【投稿】コップの中の議論から脱出して

【投稿】コップの中の議論から脱出して
                                                                    —-波高し、田辺社会党の船出—

「田辺 誠=46,363票、上田 哲=36.358票」という接戦の未、社会党に26年ぶりの「右派」委員長が誕生した。そして党改革案を7月30、31日の臨時党大会で修正可決し、ようやく新執行部が選出された。
もともと田辺氏の政権構想には、社会党主導の野党連合政権に至る過渡的政権としての「自社連立」があるが、これを警成する地方の活動家を中心に予想以上の反発を買い、上田氏への票の上積みとなった。臨時党大会で「改革派」は、このような田辺批判票の多さに気配りを強いられ「基本政策の見直し」については、譲歩せざるを待なかったが、「党務と政務の分離」については、前進した。
前者については、表現の微妙な言い回しを別として、冷戦の終焉によって強まる米ソ協調体制づくりを背景に、「非武装中立政策」の見直しの必要性が、党中央の共通の認識となりつつあるにも関わらず、地方の活動家との間に認識の乖離があることを証明することになった。土井体制の下での党内改革議論のモラトリアムのツケが、ここにきて表面化したと言えるのではないか。それは一面では、統一自治体選挙以降のこの間の改革議論の不十分さをも物語っており、今後の党内の徹底的な改革議論の推進が、田辺執行部の方針として真っ先に打ち出されなければならない。
後者については、書記局主導の党運営を国会議員主導に切り換えることを狙いとしており、86年の「新宣言」で打ち出した「西欧型社会民主主義政党への脱皮」にとって、不可欠の要素と見られていただけに田辺氏周辺は大きな成果としている。
しかし本当の党改革は、これからの政治改革の主体となるべき党外の多くの市民、若者、女性、未組織労働者、中小企業等々の中へ社会党が裸で飛び込むことによってしか成しえないということに、党内の多くの活動家や幹部や各級議員が一日も早く気づくことから始まるのではないだろうか。そして、平和、人権、環境、国際連帯・協力、選挙制度、税制、バブル経済、等についてもっと現実的であると同時に、大胆な改革政策を提起することである。公平、平等、連帯、機会均等、徹底した公開を原則に受け身ではなく、攻勢的な民主的代案をこそ提起する必要があるのではないだろうか。誰が、増え続ける「支持政党無し層」を真っ先にキャッチするかに、90年代の日本の進路が掛かっているのである。 (8月4日 大阪 M)

【出典】 青年の旗 No.166 1991年8月15日

カテゴリー: 政治 パーマリンク