【投稿】第三次世界大戦化と経済の軍事化--経済危機論(83)

<<「誇りある、ロッキード・マーティン」>>
ロシア・プーチン政権を挑発し、泥沼の軍事紛争の罠に引きずり込んだ米・バイデン政権。今やバイデン政権の目的は、ウクライナの防衛から、ロシアの弱体化・敗北にあることを明らかにし、一切の平和的交渉解決を拒否する、危険極まりない緊張激化路線・第三次世界大戦化を前面に押し出している。
米産軍複合体の象徴でもある軍需独占体・レイセオンの役員からバイデン政権の国防長官に横滑りしたロイド・オースティン氏は、ウクライナにおける米国の目標の一つは、ロシアが「弱体化」するのを見ることである、「ロシアがウクライナに侵攻したようなことができない程度に弱体化するのを見たい」、その軍事力を「再現する能力」を持たないようにすることであると宣言し、ウクライナは「正しい装備」と「正しい支援」があれば勝利できると主張、米国はウクライナの勝利を支援するために「できることは何でもする」と公言してはばからない事態である。

「今日、私はアロッキード・マーティンを訪れました」

バイデン大統領自身が、5/3、アラバマ州トロイにある軍需産業・航空防衛機器大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)の対戦車ミサイル「ジャベリン(Javelin)」製造工場を訪問し、「今日、私はアラバマ州にあるロッキード・マーティンの工場を訪れました。そこでは、私たちがウクライナに送っているジャベリン・ミサイルを製造しています。ここで製造された兵器は、現在ウクライナの英雄たちの手に渡り、あらゆる違いを生み出しています。それは私たち全員が誇りに思えることです。」と工場労働者を称賛し、励ましている。
米欧軍事同盟のNATO事務局長のイェンス・ストルテンベルグ氏も、「この戦争が何ヶ月も何年も続く可能性は絶対にある」と請け合う事態である。武器・軍事援助に加えて、5/8、アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、日本を含むG7諸国は共同声明で、モスクワからの石油輸入を段階的に停止することによって、「我々はプーチン経済の大動脈を強打し、プーチンが戦争の資金を調達するために必要な収入を否定する」と述べている。彼らは明らかにウクライナ危機の泥沼化と第三次世界大戦化を推し進めているのだと言えよう。
2/24のロシアのウクライナ侵攻の開始以前からも、バイデン政権はウクライナに対する大量かつ多額の軍事援助を実行してきたが、2/24以降は、その3日目・2/26以来、2~3週ごとに次から次へと追加の軍事・経済援助を発表。非公開は別として、発表されただけでも、2/26=3億5000万ドルの軍事援助、3/16=8億ドルの軍事援助、3/30=さらに追加の5億ドル、4/12=7億5000万ドルの武器援助、5/6=1億5000万ドルの武器パッケージ援助を発表。バイデン政権は、さらに議会に対して、ウクライナに対する「安全保障と軍事支援」に200億ドル以上、「経済支援」に85億ドル、「人道支援」に30億ドルの追加資金、合計330億ドルという膨大な資金を要求。

<<戦争法案に賛成する“進歩派”>>
問題は、議会側が、バイデン政権の要求を大幅に上回る軍事援助を可決していることである。議会民主党はこれを398億ドルに増額し、5/10、米下院本会議は、ウクライナへの新たな武器供与や経済・人道支援のための総額400億ドル(約5兆2000億円)余りに上る緊急支援法案を賛成368、反対57の圧倒的賛成多数で可決され、上院に送付され、そこでも来週の可決が当然視されている。反対票を投じたのは共和党員だけであった。民主党主流派は当然ながら、民主党内左派、プログレッシブグループ、最左派のアレクサンドラ・オカシア=コルテス議員まで含めて、すべて賛成票を投じている。この法案可決の前の4/28、議会は共和党のジョン・コーニン上院議員が提出した共和党主導のウクライナ戦争法案(レンドリース(武器貸与)法を復活させ、ウクライナに適用する法案)を下院は417対10の圧倒的多数で可決している。ここでもコーニン氏の法案に反対した議員はわずか10人で、その全員が共和党員であった。民主党の進歩的な議員でこの法案に反対した者は一人もいない。コルテス(ニューヨーク州)をはじめ、Ro Khanna(カリフォルニア州)、Jamie Raskin(ミシガン州)、Pramila Jaypal(ミシガン州)など、議会の進歩的左派のリーダーたちはすべてコーニン法案に賛成票を投じている。どこが進歩派、プログレッシブグループなのかという、惨憺たる状況である。
問題の深刻さは、こうした膨大な軍事予算を推し進めることによって、2022年だけでも米国のウクライナ支援総額は530億ドル以上にも膨れ上がることである。米国がアフガニスタンでの戦争に費やした平均年間金額(460億ドル)をすでに上回っているばかりか、この3か月以内に米国がロシア/ウクライナ戦争につぎ込んだ軍事援助の総額は、年間のロシアの総軍事予算(659億ドル)にも匹敵する膨大な額に膨れ上がっていることである。結果として、米国はロシアが毎年軍隊に費やしている額の10倍以上を軍事費につぎ込んでいるのである。現実には、膨大な予算を軍需産業につぎ込む、経済の軍事化である。
その代償としてバイデン政権は、当初220億ドルであったコロナウイルス対策予算は100億ドルにまで削減され、貧困国へのワクチン援助も削減されている。100万人ものアメリカ人がコロナウイルスで死亡し、世界中で600万人以上が死亡しているにもかかわらず、である。さらに、米国国勢調査局の最新のデータによると、「約4250万人のアメリカ人が貧困線以下で生活している」実態が報告され、「月間貧困は2022年2月も引き続き上昇しており、米国の総人口の14.4%の貧困率にまで達し、全体として、2月の貧困者は12月に比べて600万人増え」ている深刻な事態にもかかわらず、軍事予算の肥大化をさらに推し進めようとしているのである。

  •  ノースウェスタン大教授Steven Thrasher氏は、
  • バイデンはロッキード・マーチンの戦争宣伝に出演し
  • ペロシはウクライナで、戦争遊説の行脚
  • 民主党が提供できるのはこれだけ
    戦争、警察、戦争屋のための資本強化、そしてさらなる戦争
  • 彼らはコロナウイルスのための資金にはノー
  • 中絶の法制化も意欲なし
  • ただ戦争、戦争、戦争
    とツイートしている。

アメリカの 女性主導の平和団体「コードピンク」の共同創設者であるメデア・ベンジャミン氏は、バイデン氏の軍事費増大要求を 「第三次世界大戦の頭金 」と呼び、「私たちに必要なのは外交であって、これ以上何十億ドルもの兵器ではありません!」と訴えている。
5/7 ボストンでの集会で、マサチューセッツ・ピース・アクションの事務局長であるコール・ハリソン氏は、「核戦争防止・即時交渉」「ロシアとの戦争・ノー!」を前面に掲げ、「この問題は解決しなければならないのに、私たち

(5/7  7NEWS BOSTON)

は間違った方向に進んでいる。世界大戦やロシアとの戦争が起こる危険性がある」「妥協と交渉が必要だ」と訴えている。

金融資本主導の投機経済の悪化と景気後退、インフレーションの高進、つまりはスタグフレーション危機の進行によって、アメリカ社会の政治・経済のあり方が根本的に問われている最中に、バイデン政権は、対ロシア、対中国との緊張激化路線、世界大戦化と経済の軍事化で事態を糊塗し、乗り切ろうととしているとも言えよう。この危険な路線を転換させる行動と闘いこそがいま最も緊切に要請されている。
(生駒 敬)

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