<<バイデン「核のハルマゲドンリスク」62年危機以来最も高い>>
10/6、バイデン米大統領は、民主党上院選挙委員会の資金調達パーティーで、核の「ハルマゲドン」のリスクは1962年のキューバ・ミサイル危機以来最も高くなったと語った。「ハルマゲドン」とは、人類絶滅への「類例のない最終戦争」を指す。バイデン氏は、ロシアのプーチン大統領が「戦術核兵器の使用について話すとき、冗談を言っているのではない」(Putin is “not joking”)と述べ、「戦術核兵器を容易に使用でき、ハルマゲドンに至らないというようなことはないと思う」と述べた
のである。この発言は、公的な記者会見の場ではなく、民主党上院議員候補のための私的な資金調達の場でなされたもので、このところしばしば不用意に脱線し、失言、失念するバ
イデン氏ではあるが、事の重大性は当然認識しているはずであり、たちまち大きく取り上げられている。
慌てたホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官は、「われわれ自身の戦略的核態勢を調整する理由は見当たらないし、ロシアが間もなく核兵器を使用する準備をしているという兆候もない」と述べている。
ところが、こうした動きといかにも連動するかのような動きが報道されている。「米国は “核の非常事態 “で使用するために2億9000万ドル相当の抗放射線薬を購入」との報道である。
10/4、米国保健社会福祉省によると、同省は、「放射線および原子力緊急事態後の人命救助に向けた長期的かつ継続的な取り組みの一環として、アムジェンUSA社から医薬品「Nplate」の供給を受けることになりました。Nplateは、成人および小児患者の急性放射線症候群(ARS)に伴う血球損傷の治療薬として承認されています。」という。
「同省が購入しようとしている Nplate は、皮下注射用粉末で、 125 mcg(1 回の注射)は約 1,195 ドル、彼らは250,000回分未満しか購入していません。議会のすべてのメンバー、その家族、および 100 万ドル以上を寄付したすべての人に行き渡るものです。」とツイッターで批判されている。
こうした批判に対して同省のスポークスマンは、テレグラフ紙に「これは、我々の継続的な準備と放射線安全保障のための作業の一部であって、ウクライナ情勢によって加速されたものではありません」と述べている。
10/7、ロシアのタス通信は、ホワイトハウスのトップは、ロシアのプーチン大統領が 「核兵器使用の可能性について冗談を言っているのではない 」と考えていると前書きした上で、以下のように報道している。
「プーチン大統領は9/21のテレビ演説で、ワシントンがキエフをロシア領への軍事行動へと向かわせ、核の恐喝が行われていると述べています。大統領は、この問題は、核の大惨事を招く危険性のあるザポロージエ原子力発電所への砲撃だけでなく、NATOの主要国の特定の高官代表による、ロシアに対する大量破壊兵器、すなわち核兵器の使用の可能性と容認性に関する発言についても言及しているのです。『私は、ロシアに対してこのような発言をする人々に、わが国にもさまざまな破壊兵器があり、その一部はNATO加盟国よりもさらに新しいものであることを思い出してもらいたいのです。そして、我が国の領土保全が脅かされた場合、我々は当然、ロシアと国民を守るために、自由に使えるすべての手段を用いるだろう』と警告し、『これはハッタリではありません。ロシア国民は、祖国の領土保全、そして独立と自由が確保されることに確信を持つことができる。そして、もう一度強調したいのは、われわれは自由に使えるすべての手段を持っているということです』と強調しているのです。」
<<ゼレンスキー「ロシアへの先制核攻撃をNATOに要請」>>
同じ10/7、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシア領への先制核攻撃をNATOに要請したと報じられている。
ゼレンスキー氏は、10/6、オーストラリアの独立系シンクタンク・ローウィー研究所でビデオ演説を行った中で、「NATOは何をすべきか。ロシアによる核兵器使用の可能性を排除するのだ。予防攻撃を行って、彼らが行使するとどうなるか、先にわからせるのだ。その逆はだめだ。ロシアによる核攻撃を受けて、よくもやったな、いいか、今に見ていろよ!という態度ではいけない。自らの圧力行使を見直すのだ。これこそまさにNATOのやることだ。(核兵器の)使用方法を見直すのだ」と、呼びかけたという。(sputnik 2022年10月7日, 11:39)
ゼレンスキー氏の危険な本性がむき出しにされた、と言えよう。
ゼレンスキー氏の発言を受け、国連のステファン・デュジャリック事務総長報道官はブリーフィングの中で、核兵器の使用に関する議論は一切受け入れられないと反発している。
米国務省は先週、米国自身が関与したと疑われているノルドストリームパイプラインの破壊行為の後、すべてのアメリカ人に「できるだけ早く」ロシアから離れるように勧告している。退避勧告の本当の理由は、パイプライン爆破を通じて、本格的な戦争が勃発するリスクが高まることを予見したものと言えよう。
このノルドストリームパイプライン破壊後、ドイツの経済大臣は、米国と他の同盟国、「友好的」なはずのガス供給国が、実は天文学的な価格で供給していると非難し、「戦争で利益を得ている」、世界のエネルギー価格を高騰させているウクライナ戦争の影響から利益を得ていると非難せざるを得ない状況に陥っているのである。(cnbc.com/2022/10/05/)
バイデン氏は、2月のウクライナ危機勃発の際には、アメリカ人は核戦争を心配すべきではないと述べていたのであるが、その後、現在に至るまでその言葉とは裏腹に、ロシアと中国を「最大の敵」として危機を煽り、ウクライナ危機から最大限の政治的経済的利益をかっさらい、核戦争の可能性をこれまで以上に高めるために、際限のない挑発を続けてきたのである。緊張緩和と外交努力こそが要請されているときに、バイデン政権は逆のことを行い、米国自身の政治的経済的危機をより一層深めているのだと言えよう。
(生駒 敬)