The New York Times International Edition September 28, 2022
“7,000 miles without food or rest: How does this bird do it ? ”
By Jim Robbins
「食糧や休息なしで 7,000 miles : この鳥はいかにして、それを成し遂げるか?」
今月、何万羽もの bar-tailed godwit* の群れが、うまく順風を利用して飛んでいく。毎年の「渡り」(“migration”)の為に Alaska 南部の干潟や沼地から南に向かい、太平洋の広大な空間を横切って New Zealand や豪州の海岸に向かって。この鳥は、7,000 miles (11,000 Km) 以上の距離の渡りを行っている。 日夜羽ばたいて (“flapping”)、食べたり、飲んだり、休んだりせずに。
* 訳者注: Bar-tailed Godwit : (大反嘴鴫 オオソリハシシギ)
チドリ目 シギ科 全長 39 cm
夏場はユーラシア大陸の極地帯やAlaska 西岸で繁殖し、
冬場はAfrica 西岸部、東南アジア、豪州沿岸部で越冬する渡り鳥。
「私は、学べば学ぶほど、その鳥に驚嘆させられる」と Theunis Piersma, a professor of global flyway ecology at the University of Groningen in the Netherlands and expert in the endurance physiology of migratory birds は述べている。さらに「この鳥は、完全なる進化の成果/結果である。」と。
この鳥の勇壮なる飛行―いかなる陸の鳥よりも最長の non-stop migration―は、雨や強風や他の危険をやりすごして、8-10日間、日夜(”day and night”)続く。 それは、非常に極限的であり、研究者の長距離の鳥の「渡り」についての知見を、遥かに超えている。そして、このことは新しい調査、探求を必要として来ている。
最近のさる研究論文において、ある研究者のグループは述べている。「困難で努力を要する旅程は、鳥の生理学や適応と行動の基礎となり仮説を喚起する。」と。そして一覧票にされた 11 の質問を提出した。 Dr. Piersma は、これら質問の答えの追求を「新しい鳥類学」(“the new ornithology”) と呼んだ。
God wit や他の渡り鳥が成し遂げる驚くべき本性は、追跡の技術の改良によって、この15 年ほどで明らかにされてきている。この改良によって、研究者達には個々の鳥をその全旅程においてリアルタイムで、詳しい進路を追いかける能力を与えられた。
「あなたは一羽の鳥が、ほぼ何処を飛んでいるか、どのような高さを飛んでいるか、何をしているか、その鳥の羽ばたきの頻度を、計量器によって知っている。」とDr. Piersma は述べている。「これは全く新しい世界を切り開いている」と。
(科学者たちが論文等で述べているように、航海に慣れ親しんでいる Polynesian の人々の文化は、これら鳥の渡りを古い昔から知っていて、航海における協力者として利用していた。) ある Godwit の「渡り」の知られている距離の記録は、13,000 Km or about 8,080 miles である。これは、昨年、タグコード 4BBRW を付けた一羽の十分に成長した雄のGodwitによって成し遂げられた。その鳥は New Zealand に向かっている途中に荒れ模様の天候に遭遇して向きを変えて、もっと遠い豪州に降り立った。その鳥は、停止することなく着地するまでの間、237 時間にわたり翼を羽ばたき続けて来た。(その鳥は、今年春、豪州からAlaska に渡り繁殖して、今月、Alaska を飛び立って南方の目的地に飛行中である。)
他の鳥たちは、”dynamic soaring” と呼ばれる技を使って、羽ばたきせずに長期間空中に留まることが出来るが*、godwit は連続する羽ばたき(”flapping”)で力を出していて、このことはより多くのエネルギーを要する。
*訳者注: 例えばアホウドリ “Albatrus”(阿呆鳥、信天鳥とも)は、
一度飛び立てば、うまく気流を捕えたりして “dynamic soaring”
にて、長距離を飛行できる由。
この地球を彷徨い飛ぶ godwit は、常夏(”endless summer”)を求めている。そして、90,000 羽あるいはそれ以上の群れが、Yukon-Kuskokwin Delta やその周辺の湿地から飛び立ってAlaskaを離れる。その地では、鳥たちは繁殖して卵を孵化させて雛を大きくなるまで育て上げる。Alaska and New Zealand は共に godwit が好む餌が豊富で、Alaska では、特に、新しく孵化した雛が好む昆虫が多い。そして New Zealand では、この鳥を狙う鷹がいない。 他方 Alaska は、不安の少ない安全な生息地である。
スマートな姿の鳥たち—斑点のある褐色と白の “aero-dynamic” な翼、シナモン色の胸、長くほっそりとした嘴、支柱のような脚—は、遠路はるばる New Zealand に着いて、南国の夏を迎えれば、光り輝く沼地で、北帰行を始める3月まで、十分に食べて成長する。
この鳥たちは、New Zealand の人々に大切に世話されている。 Christchurch の大聖堂は、歓迎の鐘を鳴らすことを常としていた。しかし、2011 年の地震で Bell Towerが倒壊したため、Nelson の町にある聖堂が、代わってこの仕事を引き継いできていて、今月もこの鐘を鳴らすであろう。
「私は、人々に9日間ぶっ続けに、体を動かすことを試みては、と話している。 止まらず、食べず、飲まず。そこで何が起こり進行しているかを伝えるために。」Mr. Robert E. Gill Jr., a biologist with the U.S. Geological Survey in Anchorage who has studied the birds in Alaska since 1976 は、述べている。 続けて「そのことは想像を広げる」と。
飛行距離は変わることもあるが、ほとんどの godwit は、物語っている。一年のうちに、およそ 30,000Km 又は18,000 mile 以上を飛行する。その鳥たちは、3月になれば、北に帰る直行ルートを取らずに、New Zealand から non-stop で中国の黄海の豊かな干潟まで飛ぶ。そこで食べ物を補給して、Alaska に向かう。その鳥たちは、信じられないような危険な試みに熟知している。この旅程における生存率は 90 % 以上である。
「これは、本当に、マラソンの様なものではない。」Mr. Christopher Guglielmo, an animal physiologist at Western University in London, Ontario, who studies avian endurance physiology は述べている。「それは、月への旅により近い。」と。
これら過激な耐久レースの選手の旅路は、適応した一揃いの服装によって可能である。Godwit は鳥類の形態移行者で、生まれながらの常ならざる適応性を有している。彼らの内臓は、旅立つ前には、「戦略的再構築」を経験する。砂袋のような胃、腎臓、肝臓や腸は、長旅の為の荷物を軽くする為に縮小する。胸の筋肉はこの旅が必要とする、絶えず羽ばたくこと (“constant flapping”) を支えるために成長する。彼らは、空力適応翼とミサイルのような流線形の体でもって、スピードに対応できるよう造られている。長旅に出る前に、唯一彼らが運ぶ荷物は脂肪である。昆虫やミミズのような虫、軟体動物をガツガツ食べた後、体重は二倍になっている。1ポンドから2ポンドへ、または、 450g から 900g へ、というのも、godwit は直接脂肪を飛行の燃料に使う。 Dr. Guglielmo は、この鳥たちを「肥満のスーパーアスリート」と呼んでいた。
専門家たちは godwit はお互いにしばしば伝え合っている、と確信している。とりわけ彼らの渡りとタイミングについて。彼らは集まって、重要事項について決定を下す助けになる一種のグループの意向を作り出す。そして特に渡りについて、投票を行う。
「空模様は、ハリケーンのような天候で、一羽のgodwitの雌鳥が、河口で脚を踏み鳴らして呼び、誰か彼女と共に飛び立つように試みている。」Jesse Conklin, an independent researcher at the University of Groningen who studies the species は述べている。「私は注意して見た。一羽の雌鳥が五日間続けざまに、この行為を行っていることを。彼女の時計は、 Goと言っていた。そしてグループの他の鳥たちは No と言った。その雌鳥は反対票を投じたのだ。」 その鳥は止まっていた。 「しかし、天候が回復するや否や、彼女は最初の群れに合流していた。」
[完] (訳:芋森)