【コラム】ひとりごと—年金だけでは2000万円不足する??

【コラム】ひとりごと—年金だけでは2000万円不足する??
アサート No.499 2019年6月

○6月3日金融庁の「金融審議会・市場ワーキンググループ」が報告書を公表した。「高齢社会における資産形成と管理」に関するもので、「人生100年」時代と言われる程、高齢世帯が増えていく現実に対して、その準備が必要であると言った内容である。○その中では、50歳以下の世代に「老後に対する不安」と答えが多く、「老後の不安として『お金』が主要要因となっていることが窺える」とし、P21には、「前述のとおり、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では、毎月の不足額の総額は単純計算で1,300~2,000万円になる。この金額はあくまでも平均の不足額から導き出したものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。・・・いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。」として、生涯に亘る計画的な長期・積み立て・分散投資による資産形成と資産管理が必要と述べられている。○これを野党が批判した。「老後は年金だけでは暮らせないのか」「2000万円の資産など、誰が貯められるのか」「100年安心の年金制度はウソだったのか」と。○この「批判」を受けて、麻生財務大臣は、「報告書は不適切」「政府の政策スタンスと異なる」と、報告書の受け取りを拒否するとした。○政府審議会WGの報告を受け取らないとする自民国対も、「受け取らないのだから、報告書は存在しない。審議の対象外」として予算委員会の開催要求を突っぱねる有様。○一方、マスコミは「2000万円不足」問題を大々的に取り上げ、野党を後押した。○一部与党系マスコミでは、「100年安心と言う言葉は、年金制度そのものが存続可能としたもので、額の保障ではない」と野党の批判は的外れであると言い出している。大いに結構なことである。借金漬けの国家財政や、破綻が近づく医療・介護など高齢社会対策についてより、自分の生活には、いくら必要か、いくら足らないか、という話題は、実感されやすい。「2000万円不足」問題は、出口は別にして非常にわかりやすいのである。「2000万円貯めろというが、今の生活ではできない」「どうすればいいのか」「政府は応えろ」という回路に入れば、安倍政権は逃げることができない。報告書の問題ではなく、政権の公約を求めているのだ。○そういう意味で、麻生財務大臣(安倍政権)の報告書受取拒否に対して、国民は怒っているのである。○夫婦で20万円の年金と言う設定だが、これ自体は、どちらかと言えば「安定した階層」を前提にしたもので、老齢基礎年金(国民年金)だけの自営業者世帯や、今後益々増えていく単身世帯を考えれば、さらに「不足額」は増えていく。増え続ける非正規労働者にとっても同様である。○金融庁のWGだが、委員は学者と証券・投資・銀行などの代表のみ。医療・介護や年金問題に対する「国民の不安」への対策は、具体性は皆無で、不足分は「投資」で埋めなさいとの結論のみ。○要するに「自己責任で解決しろ」ということ。○「年金だけでは生活できない」「老後の不安が益々深刻」という、「国民の不安」に火を付けたことは、大きな「功績」と言えようか。○厚生年金すら入っていない非正規の若者や、自営業者は、国に説明を求める声を挙げなければならない。麻生や政権の不誠実な対応は、正に触れてほしくないテーマだったからに他ならない。○こうして「2000万円年金不足問題」は、イージスアショア配備問題と共に、参議院選挙の大きな火種になりつつある。安倍には「消えた年金記録」問題で、大敗した12年前の参議院選挙の悪夢が甦っていることだろう。○衆参ダブル選挙どころではない。安倍政権には、参議院選挙敗北と言う「悪夢」をプレゼントしてやろうではないか。(2019-06-17佐野)

【出典】 アサート No.499 2019年6月

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