青年の旗 1986年12月1日 第118号
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【主張】 大増税・収奪強化策動を阻止しよう
十月二十八日の政府税調の答申を受け、税制改革は党税調の審議に舞台を移した。当初、十一月二十八日に党税調案を一本化する予定であったが、反発が相次ぎ、取りまとめ案の提示さえ行うことができなかった。
さて税制改革の大まかな骨格についてだが、それは税率五%の日本型付加価値税導入(一世帯あたり十六万円の負担増)、マル優廃止後一律二〇%課税の増税を行うとし、この増税を財源に、四兆五千億円(三千億の相続税の減税は見送られるもよう)の減税を実施するというものである。
「減税のための財源としての新型間接税」、「増減税同額だから良い」ということが強調されている。しかし、増税は、逆累進課税の強い間接税を一層強化するものである。減税も、所得税の最高税率を引き下げ、累進性を緩和するものであり、また、法人税の実効税率を引き下げるという内容でもある。そして、事業所得や資産所得に組み込まれている現行の数多くの特別措置・累進緩和措置には何ら手がふれられていない。結局、今回の税制の抜本的改革の狙いは、大企業と大資産家の減税の財源を低所得者等国民大衆から収奪することにあると言えよう。
シャープ勧告以降、わが国の財政制度は、不十分ながらも、資本主義が不可避的に生み出す所得格差を、課税という形での強制的収奪を基礎に、財政を通じた第二次分配によって穴埋めし、所得分配の是正を図るというところに、その立脚点を置いてきた。それ故に課税は累進制をとり、直接税中心主義が採用されてきた。しかしながら、大企業と大資産家に対して、様々な累進緩和措置・特別措置を行うことによって、租税民主主義の内容を骨抜きにしてきたのが、これまでの歴史である。ところが、今回の税制改革は、従来の税体系の枠内での手直しではなく、租税民主主義を真向から否定した、非民主主義的税体系の移行を指向しているのである。
以上指摘してきた狙いをオブラートに包みこむための、そして、七九年に一般消費税導入を掲げて挫折した大平内閣の二の舞をくり返さないための戦略を、中曽根首相は打ち出しているが、様々な抵抗、反対がまきおこっている。
日本型付加価値税については、食料品、教育・社会保険診察・輸出・金融取引等の非課税品目や課税対象となる事業所の年間売上高(免税点)を設定し、限定性をもたすことによって、「国民各層に投網をかけるような大型間接税は導入しない」という公約に違反するという批判をかわそうとしている。
しかしながら、非課税といっても、例えば食料をとってみると、食料生産段階、加工段階、流通段階での肥料・機械・運輸・倉庫管理等の税額上昇分の価格への転嫁は避けられず、日本の複雑多投階な流通機構は一層大幅な価格上昇をもたらす。また、一切の税額を価格に転嫁できるといっても、過当競争にある中小企業は、容易に価格引き上げを行いえず、つまり身銭を切らぎるをえないため、零細企業での納税期の資金繰りや事務量の増加は、彼等の負担を一層強めざるをえない。これらの攻撃に対し、全国四〇〇万店の小売店が結集している全国中小小売商連盟等が中心となって大型間接税反対、マル優廃止反対の大集会を開き、抗議の姿勢を示している。
マル優廃止については、根強い反対運動を行っている郵政省に対して、郵貯の預入限度額の引き上げ、国債の窓口販売、郵貯の一部自主運用等の見返り措置を用意し、態度の軟化を図ろうとしている。しかしながら、自民党内の郵政懇でさえも、郵貯利子非課税の立場を堅持している。また、十一月十三日段階で全国市町村の九八・八%が、マル優非課税存続を求める議会決議を行っているなど、広範な根強い反対運動が存在している。
最後に、福祉目的税として日本型付加価値税を導入するという動きについてだが、そもそも新型間接税導入が前提になっていることからも明らかなように、新型間接税導入のために、野党の共感を得るという、ただそれだけのために、福祉が取り引きされている。臨調行革攻撃の下、勤労大衆の福祉の要求には深刻なものがある。しかしながら、そこから福祉にあてるためには、新型間接税導入もやむなしというのは、勤労大衆の立場に立った主張ではない。なぜなら、現行の税体系の下での、大法人・大資産家の優遇措置の是正には何ら手をふれずに、しかむ、逆進課税の性格の強い間接税を財源として、福祉にあてるというものだからである。
勤労大衆の福祉の要求には、深刻なものがある。減税の要求もそうである。政府・独占が、そのための財源として、大型間接税導入・マル優廃止を国民に訴えている現状を踏えるならば、我々は、我々の立場から財源を積極的に展開していかなければならない。
社会党・公明党・民社党も独自の財源論を展開している。それは、グリーンカード(少額貯蓄利用者カード)の導入、キャピタルゲイン課税の強化、富裕税の創設などを、減税の財源とするものである。我々はそれに加え、金融資本が最大の不労所得を得ている。国債の金利払いの凍結もしくは国債の金利の引き下げ、また赤字国債大量発行をも、減税の財源とすべきことを要求しなければならない。また「六五年赤字公債依存体質脱却」の公約実現が絶望視される中、自民党内部においても、建設国債増発により緊縮財政から積極財政への転碑を求める突き上げも激しくなっている。
しかしながら、自民税調は一二月五日マル優廃止、日本型付加価値税の導入を骨子とする改革案をまとめ、中曽根も「公約で増税しないといっているので、税調の改革案が公約違反になるはずがない」との人をぐろうする詭弁を弄し承認した。
我々は大型間接税導入阻止・マル優廃止反対を統一スローガンとし、内需拡大、積極経済への転換をめざす広範な大衆運動を構築していかなければならない。