【訳出】古賀氏の追い出しの意図はその目的を果たさないかも知れない

【訳出】古賀氏の追い出しの意図はその目的を果たさないかも知れない
                        Japan Times 記事 on April 5, 2015
          “Koga’s parting shot may not hit its target”   by Mr. Philip Brasor

 この二月、Reporters without Borders (1*) は報道,出版の自由(“press freedom”)についての年間ランキングを公表した。日本は、昨年より2ランク下がって61位で台湾(51位)や韓国(60位)よりも下になった。下落の理由は、昨年12月に施行された国家機密保護法による。この法律は、政府の内外にかかわらず機密情報のリークを罰するものである。
 日本はずーとランクを落としている。2010年には11位であった。この急激な信頼の崩壊は、2011年3月に起こった原発事故とその後の除染作業報道の不明瞭さ( “ambiguous”)によってもたらされた、と神戸大学の内田教授は「アエラ」で述べている。さらに同教授は、日本の報道機関は、東京電力と政府の行為、行動を十分に精査しなかった。そのために Reporters without Borders はこの国のメディアは政府の統治のもとにあると想定した結果である、とした。

 もし、あなたが日本のメディアを詳しく見続ければこの主張を受け入れることは容易である。しかし、報道機関が上からの圧力に屈服する明瞭な実例を見つけることはむつかしい。
 先週、メディアは、「報道ステーション」での、古館アンカーと古賀コメンテイターのちょっとした諍いに、騒がしかった。
 古賀氏は、経産省の前職員で数年前退職してそれ以来政府の政策を批判してきている。しばらくは、彼は「報道ステーション」のゲスト博識を勤めてきた、そして同ステーションは我々が他の番組から得られるよりも、より掘り下げた報道を誇っている。番組製作者は古賀氏が思っていることを語る自発性を評価しているが、テレビ朝日の彼らの上司は違った感想を持っていると伝えられていた。
古賀氏は、人質事件―イスラム国の手による二人の日本人の死亡によって終結したーの政府の対応に対する彼の実況コメント故に、4月以降「報道ステーション」に出ることはないであろうと、1月に告げられたことを公表した。2月25日の外国特派員協会での記者会見で、彼は、テレビ朝日の上層部は安倍政権へのへつらいに努めていて (”trying to curry favor with”)、その為に「報道ステーション」の製作者に彼を辞めさせるよう圧力をくわえた、と語った。
 事前に知らされなかったが、古賀氏は3月27日の「報道ステーション」での出演が最後と思っていた。そして彼はイエメンにおける危機について討議すると思われていた。しかし古館アンカーが古賀氏にその解説を依頼したところ、古賀氏が話題をかえて、彼がこの番組を去るであろうと述べた。テレビ朝日の上層部と番組制作に携わっている古館アンカーの所属会社の意向によって。「報道ステーション」はライブ番組であり、このような突発的出来事は異例であった。古館アンカーは優れた機転で、「ここは古賀さんが下される場面ではない。」と古賀氏に反論して、その場を取り繕った。しかし古賀氏は答えた。それはおかしい。古館さんはずっと前に、私の降板について「何もできなくて」と謝った、と。古賀氏は、会話を録音しているのでこのことは証明できるとした。それから古賀氏は安倍政権の批判を続けた。
 古館アンカーのインタビューアーとしての際立った誠実さ/公平さは、主役としての役目である、そして彼は明らかに古賀氏に番組を乗っ取られたことで腹を立てていた。テレビ朝日は週末にかけて、その広報部は政府による関与は事実に基づいていないとして古賀氏を非難する声明を出した。。また彼を不作法だとして非難し、視聴者にたいして謝罪した。たとえこの出来事が、おそらく、「報道ステーション」始まって以来の楽しませる場面であったとしても。この騒動に付随して、内閣府は元経産省職員の降板について何らテレビ朝日に圧力を加えていないと菅官房長官は述べた。
 我々はその見識故に降ろされたという古賀氏の言葉のみを受け入れることができる。たとえテレビ朝日や政府が真実を言っているとしても、日本の主流の報道機関のメンバーは、古賀氏と異なり、既定路線としての権力と共に歩む、脅されていなくても。
「国境なき記者団」のランキングについての雑誌「現代ビジネス」の最近の記事で長谷川氏(前東京新聞編集者)は、実際の報道の自由(“real press freedom”)は日本にはない、と述べている。それは「機密保護法」によるものではない。大抵の報道者は決して秘密情報を漏らさないだろう。なぜなら厳密に言えば彼らは報告者であり、サラリーマンである。彼らは仕事に気を配るよりも、より会社での地位/職位に気を使っている。彼らはすべて昇進/昇格を待つ流れにいる、と長谷川氏は述べている。
 よく知られている記者クラブーそこでは報道関係者は政府機関よりスプーンでお口に運ばれる情報をオウム返しに繰り返すーはいかなるニュースも一つの物語として公正で公平なものであるように仕向けられている。それは公表された秘密である。記者が政治家に話しかける時、彼らはメモをお互いに共有する、と長谷川氏は指摘する。このことはあらゆるニュースの発信元は同じ情報を報じる。違いがあるとすれば、個々の情報元の考え方である。政府の助けになろうがなるまいが、長谷川氏は、このことはいかなる相違も作らない、と考える。連合軍の軍事行動への自衛隊の参加を許す安倍首相の努力に関して、メディアは、集団的自衛権(”collective forces”)を余すところなく完璧に報じている。しかし一般大衆はこれについて何も知らない、と長谷川氏は言う。二月毎日新聞のインタビューで、報道の自由について小説家浅田次郎氏は愚民思想―人々のより良い統治のための限られた情報―を非難した。しかしメディアが関連ニュースを報道できないとき、何故に政府は無知な大衆を増殖することを必要とすべきなのか?長谷川氏が政治的に保守であるということは関係ない。彼は機密保護法についても論理上の意見も持っていない。彼は日本のリベラルな日刊紙で働いていた。彼は真実がいかにご都合主義に奉仕し役立ってきたかを、じかに、見てきている。古賀氏の即興劇は賞賛と非難を巻き起こした。しかし彼は最後に虚空に向かって絶叫し訴えている。
訳:芋森  [ 了 ]

(1*) Reporters without Borders
国境なき記者団 は、言論の自由(または報道の自由)の擁護を目的とした、ジャーナリストによる非政府組織。1985年、フランスの元ラジオ局記者ロベール・メナールによってパリで設立された。世界中で拘禁されたジャーナリストの救出、死亡した場合は家族の支援、各国のメディア規制の動きへの監視・警告が主な活動としている。2002年以降、『世界報道自由ランキング』(Worldwide press freedom index) を毎年発行している。2006年11月には「インターネットの敵 (Enemies of the Internet) 」13カ国を発表し、2014年現在には19カ国が挙げられている。日本に対しては、従来から記者クラブ制度を「排他的で報道の自由を阻害している」と強く批判しているほか、2011年の福島第一原子力発電所事故に関連した報道規制や、秘密保護法などの政府情報開示の不透明さに対して警告を発している
2014年 ランキング:
1. Finnland, 2. Netherland, 3. Norway, 4. Luxembourg, 5. Andorra, 6. Liechtenstein,7.Denmark, 8.Iceland, 9.New Zealand, 10. Sweden
ちなみに Germany 14, Canada 18, UK 33, France 39, USA 46  

【出典】 アサート No.449 2015年4月25日

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