6月中旬、ロシア太平洋艦隊はハワイ近海で、ミサイル巡洋艦など水上戦闘艦6隻のほか給油艦、病院船、さらにはカムチャッカ半島の基地から対潜哨戒機も参加する大規模な軍事演習を行った。
ハワイにこれだけの「敵性艦隊」が接近するのは、真珠湾攻撃の日本海軍以来のことである。今回ロシア艦隊はホノルルから約60キロにまで接近(日本の空母機動部隊は約350キロ)したが、実際演習のシナリオには「敵空母や陸上基地への攻撃」=「真珠湾攻撃」が想定されていた。
これに対してアメリカ軍はオアフ島からF22戦闘機を緊急発進させ警戒にあたり、さらなる接近に対してはイージス駆逐艦3隻を急派し監視を続けている。
これまでアメリカは太平洋海域においては対中国に傾注していたが、今回ロシア軍が長距離遠征能力を立証したことで、より困難な事態に直面することとなった。
今回の演習は6月16日のジュネーブでの米露首脳会談の前後に行われたが、対露強硬姿勢を崩さないバイデンに対するプーチンの回答である。米露首脳会談については、バイデンが対中露2正面作戦を回避するためなどと言われているが、実際は「真珠湾攻撃」に続き欧州でも緊張が激化している。
極東に向かうイギリス空母打撃群(CGS21)から2隻が分離して黒海に入ることは先の投稿で指摘したが、その一隻である英駆逐艦「ディフェンダー」が6月23日、クリミア半島沖でロシア領海を侵犯した。これに対しロシア軍機と国境警備隊艦船が爆弾投下と警告射撃を実施、イギリス艦は領海を離れたが、ロシア側は監視を続けている。
黒海では1988年にソ連艦艇が領海侵犯したアメリカ巡洋艦に体当たりを敢行したが、今回の砲爆撃はそれ以来のコンフリクトである。今後米艦を含むCGS21が極東に近づけば、ロシア太平洋艦隊が中国海軍と共同して反応することも考えられる。
ロシアは北方領土近海で日本漁船の拿捕や、択捉島での爆撃演習、さらには6月23日からはサハリンを含む地域で大規模軍事演習を開始するなど「非友好的」行動を頻発している。
これに対し菅政権は形式的な抗議を行うのみで依然として静謐を保っているが、米英の対応次第ではアジアでの対露緊張がさらに激化する可能性が高い。米英から共同歩調を求められれば、対中国で手一杯の菅政権は窮地に追い込まれるだろう。(大阪O)
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