【投稿】トランプ大統領:「12日間戦争」終結の虚構

<<「皆様、おめでとうございます!戦争は終結します」>>
6/24、トランプ大統領は自らのソーシャルメディアで、イスラエルとイランが停戦に合意したと発表した。
「皆様、おめでとうございます!イスラエルとイランの間で、12時間の完全かつ全面的な停戦(今から約6時間後、イスラエルとイランがそれぞれ進行中の最終任務を縮小し完了した時点)を行うことで完全に合意し、その時点で戦争は終結したとみなされます!公式には、イラン側が停戦を開始し、12時間目にイスラエル側が停戦を開始し、24時間目に12日間戦争の公式終結が世界から祝福されます。各停戦中、相手側は平和と敬意を保ちます。すべてがうまくいくという前提で(そうなるでしょうが)、イスラエルとイランの両国が、いわゆる「12日間戦争」を終わらせるスタミナ、勇気、そして知性を持っていることを祝福したいと思います。」

その詳細は、以下の経緯を取るという。
* 0時間:イランが停戦を開始。これは6月23日東部時間午前0時に始まった。
* 12時間:イスラエルが停戦に参加し、全戦線での攻撃作戦を停止。
* 24時間:停戦が完全発効。両陣営は軍事的に沈黙を守ることが予想される。空爆、ミサイル発射、動員は行われない。

トランプ大統領はこの発表の中で、さらにいくつかの具体的な事実を明らかにした。
* イランはカタールのアル・ウデイド空軍基地へのミサイル発射前に米

軍に事前通知を行った。これにより、防衛準備と撤退が可能になった。
* 米軍の死傷者は報告されていない。被害は軽微だった。国防総省は攻撃を確認したが、停戦の発端についてはこれ以上のコメントを控えた。
* 湾岸地域全域で米大使館による警戒警報が発令中である。カタールとイラクの空域制限は、今後の展開を見据えて引き続き実施されている。

この発表の経緯から明らかになったことは、イランがカタールの米軍基地を標的とした攻撃を開始してから数時間後に行われたものであった、ということである。

 6/23、イランは、カタールにある中東最大の米軍基地であるアル・ウデイド空軍基地を標的とした弾道ミサイル攻撃を敢行した。即座にパニックを引き起こし、空域は全面的に閉鎖された。ただし、米軍側に事前の通知を行い、米国大使館はカタール在住の全アメリカ国民に、具体的な時期や説明なしに屋内退避命令と警告を発令、防衛準備と撤退を可能とさせた。イラン軍司令部は、今回の作戦は「標的を絞った均衡の取れた」ものだと、きわめて限定的で抑制された攻撃(6発のミサイル攻撃)にしかすぎないことを明らかにした。イラン指導部は、米国がイスラエル・イラン紛争への関与を続けるならば、さらなる攻撃を行うことを明らかにし、この地域にあるすべての米軍基地が今や標的となっている、と警告し、実際にアル・アサド空軍基地など、イラクの複数の米軍基地が攻撃を受けている。このことは、米軍のStars and Stripes紙も確認している。

(この米軍基地攻撃について、イラン革命防衛隊は声明を発表し、「アメリカは火遊びを選んだ…しかし、その炎の大きさを計算に入れていなかった。この地域の米軍基地は危険地帯にある…驚きの出来事が待ち受けている。」と警告している(Iran military @Iran_military00 午前0:01 · 2025年6月24日)。)

<<「イスラエルよ、爆弾を投下しないでくれ」>>
しかし問題は、広範な和平合意としては成立しておらず、敵対行為の停止のみが焦点となっている点に留意すべきであろう。
トランプ氏の発表後、数時間にわたる沈黙が続いたが、イスラエルは、停戦協定の当事国であることを確認、イランのアッバス・アラグチ外相は、「イスラエル政権がイラン国民に対する違法な侵略を停止する限り、(イスラエルによる戦争開始への)対応を継続する意図はない」と確認し、事態は前進するかに見えた。

ところが、イスラエルは、イランが期限後にミサイルを発射したと主張し、イラン側が否定しているにもかかわらず、イスラエルは「テヘラン中心部への強力な対応」を実行するとして、カッツ国防相は軍に「テヘラン中心部」への報復を指示している。
ネタニヤフ首相は閣僚に対し停戦に関するコメントを控えるよう求めたが、強硬派のイスラエル・ベイテヌ党党首アヴィグドール・リーベルマン氏は、トランプ氏の停戦合意には、イランの「無条件降伏」が欠如していることを非難し、ネタニヤフ首相率いるリクード党のダン・イルーズ氏は、「敵は降伏したのか?それとも、これは我々がポイントで勝利しただけのラウンドなのか?」と同調している。イスラエルの右派や米国に拠点を置くイスラエル支援者の間では、既に始まったばかりの和平に不満の声が吹き上がっている。
一方、野党党首のヤイル・ラピド氏は、ネタニヤフ政権はガザでの戦争を今すぐ終わらせるべきだと述べ、「ガザでも(戦争を)終わらせる時が来た。人質を返還し、戦争を終わらせるべきだ。イスラエルは復興に着手する必要がある」と述べている。混迷の事態の進展である。

トランプ大統領は、こうした危うい事態の進展にいら立ち、「イスラエルよ、爆弾を投下しないでくれ。もし投下したら、重大な違反だ。今すぐパイロットを帰国させろ!」と投稿し、 「イスラエルにもイランにも満足していない」、「どちらも「自分たちが何をしているのか分かっていない」と、怒りをぶちまけている。

しかし、これはトランプ氏自身がまいた種である。この「12日間戦争」終結の危うさは、トランプ氏自身が、ほんの数日前の国際法違反の無謀なイランへの奇襲攻撃で、巨大爆弾を投下し、「米軍はイラン政権の3つの主要核施設、フォルドゥ、ナタンズ、エスファハーンに対し、大規模かつ精密な攻撃を実施しました。今夜、私は世界に対し、今回の攻撃が目覚ましい軍事的成功を収めたことを報告できます。イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅しました。」など自慢した、その強引さ、虚構の破綻の結果でもある。
真の緊張緩和と平和的解決を達成するためには、この我田引水的、トランプ的「取引」そのものを停止し、軍事的緊張激化それ自体を禁止すること、その合意こそが求められているのである。
(生駒 敬)

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