【投稿】自暴自棄でザポリージャ原発を攻撃する敗北必至のウクライナ
福井 杉本達也
1 ウクライナの敗北
日本の新聞報道とは全く異なり、「Сводка генштаба ВСУ: российские войска продолжают наступать, наносят удары по всем направлениям」(ウクライナ軍参謀総長の要約: ロシア軍は前進を続け、あらゆる方向に攻撃している。2022.8.19))。ウクライナ軍は約束した反撃を遂行することができず、ロシア軍は今やウクライナの黒海沿岸全体を乗っ取る可能性が高いと、トランプ政権の元国防長官顧問ダグラス・マクレガー大佐は語っている(RT:2022.8.15)。
ウクライナは戦争に敗北した。ドンバスが陥落すれば終わりである。10億ドルの援助も「ウクライナ政府に届く援助は決して私たちには届きません」とウクライナ兵は語った。米NATOが供与した武器が前線に届く量は30%を切り残りは闇市場に消える。ウクライナの国会議員は先月、給与の70%増額を可決した。援助はこのようにして消えてゆく。政権の腐敗は頂点に達している。「バイデン米政権がロシアの侵攻を受けるウクライナに供与した大量の兵器を追跡管理しきれず、一部がロシア側に流出した疑いがあることが15日、米政府関係者の話で分かった。ウクライナの混乱を背景にテロ組織や武装勢力に兵器が拡散、横流しされる可能性も指摘され、新たな紛争を含む地域の不安定化や治安悪化の火種になる懸念がある。」(ワシントン共同:2022.7.15)と報道されている。ゼレンスキー大統領は7月17日、検事総長とウクライナ保安庁トップを解任した(AFP:2022.7.18)。「ニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は、米政府はウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府に対して、公にされているよりもはるかに大きな懸念と不信感を持って接していると記した(AP:2022.8.3)。
2 アムネスティは「市民を盾に」とウクライナ軍を批判
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは4日「ウクライナの軍が、国際法に違反する形で学校や病院を含む民間人居住地域に軍事拠点を構築して市民の命を危険にさらしていると批判した。」との報告書を公表した(AFP=時事:2022.8.4)。4か月にわたる調査の結果をまとめた報告書では、「ウクライナ軍が19の自治体で学校や病院に基地を設け、人口密集地から攻撃を仕掛けていたと結論。こうした戦術は市民を危険にさらし、国際人道法に違反すると指摘」した(AFP:2022.8.6)。ようやく、アムネスティが、ウクライナ軍の人道犯罪を指摘した。これに対し、ウクライナ政府は激怒し、米国側の権威筋の中からも「利敵行為だ」といって猛然と非難した。こうした状況は早い段階からロシア軍や現地に入って取材している独立系ジャーナリストが報告していたことであるが、アムネスティはそれを遅ればせながらも「公式に」確認したのである。
3 ウクライナ軍による無謀な欧州最大のザポリージャ原発への攻撃
完全に劣勢に回り、敗北が確定したウクライナ軍は自暴自棄に陥っている。自国の領土を放射能の汚染地域にし、国民を放射能で殺しててでも、ロシアの進撃を止めることが目的である。欧州最大のザポリージャ原発を、ウクライナ軍が対岸のニコポルから砲撃し続け、重大な核災害を起こしかねない。それは、ゼレンスキー大統領の一存では不可能である。恐らく、米政府に命令され、幇助されて、ザポリージャ原発に、ある種のバンカーバスター爆弾、おそらく戦術核を使用するだろうといわれている。巨大な核事故を引き起こし、それをロシア人のせいにしようとしている。ウクライナ危機により原発が攻撃対象になりうることが立証された。村田耕平氏は、市民社会の直観でたとえばミサイル攻撃に対する原発の防衛は自衛隊に頼るにしても不可能と判断されます。(村田耕平2022.8.11)と書いている。
4 ゼレンスキー大統領はザポリージャ原発を攻撃と表明
8月13日・ゼレンスキー大統領は「原発に向けて撃ったり、原発から撃ったりするロシア兵は我が軍の特別な目標となっている」と警告し、ウクライナ軍側がザポリージャ原発を攻撃していることを公式に認めた(日経:2022.8.15)。ウクライナのザポリージャ原発は3月中旬からロシア軍の管理下にあり、ロシア軍の兵士がいる。その兵士を攻撃するとした。その発言通り、ウクライナ軍はイギリスが開発した兵器、米国の精密誘導弾で原発を攻撃しており、すでに数十発を撃っている。使用済み核燃料貯蔵庫から10メートルしか離れていない場所に着弾した誘導弾もある。使用済み核燃料貯蔵庫に命中すると、冷却が失われた使用済み核燃料は放射能漏れや爆発を引き起こす。当然、ロシアがIAEAに対し、原発が攻撃されている状況の査察を要求したが、国連上層部・米英によって妨害されている。米英はウクライナ軍の原発攻撃を黙認しているだけでなく、そそのかして原発を攻撃させている。
5 原発が破壊されればチェルノブイリや福島第一をはるかに上回る大惨事に
ウクライナの砲兵隊がエネルゴダールのザポリージャ原発内の冷却システムと核廃棄物貯蔵施設に複数のロケット弾を直接発射した、と地元政府のウラジミール・ロゴフ氏は語った。「誘導ミサイルの1発が、使用済み核燃料保管容器からわずか10メートルに命中した」。「50~200メートル離れたところで爆発したものもあった」と述べている。
100万キロワットの6基のザポリージャ原発の格納容器の「コンクリートの厚さは80~100センチ、ミサイルがどの部分に当るか、重さ・スピード・爆発性にもよりますが、破壊度が変わります。ミサイルが当たった場合の計算なんか誰もしたことはありません。誰も思いつきませんから。」と述べた(RT:ロゴフ:2022.8.17)。「貯蔵場所は公開されているので、いかなる打撃も数十から数百キログラムの範囲の核廃棄物の放出と地域の汚染につながる」、「平易な言葉で言えば、それは汚い爆弾のようなものです」。「6基のリアクターには使用済み核燃料発電所で最も危険な場所です。2001年に建てられた使用済み核燃料コンテナですが、なぜ屋根がないのか施設全体を覆わなかったのか分かりませんが、核燃料が保管されており、膨大な放射能がそれぞれのコンテナに保管されており、300の核燃料を保管できますが、現在その3分の1が埋まっています。コンテナが近すぎて、もしロケットがコンテナに落ちれば、コンテナはグループで破損し崩壊します。核物質が火災を起こした場合、風向きは神のみぞ知る。20~30のコンテナが破壊された場合、放射性物質は9か国に飛散する。そして西ウクライナ領土に。」とその危険性を警告している(ロゴフ:同上)。
ザポリージャの惨事は、意図的に仕組まれた大惨事となる。IAEAは、ザポリージャ原発への攻撃を「自殺行為」として非難した。しかし、国連は、原発攻撃でウクライナを特に非難しておらず、誰が責任を問われるべきかについての「矛盾する報告」があったと主張している。全くの責任の放棄である。ロシアのキリロフ中将は、ザポリージャ原発でのキエフの行動により、チェルノブイリとフクシマで起こったことと同様の状況が生じる可能性があると考えていると述べた。1プラントの少なくとも1つの原子炉の内容物の約4分の1が空気中に放出されると、放射性物質は、ポーランド、ドイツ、スロバキア、さらに、「スカンジナビアまでをもカバーする」。「このような緊急事態は人口の大量移住を引き起こし、多くのヨーロッパの専門機関の予測によって確認されているヨーロッパで差し迫ったガスエネルギー危機よりも壊滅的な結果をもたらすでしょう」と述べている。
元裁判官の樋口英明氏は、我が国原発に触れ「我が国の面積は全世界の国土の0.3%ししかすぎませんが、そこに世界の全原発の10%余の原発が、海岸沿いに立ち並んでいるのです」。「国防と称して敵基地攻撃能力の必要性を説く自称保守政治家たちが、同時に原発の維持や再稼働を唱えています」「原発が我が国の海岸沿いに立ち並んでいる限り、我が国にには戦争遂行能力がないのです。開戦したとたんに敗戦が確定するのです。」「『原発は自国に向けられた核兵器である』という言葉は原発の危険性を如実に示したものです」と警告している(樋口英明「ロシアのウクライナ侵攻と原発問題」『季節』2022夏号)。