったところで、日常的運営ではやはり、委員長・書記長の発言力・判断権限は相当なもので、およそ組合員の多くがそう思ってないことであっても「親分がそう言っているのならー」と道理が引っ込むことはよくあることである。ただ「相撲・歌舞伎」なら自らも古い伝統を守ることを是としているからまだしも、労働組合は「平和・民主主義」を標榜しているだけに、その体質改善は至難の業である◆今回の自治労の不正事件では、組合幹部と一般組合員との意識のギャップも問題にされている。確かに大労組では、幹部役員が組合専従となり、ある意味では組合プロとなって役職を歴任していくことが多いのだが、そのことは必然的に一般組合員との意識の乖離を招くものとなっている。実際、筆者の知っている例でも入職して10年未満で専従になり、まともに仕事をした経験のない者がいるし、また一定の休職年限が切れても、「今さら仕事に戻ってもー」と本人も周囲も更に上級機関の役職を「処遇」するのである。こうしたことが組合幹部の世間離れ・組合員離れ、そしてしいては若手役員の登用も妨げてしまうのである。しかし、その一方で組合役員は確かに多忙で、大労組であるほど、とても仕事を兼ねながら組合活動を行うことは不可能であり、組織強化の観点からしても、組合専従自体を否定できないのも事実である。加えて、こうした組合幹部の意識の乖離は、幹部役員の資質によることも多いと思うが、組合費のチェックオフも、これを一層、補強しているとは言えないだろうか◆このように色々と考えてみると、労働組合も所詮は人間の集団であり、腐敗もすれば過ちも犯すものである。問題は、それをいかに防ぐかにあるのだが、そのためには特に利権が集中しやすいところを中心として、運営・経営状況の公開と外部監査制度や組合オンブズマン等のチェックッステムの確立、また組織の根幹にも揺るがしかねない重要決定事項に関しては、大会決定に委ねることなく、組合員の一票投票で決するなど、およそ今日、行政でも企業でも求められつつある様々な改革こそが求められているのではないだろうか。(民)

【出典】 アサート No.289 2001年12月22日

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