<<国際金融犯罪の暴露>>
9/20、米ニュースサイト「バズフィード」が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)と共同で調査し、公表されたレポートは、ウォールストリートの巨大金融資本が関与した違法・不正な国際金融犯罪が巧妙かつ長年にわたって行われてきたマネーロンダリング疑惑の実態を暴露している。関与した金融資本には、米最大の銀行であるJPモルガン・チェース、米バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、英HSBCホールディングス、英スタンダード・チャータード、バークレイズ、バンクオブアメリカ、ウェルズファーゴ、シティバンク、ドイツ銀行などが列挙されている。
その衝撃的なレポートは、テロ組織、麻薬カルテル、および各種国際金融犯罪者からのダーティマネーの数兆ドルの洗浄および流通に、米欧の主要な大手金融資本が意図的・積極的に金融犯罪に関与・加担している実態を明らかにしたのである。
このICIJの調査は、米国財務省の一部門であるFinCEN(米財務省金融犯罪取締局)から漏洩した秘密文書に基づくもので、このレポートは、1999年から2017年の間にFinCENとともに世界最大の銀行のいくつかが提出した21,000を超える「疑わしい活動レポート」(SAR)によるものであり、重大なことは、今なお「5つのグローバル銀行が、違法なマネーロンダリングで、当局から罰金を課された後でも、強力で危険なプレーヤーから利益を得続けている」ことを明らかにしていることである。
このレポートでは、トランプ政権とのかかわりも見逃せないものとなっている。JPモルガンチェースについて、「10年間で5000万ドルを超える支払いを処理した」との記録が含まれており、その取引の中には、トランプ大統領の元キャンペーンマネージャーであるポール・マナフォート(Paul Manafort)による少なくとも690万ドルに及ぶマネーロンダリングと汚職疑惑が浮かび上がっている。
<<18年間で最悪の9月>>
このレポートが発表された翌9/21、ニューヨーク株式市場のダウ平均は前週末比で一時900ドル超も続落する場面に陥り、終値は同509・72ドル安の2万7147・70ドルで、1カ月半ぶりの安値を記録した。S&P500種株価指数は4営業日続落し、ほぼ2カ月ぶりの安値を記録。なかでも不正送金に関与したと名指しされた金融機関の株価が軒並み急落したのである。HSBCは前週末比6%超の下落で90年代後半以来の安値、スタンダード・チャータードも5%超の下落に見舞われている。HSBCは9/21、マネロン疑惑は「すべて過去のものだ。(違法を摘発された)2012年から金融犯罪に対処している」と声明したが、翌9/22の株価はさらに大幅に下落し、95年5月以来の25年ぶりの安値となっている。
パンデミック危機と経済危機の結合により、疲弊した実体経済とかけ離れてきた株式市場もいよいよ重大な局面に差し掛かっていると言えよう。これまで上り調子であった指標は軒並み崩れ出している。不安定な上げ下げを繰り返してきた株式市場は、この1か月間で、ダウ平均は月間4.5%下落し、S&P 500は6%以上下落、ナスダックは約8.5%下落している。今月初めまでは過去最高値圏で動いていた株価が一転、下落傾向に動き出したのである。全体として、市場は18年間で最悪の9月に進んでいると評されており、9/21付けUSAトゥデイは、「迫り来る世界的な金融危機」に直面していることを示唆する記事を掲載する事態である。
マネーゲームとマネーロンダリングにのめり込む金融資本主義は、実体経済を掘り崩し、経済的不平等と格差拡大を加速させ、公的資金を枯渇させ、民主主義を弱体化させ、弱肉強食の自由競争原理主義をはびこらせる犯罪的本質をあからさまにしているのだと言えよう。ニューディール政策への根本的転換において、この金融資本への徹底した独占規制と分割、租税回避を許さない税制改革、累進課税と国際的金融取引課税、等々、徹底した民主的改革こそが要請されている。
(生駒 敬)