【投稿】ポーランドへミサイルーウクライナとポーランドの偽旗―
福井 杉本達也
1 第三次世界大戦にNATOを引きずり込もうとしたポーランドとウクライナ
NHKは日本時間11月16日朝10時37分のニュースで「ウクライナ各地で15日、大規模なミサイル攻撃が行われる中、ウクライナの隣国ポーランドの外務省は、ロシア製のミサイルが国内に落下し、2人が死亡したと明らかにしました。ロシアによる軍事侵攻後、NATO=北大西洋条約機構の加盟国で初めて、ロシアの攻撃による犠牲者が出たことで、国際社会の緊張が高まっています。」と報道した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は16 日、インドネシアで開催されていたG20にオンライン演説し、ミサイル攻撃はロシアによるものだと非難し、「ウクライナ、ポーランド、全欧州はテロリストのロシアから完全に防衛されなければならない」「行動が必要だ」と訴えた。また、ツイッター上で、「ロシアはどこでも殺す。今日はその手がポーランドに届いた」と書き、「欧州・大西洋地域の集団安全保障への攻撃は、重大なエスカレーションだ」と述べた。
ラトビアの国防相は「ロシアは罰せられなければならない」と非難した。また、ミサイルはロシア製と欧米メディアは大々的に報道しだした。
現地時間15日の夜、ポーランド国家安全保障局長のヤツェク・シエヴィエラは、アンジェイ・ドゥダ大統領がイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長と話し、NATOの第4条案件かどうかについて協議が行われたと伝えた。また、ポーランドは国内の一部の部隊の戦闘準備を強化した。G20では16日朝、この事態について西側諸国が緊急会合を開かれた。米国、英国、欧州連合(EU)、スペイン、ドイツ、カナダ、フランス、日本、オランダの首脳が急きょ集まり、情勢を協議する「緊急ラウンドテーブル」が開催された。
しかし、バイデン米大統領は16日朝、「ロシアから発射された軌道ではなさそうだ」と発言した。これを受けてロシア政府のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は16日午前、毎日定例の記者会見で、ポーランドをはじめ「たくさんの国が」「ヒステリック」に反応し、何の証拠もないままロシアを糾弾したと非難。そのうえで、「アメリカ側とアメリカ大統領の、抑制的ではるかにプロフェッショナルな反応は、特筆に値する」と称賛した。
ポーランドのドゥダ大統領とストルテンベルグNATO事務総長はそれぞれ16日午後、ウクライナの防空ミサイルが原因との見方を示した(Yahoo:2022.11.16)。17日、ポーランドのドゥダ大統領は、ミサイルの着弾現場を視察し、「専門家や私たちの見立てによると、これは事故だった」と述べ、ミサイルの着弾は意図的な攻撃ではなかったという見方を示し、軌道修正した(NHK:2022.11.18)。
2 ウクライナ・ポーランドによる偽旗―21世紀版「サラエボ事件」・「トンキン湾事件」―
軍事アナリストで米海兵隊の元情報将校:スコット・リッターは、もし、ロシアのミサイルを迎撃する目的でウクライナが発射したものならば、「入ってくるロシアの標的に対して発射されたS-300ミサイルは、レーダービームに従って目標に向かって、ほぼ西から東の方向に発射されます。要するに、ウクライナのS-300は、ポーランドを攻撃したミサイルが飛行した経路からほぼ180度離れた方向に発射されます。」。したがって、ミサイルは誤動作ではないとし、「ポーランドに着弾したウクライナのS-300は事故の結果ではなく、ミサイルがポーランドの領土に衝突するように設計された意図的な行動でした。」とし、「NATOを紛争に引き込むように計画された偽旗事件の陰謀があります」と分析している。さらに続けて、「問題のミサイルがウクライナであることを知っているにもかかわらず、ポーランドへの攻撃についてロシアを非難する結論に飛びついたポーランドとバルト諸国の引き金のような反応は、攻撃の加害者とすぐにロシアに非難の指を向けた人々との間のある程度の事前調整を示唆しています。」と指摘。ポーランドやラトビアなどバルト諸国も偽旗作戦の共犯であると非難した。「ポーランドをめぐるNATOとロシアの直接の軍事的対立は、アメリカとロシアの間の一般的な核戦争に発展する本当の可能性を秘めている。ウクライナ、ポーランド、バルト諸国で、偽旗攻撃を助長してNATOをウクライナ紛争に引きずり込む陰謀に関与している人は誰でも、地球上のすべての人間に対する直接の脅威を表しています」と締めくくっている(A False Flag over Poland_ – Scott Ritter 2022.11.19)。
また、スコット・リッターは別のインタビューにおいて、「ポーランドやバルト諸国など、ロシアの勝利によってNATOがさらに弱体化することを恐れる国々にとっては不満の残る結果となる。そして、現時点では、NATOをウクライナに深く関与させることがこれらの国々の利益となる。彼らはNATOが2023年にこの件(ウクライナ問題)を放棄することがないように用心している。だから、ポーランドとバルト諸国は、他のNATO加盟国が外交的な提案を求めているのに、ウクライナに巻き込んでNATOがエスカレートする環境を作ろうとする、極めて無責任で極めて危険な行動をしていると私は見ている」と答えている(Sputnik 2022.11.19)。
3 戦争を裏で操る英国
米国や他のNATO加盟諸国がウクライナから一歩引いたにもかかわらず、19日、英国のリシ・スナク首相はウクライナの首都キエフを訪問し、英国は2022年にウクライナに30億ポンド(約5000億円)以上の軍事支援を提供したと述べ、さらなる資金を拠出する用意があることを確認した。スナク首相は「英国は、ウクライナが信頼できる平和と安全を手に入れるまで、引き続き支援を行っていく」と演説した(Sputnik:2022.11.20)。ポーランドとウクライナの背後には、なんとしてもNATOを第三次世界大戦に巻き込み、欧州大陸を三度戦場とし、独仏を立ち上がれなくして、自国の潰れかかった国力の再浮上を図りたい英国の思惑がある。英国はクリミア橋爆破においても、ウクライナを支援していた。
こうした、英国の危険な思惑を察してか、米国は一歩引き、オースティン米国防長
官は、カナダで開かれNATOの会議において「皆さん、NATOは防衛同盟であり、NATOはロシアとの対立を求めるものではない。ロシアに脅威与えるものではない。間違いなく、我々はプーチンが選んだ戦争に巻き込まれることはない」と、英国の行動にクギを刺した(Sputnik:2022.11.20)。
4 「日本のマスコミは一方に偏る。西側の報道に動かされてしまっている」と批判した森喜朗
米国が手を引き、ポーランドも方針を転換する中、NHKは11月18日の昼のニュースにおいてもまだ、「欧米側は、ロシアによるミサイル攻撃を迎撃するため、ウクライナ軍が発射したミサイルだった可能性を指摘する一方で、ロシアにこそ責任があると非難しています。これに対してウクライナは、ロシア軍が発射したミサイルだと主張するなど、欧米側との見解に隔たりもみられます。」とのフェイクニュースを垂れ流し続けた。
こうした、危険な日本のマスコミの姿勢に対し、森喜朗元首相は11月18日夜、鈴木宗男氏のパーティーでの挨拶で、「ロシアのブーチン大統領だけ批判され、ゼレンスキー氏は全く何も叱られないのは、どういうことか。ゼレンスキー氏は、多くのウクライナの人たちを苦しめている」と発言した。また、「日本のマスコミは一方に偏る。西側の報道に動かされてしまっている。欧州や米国の報道のみを使っている感じがしてならない」と批判した(福井=共同:2022.11.19)。
福井新聞の『キッズこだま』欄に、大野市有終南小学校6年の松崎康生さんの「不思議」という題の作文が掲載されていた。「ふとテレビを見る。ウクライナとロシアの戦争がニュースで取り上げられていた。そのときふと思った。人は、同じ人なのにどうして争うのだろう…。ロシアにはロシアなりの理由があって、ウクライナにはウクライナの理由があることがわかった。でもいずれ正義が牙をむく。今世界がウクライナに協力してロシアを倒そうとしている。けれど、それが本当の正義とは限らないので、これらもしんちょうに見極めたい。」と結んであった(福井:2022.10.13)。日本のマスコミのレベルは小学6年生の作文よりもはるかに劣る。