【投稿】トランプ米政権:対イラン直接爆撃、泥沼の幕開け

<<ネタニヤフ「トランプ大統領、おめでとうございます」>>
6/21夜、トランプ大統領は、米国東部時間午後10時にホワイトハウスからテレビ演説を行い、米軍が夜間の大規模軍事作戦を実行し、「米軍はイラン政権の3つの主要核施設、フォルドゥ、ナタンズ、エスファハーンに対し、大規模かつ精密な攻撃を実施しました。今夜、私は世界に対し、今回の攻撃が目覚ましい軍事的成功を収めたことを報告できます。イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅しました。」と主張、「華々しい軍事的成功」と表現し、それでもなお、「もし平和がすぐに訪れなければ」、我々は「迅速かつ巧みに」イランの残りの地域を攻撃するだろう、との警告まで発した。
 イスラエルとの関係についても発言し、「ビビ・ネタニヤフ首相に感謝と祝意を表します。私たちは、おそらくかつてないほどのチームワークで協力し、イスラエルに対するこの恐ろしい脅威を根絶するために大きな進歩を遂げました。イスラエル軍の素晴らしい任務に感謝します。」とイスラエルをことさらに持ち上げ、トランプ大統領は最後に、「中東に神の祝福あれ、イスラエルに金の祝福あれ、そしてアメリカ合衆国に神の祝福あれ」と締めくくった。
イスラエルの国際法違反の「先制攻撃」を賛美するばかりか、自らも、突如イラン爆撃に踏み切った危険なエスカレートを「かつてないほどのチームワーク」と賛美したのであった。まさに、これは、「正気の沙汰」ではない、危険な本性を露わにしたテレビ演説であった。

早速、これに応えて、イスラエルのネタニヤフ首相は、「トランプ大統領、おめでとうございます」と、イスラエルによるイランへの爆撃作戦への米軍の参加という「大胆な決断」を称賛し、今回の行動は「歴史の転換点となり、中東のみならず、さらに広い地域を繁栄と平和の未来へと導くものとなる」とほめたたえたのであった。

 さらにトランプ氏は、自身のTruth Socialに次のように投稿した。
「すべての航空機は現在、イラン領空外にいる。主要施設であるフォルドゥには、爆弾が満載で投下された。すべての航空機は無事に帰還している。偉大なアメリカの戦士たちに祝意を表す。世界でこれほどのことを成し遂げた軍隊は他にない。今こそ平和の時だ!」と述べ、
同時に、「平和が訪れるか、イランにとって過去8日間で我々が目撃してきたよりもはるかに大きな悲劇が訪れるかだ」、「まだ多くの標的が残っていることを忘れてはならない。今夜の攻撃は、これまでで最も困難で、おそらく最も致命的だった。しかし、もし平和がすぐに訪れなければ、我々は他の標的を精密、迅速、そして巧みに攻撃する。そのほとんどは数分で排除できるだろう」と主張している。

<<「悪のパンドラの箱」>>
問題は、トランプ氏自身が「まだ多くの標的が残っていることを忘れてはならない」、「はるかに大きな悲劇が訪れる」可能性を自認しており、「数分で排除できる」どころか、実は容易ではない事態をさらに増大させていることである。

まず、「イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅しました。」と、トランプ氏は述べているが、イランの公益性判断評議会メンバーであるモフセン・レザイ氏は、イランは事前にすべての「濃縮核物質」を安全な場所に移動させたと述べており、また、イラン国会議長顧問のメフディ・モハンマディ氏は、フォルドゥ核施設への攻撃を予想し、避難措置を取り、施設に回復不能な損害はなかったと述べ、「イランの立場からすれば、驚くべきことは何も起こらなかった。イランは数日間、フォルドゥへの攻撃を予想していた。この核施設は避難させられたが、今日の攻撃で回復不能な損害は発生していない」と述べていることである。

さらに、イラン原子力庁(AEOI)は6/22早朝に発表した公式声明で、米国の空爆がフォルドゥ、ナタンズ、エスファハーンの核施設を現地時間日曜日早朝に攻撃したことを確認し、この作戦を違法かつ「残虐な」行為だと非難し、同時に、国際査察官の監視下で稼働していた施設への攻撃を米国が行った違法性を非難し、声明で、「この行為は残念ながら、無関心の影で、国際原子力機関(IAEA)の支援を受けて行われた」と主張していることである。
そして、イランの国家核安全システムセンター(AEOI)は別の声明で、3カ所の施設すべてで緊急査察が実施されたことを確認し、同センターは「汚染の兆候は記録されていない」と述べ、「上記施設周辺住民への危険はない」と付け加えている。

「残虐な」放射能汚染を防いでいるのは、まさにイラン当局なのである。「残虐な」放射能汚染を拡大させようとしたのは、アメリカとイスラエルなのである。イランが、米国を核拡散防止条約違反で非難し、告発する当然の権利を有してるのである。イランのアラグチ外相は、米国の攻撃は広範囲にわたる影響を及ぼすだろうとし、イランは自衛権を留保すると述べ、「米国はイランの平和的な核施設を攻撃することで重大な違反を犯した」と強調している。

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、米国のイラン攻撃を「既に危機に瀕している地域における危険なエスカレーションであり、国際の平和と安全に対する直接的な脅威」であると非難し、「この危険な時期に、混乱の連鎖を回避することが極めて重要だ。軍事的解決策はない。前進する唯一の道は外交であり、唯一の希望は平和だ」と強調している。

アメリカの著名なジャーナリスト、クリス・ヘッジス氏は、アメリカのイランとの戦争は「悪のパンドラの箱を開ける」と指摘して、以下のように述べている。
* 戦争は悪のパンドラの箱を開ける。一度解き放たれた悪は、誰にも制御できない。イランの核施設への米軍爆撃を命じた戦争屋たちは、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアでの攻撃と同様に、イランにおける今後の展開について何の計画も持っていない。
* イランとの戦争は、地域全体でシーア派に対する戦争と解釈されるだろう。間もなく報復が行われるだろう。それも大量に。最初は散発的なミサイル攻撃で始まり、次に捉えどころのない敵による船舶、軍事基地、軍事施設への攻撃へと発展するだろう。そして、着実にその規模と致死性は増大していくだろう。中東に駐留する約4万人の兵士と海兵隊員を含む死者数は増加するだろう。空母を含む艦船が標的となるだろう。
* イラクやアフガニスタンでやったように、我々は盲目的な怒りをもって攻撃を開始し、自らが引き起こした大惨事に油を注ぐことになるだろう。我々をこの戦争に誘い込んだ者たちは、戦争という手段についてほとんど知らず、彼らが支配しようとしている文化や民族についてはなおさら知らない。傲慢さに目がくらみ、自らの幻覚を信じ、過去20年間の中東における戦争の教訓を全く学んでいない。
* イランとの戦争は自滅的で、多大な犠牲を伴う泥沼となり、帝国の朽ちかけた建造物に打ち込まれる釘の一本となるだろう。

トランプ政権は、「悪のパンドラの箱」を開けているのである。
(生駒 敬)

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