【追悼】あの笑顔 -安部さん逝くの報に接し-
どうしてあんなに誠実な君が先に逝かねばならないのだろうか
私にはわからない
背筋を伸ばし、あごを引いてまっすぐに相手を見る
しかしその目は、どこか気恥ずかしげで、シャイである
辛抱強く相手の言葉に耳を傾け、気紛れでない
率直に、もってまわることなく、だが丁重に意見を述べる
時には激して身振り手振り、全身で語る
しかしそこには驕りや冷笑的態度は微塵もない
あの明治大学学生時代、民主主義のために闘うことの意味を
民主を冠した集団の暴力行為を身に受けながら
復讐や怨念のために闘うものではないことを静かに示し
しかしその無私無欲な献身性には強固な意志が光る
あの時代、あなたの下宿に寄り集い
共に闘った仲間たち、その後も輪を広げ、連帯し
共に語り、悩み、反省と悔悟の念をもって思索する
しかし今こそ必要なこのときに、あなたの笑顔が焼き付く
1991/7/28
安部さん逝くの報に接し
生駒 敬
【出典】 青年の旗 No.166 1991年8月15日