【投稿】「反ゼロコロナ」抗議行動で第二の天安門事件を画策する米欧

【投稿】「反ゼロコロナ」抗議行動で第二の天安門事件を画策する米欧

                            福井 杉本達也

1 中国の「反ゼロコロナ」抗議行動で1989年の天安門事件の“再現”を期待する西側

12月4日午後6時からの日本テレビの『真相報道バンキシャ』は杭州市や上海市の路上取材と称し、中国の「反ゼロコロナ」抗議行動を報道した。そもそも、中国の「反ゼロコロナ」抗議行動はどのように発生したのか。

ニューヨーク・タイムス紙は10月28日、中国・新疆ウイグル自治区のウルムチの高層住宅で起こった火災で住民10人が死亡したことで、「新型コロナウイルスによるロックダウンが救助活動を妨げたり、犠牲者を家の中に閉じ込めたりしたのではないかと疑い、怒りのコメントがソーシャルメディアに殺到し、住民は火災が発生した街の通りに繰り出した。現在、新疆ウイグル自治区の首都であるウルムチでの事件は、与党共産党に対する大衆の怒りのここ数年で最も反抗的な爆発を解き放った。今週末、中国全土の都市で、何千人もの人々がろうそくと花を持って集まり、火事の犠牲者を悼んだ。キャンパスでは、多くの学生が無言の抗議で空白の白い紙を掲げました。上海では、共産党とその指導者である習近平氏に退陣を求める住民もいたが、これは珍しく大胆な挑戦だった」とし、中国では「コロナウイルスによる死亡者数は他の地域よりもはるかに低く抑えらたが、多くの中国の都市がほぼ停止し、何億人もの人々の生活と旅行が混乱し、多くの中小企業が閉鎖を余儀なくされた」。そのため、「共産党の最大の懸念は、学生、労働者、小規模な商人、そして「民主的変化を要求する抗議行動に共通の原因を見いだした 1989 年の反響のように、これらの同様の不満が異なる背景からの抗議者を協力に導いくことにある。」と報じた。この報道の結論は、最終的に、「反ゼロコロナ」の抗議行動の裏で、1989年の天安門事件の“再現”を期待していることである。

これを裏付けるように、天安門事件の学生リーダーの1人・王丹氏は日本外国特派員協会での12月1日の記者会見で「最近の(中国の)学生は政治に関心がないといわれていたが、(今回の抗議の)最前線にいる」と話した。「非常に勇敢な行動で、抗議行動は多くの人々に影響を与えている」と語った。さらに続けて、政府による抗議行動の弾圧に警戒して、国際社会には「拘束される人々などに注目しい」と訴えたと書いた(日経:2022.12.3)。

2 西側一斉報道への違和感―「反ゼロコロナ」抗議運動の背後にDAO司令塔

こうした西側の一斉の報道に対し、筑波大学名誉教授の遠藤誉氏は「11月26日から28日に掛けて、中国各地でほぼ同時に反ゼロコロナ抗議デモが展開されたが、もしこれらが完全に自発的であるならば、どの都市においても同じように白い紙を掲げて抗議意思を表明することに関して違和感を覚えた。」とし、ウルムチの火災が起きたビルが建っている吉祥苑団地は、「コロナ流行の有無に関係なく、もともと道幅が細く、消防車が入るのが困難な場所で、日本で言うならば『建築法違反』であった。コロナなどなくても、火事が起きたら消防車が入るのが困難で、救助活動に支障をきたすような場所だった。しかし、何者かが『コロナによる封鎖のせいで消防活動ができなかった』という『偽情報』を流したのである。」背後で動いていたのは『全国封鎖解除 戦時総指揮センター』であり、「このような『組織』があったからこそ、中国の主要都市で、一斉に同じ行動に出ることができたのであって、決して『自発的行動』ではなかったことが判明した。」と指摘した。「センター」はアメリカのNED(全米民主主義基金)とも関係しているとし、「10月25日、NEDや台湾民主基金会などが主催する『世界民主運動』の世界大会が台北で開催された。蔡英文総統が出席して、1ヵ月後の統一地方選挙に向けて、民意が民進党に向かうように力を入れたのだが、…民進党が大敗した。反ゼロコロナ『白紙運動』デモはその直後から起き始めた。もし民進党が勝っていたら、このようなデモは起きなかったかもしれない。」と分析し、香港が「宣伝部」司令塔になっていると指摘している(遠藤誉「反ゼロコロナ『白紙運動』の背後にDAO司令塔」Yahoo 2022.11.30)。

ツイッター上の「白纸公民White Paper Citizen」は11月30日の新宿南口での「反ゼロコロナ」集会の映像を流していた。チベット独立運動の旗が演説者の後ろに。そのすぐ横にはユニオンジャックの入った中国返還前の香港の旗が、さらに右隅には米国が2020年11月6日にテロ組織認定リストから除外した東トルキスタン・イスラム運動の旗が見える。誰が暴動を煽っているかは遠藤氏の指摘通りである。

周知のようにNEDは1982年にレーガン政権により「アメリカ政治財団」(American Political Foundation)の研究による提案という形で設立が決定された 。それは、これまでアメリカ中央情報局(CIA)が非公然でやってきたことを公然とやる目的をもったものであり、毎年米国家予算から資金提供を受けている。そのうちには国務省の米国国際開発局 (USAID) 向けの予算も含まれている(Wikipedia)。

3 自らがまいた種を中国の「ゼロコロナ」政策のせいにする

米欧諸国は中国の内政である「ゼロコロナ」の公衆衛生政策に不当に介入し、ウクライナ侵攻を理由としたロシア経済制裁やバブル崩壊によって不況に陥った自らの愚かな政策の責任を中国に転嫁し、「反ゼロコロナ」暴動を煽っている。11月23日付けの日経新聞は「中国感染拡大・市場に冷水」との見出しで、「ゼロコロナ」政策の「規制緩和期待しぼむ」とし、「テスラなど中国関連銘柄の株価が下落。2023年以降の世界経済のけん引役としての期待が高まっていただけに、市場は冷や水を浴びせられた格好だ。」と、あたかも中国に不況の全ての責任があるかのように書く。ヤクザ顔負けのいいいがかりである。そもそも、3年前の2020年、ロンドンやニューヨークなどの主要都市をロックダウンしつつも、最大の死者を出し続けたのは米国や英国など米欧諸国だったのではないか。その舌の根を乾かぬうちに中国の「ゼロコロナ」政策を暴動まで用いて強制的に政策転換しようとすることは盗人猛々しいにも程がある。

既に、広州は事業を再開し、リスクの低い地域での食事サービスを許可している。北京のショッピングモールも徐々にオープンし、一部の都市では、密接な接触者が特定の条件下では自宅検疫を行うことを許可し、一部では定期的なPCR検査が免除されるとしている。孫春蘭副首相は、オミクロンウイルスの病原性が弱まるにつれて、予防と管理において新しい状況と新しい課題に直面していると述べ、コロナに対する中国の対応を継続的に最適化するとしている。「中国で何らかの革命を期待しているタイムズの記者は、おそらく失望するでしょう。中国経済はそこそこ好調です。人々はほとんど合理的な健康対策に満足しており、他のすべては交渉可能です。『欧米』の論説作家は、中国を国民を抑圧する独裁政権として描くのが好きだ」(MoA 2022.12.1)。第二の天安門事件は起こりようがない。

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