【翻訳】西側に、のけものにされて、ロシアはサウジアラビア人に石油を売る

The New York Times  International Edition、September 21, 2022
“ Ostracized by West, Russia sells oil to Saudis”
By Clifford Krauss

「西側に、のけものにされて、ロシアはサウジアラビア人に石油を売る」

 今年の初め、ロシアがウクライナ国境に軍を集め侵略した時、Saudi Arabia 王室の持ち株会社は、ロシアの主要なエネルギー会社に $600 million 以上の額の投資をした。
 その後、米国、カナダや欧州の数か国が、ロシアからの石油 の輸入を止めたこの夏の間、Saudi Arabia ( 以下「サウジ」) は、自国の火力発電所の為の燃料油 のロシアからの購入額を二倍に増やし、自国の原油 を輸出に回した。今月(9月)ロシアと サウジ は、両国の石油収入を増大させるべし、との決意に落ち着くように、世界の oil price を押し上げるべく努力して OPEC とその同盟生産者を導いた。共に、この動きは、全く異なる サウジ の Moscow への傾斜と、米国からの離れを表している。それでもって、それは通常それ自体で調整されてきている。 サウジの立場は、同国の Crown Prince, Mohammed bin Salman とロシアの President, Vladimir V. Putin の完全な政治同盟にまでは及んでいないが、しかし、2人のリーダーは両国に恩恵をもたらす準備を打ち立ててきている。

 「明らかに、Saudi-Russia の結びつきは、深まっている。」と Bill Richardson, a former U.S. energy secretary and ambassador to the united Nations.は述べている。
 ロシアと、さらに緊密に行動することによって、サウジは、Mr. Putin を孤立させようとする米国とEU の動きを、より難しくしている。 欧州が、ロシアからの石油輸入量を大幅に削減する準備をしている時に、サウジ と中国やインドのような国は、最後の頼りになる買い手として、入り込んできている。
 冷戦時代、サウジと Soviet Union は、仇敵であった。 サウジのリーダー達は、Afghanistan の Soviet 占領に抗する反乱軍に、財政面で支援した。しかし、最近では、シェール地層の水圧破砕が、米国の石油と天然ガス生産のブームをもたらしたので、OPEC やロシアのような主要石油生産国の力を削いで弱くしてしまった。
 このことで、ロシアと サウジは、類似の利害を持つ価値ある仲間として出会った。サウジは、専制的な王国であり、他方 Mr. Putin は、国内の政治的反対勢力を抑圧し排除して来ている。これらのことが、恐らく、両国が接近する助けになっている。
 石油価格が 2014年後半から 2015年にかけて崩壊した後、Moscow と Riyadh は、協力して、米国の会社が、国際エネルギー市場で優位に立つことを阻止して来た。2016年になって、ロシアと サウジは、石油カルテルを広げることに合意して、OPEC Plus* を創設した。

*OPEC Plus : 訳者注
      日本石油連盟の資料によれば、
      OPEC ( Organization of Petroleum Exporting Countries) は、1960年に
      5か国(イラク、イラン、クウエート、サウジ、ヴェネズエラ)によって
結成された。その後、逐次参加国が増加して 13か国となった。

       (5か国、plus リビア、アルジェリア、ナイジェリア、UAE、ガボン、
アンゴラ、赤道ギニア、コンゴ)

      2016年、さらに、10か国が加入して、OPEC Plus として活動。
       (10か国: ロシア、メキシコ、アゼルバイジャン、バーレーン、  
              ブルネイ、カザフスタン、マレーシア、オマーン、
             スーザン、南スーザン )
原油生産の比率: OPEC 30 %, Plus 20%, 計 約 50 %

 彼らの提携、協調は困難に耐えることを、はっきりと示して来ていた。ただし、2020年初頭の短い仲間たがいの例外はあったが。その時はコロナウイルスによる Pandemic の始まりが石油価格の崩落を招き、両国は何をなすべきかについて意見が一致しなかった。
 「ロシア人と サウジ人は、石油価格を押し上げることに類似の関心を持っていてウクライナ紛争は、それをただ強化したに過ぎない。」と Bruce Riedel, a former Middle East analyst for the Central Intelligence Agency and the author of “Kings and Presidents: Saudi Arabia and the United States Since F.D.R.” は述べている。

 サウジの役人達は、ロシアは OPEC Plus をうまく制御するに役に立つ仲間であることを見出して来た。そこでは、石油の供給と価格をいかに統制するかについての異なった意見を持つ生産国の気難しいグループもしばしば生じていた。 そのグループは、Alexander Novak, a former Russian energy minister who is now deputy prime minister と親密に作業する。アナリスト達は、彼について、喜んで、座って他の産油国の大臣たちと何時間でも、計画や関心ごと、それに不平や苦情を聞く人である、と評している。
 今月に入っての生産における小さい調整を発表することによって、OPEC Plus は Biden 大統領からの自立を明らかにした。そのBiden は、この7月に サウジを訪問してPrince Mohammed と拳合わせ (“fist bump”) をしている。 この訪問は、彼が 2020年の米国大統領選挙で、サウジ王家を、Jamal Khashoggi, a Washington Post columnist, の殺害で批判した後、US-Saudi 関係を修復しようとする Mr. Biden の努力であると、広く解釈されていた。数か月の間、Biden はサウジに石油増産を促して来ていた。カルテルの石油減産は、暫時増産に向かう方針に反していた。

 “Russia finds Saudi help to counter Western sanctions”
「ロシアは、サウジが西側の制裁を無効にする助けになっているのを見出している。」

 サウジは、例えばイスラエルとアラブの隣国との間の関係改善の努力を静かに後押ししている米国としばしば同盟を結んで来ている。 今日、数人の解説者は言う。米国と欧州がPutin をウクライナに侵攻した咎めで、孤立させ罰することを追求している時に、サウジ王家はロシアと親密に協議することで、金融上の利害により強いウエイトをかけているように見えると。「ロシアは、自陣にサウジを保持出来て来ていることは、かなり注目に値する。」と Jim Krane, a Middle East expert at Rice University in Houston は述べている。さらに「Putin の目標は、米国とその同盟国の間に入り込むことであり、米国とサウジの関係では、Putin は、いくらか前進している。」
 ペルシャ湾の石油の高官や会社の重役は述べている。即ち、サウジと他の湾岸諸国は、単に何が彼らにとって最善の策であるか、ということで行動している、と。「これらの決定は、サウジ自身の商業上の利益を守っているし、経済的観点からも非常に理にかなっている。」と Sadad Ibrahim Al Husseini, a former Saudi Aramco executive は述べている。
 中東のエネルギー関係の何人かの重役たちは述べている。即ち、米国や他の西側諸国は、石油輸出国にとって、ずっと信頼できる仲間ではなかった。というのも、その原因の大部分は、西側は気候変動に取り組む努力において、化石燃料をこの世界から引き離そうと努めてきたから、と。
 「欧州と米国における、一貫性のないエネルギー政策の続く数年は、結果として、石油の大生産者がそれに順応している重要なエネルギー安全保証のき弱性をもたらした。」と Badr H. Jafar, the president of Crescent Petroleum, an oil company of the United Arab Emirates は述べている。続けて「さらに、今後、数か月、数年の内にエネルギーのチェス盤(”chess board”)は変わり続ける可能性がある。」と。 サウジの、ロシアに関係しての動きの多くは、簡単にお金を稼ぐ楽観的決定と解釈されることが出来よう。
 今年の早い時期に、西側の制裁によってロシアの三大石油会社、Gazprom, Rosneft, Lukoilの株価が暴落した時、当局への提出によれば、Kingdom Holding —Alealeed bin Talal にて運営されている—は、それらの会社に、およそ $ 600 million 投資した、とのこと。
 Price Mohammed に率いられているサウジ国有投資基金は、Kingdom Holding において、重要な少数株主持ち分を有している。その投資額は、多くの西側諸国がロシアから撤退すると宣言した時、その会社のその年の全般の新規グローバル株式投資のほぼ半分に相当していた。 サウジ国有基金が、2015年にロシアに投資するために、$ 10 billion の基金設定を宣言して以来、それは最大の投資の一つであった。 最も実際にサウジが全額投資したか否は、はっきりしていない。
 「ロシアのエネルギー分野への、この大きな投資は、価格の維持によるサウジとロシアの利害のさらなる共同作業への一つの努力である」と Gregory Gause, an expert in Middle Eastern politics at Texas A&M University は述べている。
 この4月、サウジは、親しい同盟国:UAE と共に、両国の火力発電所で使用する、大幅に値引きされたロシアの精製燃料油の輸入量を増やし始めた。これら燃料油の輸入によって、サウジは、自国原油を、値が上がった価格で、もっと多く他国に売ることが出来た。
 7月には、ロシアからサウジへの直接供給は、一日 76,000 barrels に達し 2018年9月以来 2番目に多い量だった、と Kpler, a commodity research and data company は述べている。もっと多くの量のロシア産 燃料油が、間接的に Estonia, Egypt, Latovia 経由でサウジに入っているであろう、と Mr. Victor Katona, a Kpler analyst は述べている。
 その燃料油の多くは、かっては米国に向かっていた。そして同国 Gulf Coast の製油所がそれらを、gasoline, diesel oil & other fuels に精製していた。しかし、米国は 3 月にロシアの石油を禁輸したので、ロシアの輸出業者は慌てて、相当安い値段で買い手を探した。
 「それは、特売品です。」と Ariel Ahram, a Middle East specialist at Virginia Tech. は述べている。 中国やインドといった国々は、30% or more 値引きされた価格でロシア石油を買った。サウジのロシア燃料油の購入は、夏が終われば縮小するが、しかし、来年はまた増加するであろう。

 Saudi-Russian relations は、歴史的に広範囲であったし、完全に一致することはめったになかった。この二国は、暴力で荒廃していたが、統制を求めている Libya において、ある派閥を支援して来ている。しかし、他方、ロシアはサウジの最大のライバルであるイランとの親しい関係を長らく維持して来ている。
 Prince Mohammed は、ウクライナにおけるロシアの侵攻について、公には多くを述べていない。しかし、3月、国連においてサウジは、侵略を非難する決議の投票において、大多数の国々に加わった。サウジは、欧州への 石油輸出 を増加させて来ている。それは、かってロシアから買っていた石油の、いくらかの代替である。
 「サウジの立場からすれば、恐らく Western-Russian dispute の間に自身を置きたくないのであろう。」と、Helima Croft, the head of global commodity strategy at RBC Capital Markets は述べている。
 「私は、Mohammed bin Salman は、大リーグでプレイすることを欲している、と思っている。そして、彼にその機会を与えるものは何であれ、それについては、彼は日和見的(“opportunistic”) であるだろう。」と、Robert W. Jordan, who was the ambassador to Saudi Arabia in the George W. Bush administration は Prince Mohammed について述べている。 続けて「もし Putin を助ける道/方法があるならば、それは素晴らしい。ついでながら、彼は、自分が米国の影響力に依存していない、ということを示すことが出来ている、ということは大した問題ではない。」と。
                          (訳: 芋森)   [ 完 ]

               

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