【投稿】イーロン・マスク氏のツイッター買収とその影響
福井 杉本達也
1 イーロン・マスク氏のツイッター買収
ツイッターは、米国のアカウントが8000 万人だが、日本は5000 万人と人口の割に多い。人口比では、米国では4 人に1 人、日本では2.5 人に1 名がアカウントをもっている。EV の株価で、世界1の大富豪になったイーロン・マスク氏は、10月27日、ツイッターの買収を完了した。買収資金440 億ドル(5.9 兆円)の大半を自己資金などでまかない、130億ドル分については米モルガン・スタンレーをはじめとする金融機関からの借り入れた。イーロン・マスク氏は「自らを『言論の自由の絶対主義者』と称し、買収後は投稿管理の取り組みを極力なくす方針」を示している。「月間約4億人が利用し、ネット空間の言論基盤にもなっている巨大SNS(交流サイト)は1人の富豪の所有物になる」(日経:2022.10.29)。しかし、日経新聞の論調は「言論の自由とネットの公共性をどう両立するか問われる」と、イーロン・マスク氏のツイッター買収劇に否定的である(日経:同上)。日経の11月6日付け社説は「民主主義社会が依拠し標榜する言論・表現の自由は、どんな形の言説の流布も放任するということでは決してない」とイーロン・マスク氏を牽制している(2022.11.6)。
2 米SNSの役割とツイッター従業員の大量解雇
米国の主流メディアは、米国民主党の広報紙である。Youtube、ツイッター、フェイスブックなどのSNS はビッグテックが支配している。ウクライナ戦争支援金と兵器供給で、ゼレンスキー氏の腐敗を擁護している。米国の大統領選挙、中間選挙での不正選挙を工作し、トランプ氏の言論は封殺された。2021年1月の米連邦議会議事堂襲撃事件を扇動したとしてツイッターが永久追放したトランプ氏の復帰をイーロン・マスク氏は認めた。メディアが排斥したトランプ氏は、8877 万人のフォロワーをもっていた。サーバーは全文検索をしているので、検閲すべきキーワードがある投稿記事の削除は、AI で自動化されている。ツイッターは、バイデン・ファミリーのウクライナ利権に関連した全部の投稿を検閲して削除していた。
ツイッターも買収前は同様であった。ウクライナでのロシア軍の動きを報道するようなツイッターは即アカウントを削除された。米海兵隊出身のスコット・リッター氏のウクライナ戦争に関するアカウントは凍結された。そこで、スコット・リッター氏は現在、ロシア人技術者が2013年に開発したTelegram (テレグラム) を利用している。6月にコロンビア大統領選で左派のペトロ氏が勝利したが、選挙期間中ペトロ氏を扱うツイートはほとんどなかった。最近、クーデターでひっくり返されたペルー政権しかり、ベネズエラの政権しかり、ボリビアの政権しかり、イランの情報しかり、シリアでの米軍の動きしかりである。米産軍複合体に都合の悪い情報は全て検閲され削除されていた。ツイッター買収の後に、検閲に関する内部文書を見たイーロン・マスク氏は、関係者を即刻解雇した。イーロン・マスク氏は、7400 人のうち約半分の従業員を、即座に解雇した。現在の社員数は36%の2700 人である。
3 米国民主党は軍産複合体の代弁者
「AP通信は22日、ポーランドに『ロシアのミサイル』が15日に着弾したと報道したのは『言語道断の誤り』だったとして、記事に関与した安全保障担当の記者を解雇したと公表した」(福井=共同:2022.11.24)。ニューヨーク・タイムズやCNNやNBCなど主要ニュース全てがAPの表現を繰り返した。プーチンの仕業だという脚本に従って、ゼレンスキー大統領はは即座にロシアのポーランド攻撃を非難した。この事件をきっかけにNATOをロシアに対する全面戦争に引きずり込めると期待した。危うく第三次世界大戦になりかけるところであった。
欧米主流メディアは米民主党のサービス機関である。真実を語るために存在しているのではない。軍産複合体に反対する者をつぶすために、軍産複合体の政策に同意するよう大衆を操るために存在している。軍産複合体から政治献金を受ける米国民主党は兵器産業の代弁者である。台湾海峡の危機を煽り、民主党のペロシ米下院議長が台湾を訪問したのは、兵器を台湾に(ついでに日本に)売りつけるためであった。戦争が無ければ武器は売れない。「危機」が作られている。
一方、日本のメディアはどうか。日本の情報において、海外情勢の「外信」は、ほとんどが、米国の主流メディアの翻訳である。特派員は、海外紙や外信の情報を買って、翻訳するだけであり、独自の取材記事は全くない。外信を買うだけであり、海外に駐在する意味は全くない。日本の海外情報は、米国民主党の広報紙である。日本では、米国民主党の色眼鏡を通した偏向記事のみが配信される。日本人や日本のほとんどの政党は「米国民主党の歪んだ目」で世界情勢を見させられ、判断させられている。
5 イーロン・マスク氏のウクライナ情勢発言
イーロン・マスク氏は10月の初めに「ロシアの人口はウクライナの3倍あり、総力戦でウクライナが勝利する可能性は低い」とツイートした。また「平和的解決をめざすためにウクライナは領土の損失を受け入れるべきかどうか」のアンケートも行った(日経:2022.10.17)。さらに、ウクライナに人工衛星を使ったネット接続サービス『スターリング』を無償提供していることに対し、10月15日には、「うんざりだ…我々はただでウクライナ政府に資金を提供し続けることになる」とツイートした(日経:同上)。
こうしたイーロン・マスク氏の言動に反発したウクライナの外交官アンドリー・メーリヌィク氏は「うせろというのが私の外交的な返事だ」と返信し、不快感をあらわにした(日経:2022.12.9)。しかし、『スターリンク』はロシア軍の攻撃によって通信網が寸断された中、ウクライナ軍にとっての通信基盤の生命線である(日経。同上)。結果、キエフの敵と思われるものをリストし暗殺する『Mirotvorets』というウェブサイトに、一時、イーロン・マスクの名前がブラックリストに記載された。記事には「スターリンク技術をウクライナに提供してきたマスクは、クレムリンに忠実な”ロシア愛好者”だ」と記載されていた。
同『偽情報対策センター』は、ウクライナの国家安全保障・国防省の一部として、2021年3月に設立された。その目的は、「情報テロリズム」とみなされるもの、つまり、政府に関する反体制的な意見や、大まかにさえ「親ロシア・プロパガンダ」と見なされるものに対抗することだとされる。8月20日に、戦争特派員で、ロシアの国家主義思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリ
ア・ドゥーギン氏が自動車爆弾で暗殺されたが、『Mirotvorets』のサイトでは「清算された」と記載されている。
「ツイッター社は14日、同社を買収したイーロン・マスク氏が搭乗するプライベートジェットの動きを追跡してきたアカウントを一時凍結した。『言論の自由』を重視すると主張してきたマスク氏による言行不一致との批判があがり、同社は利用規約の蛮更を伴う措置と釈明した。」アカウントの凍結に「批判的なな意見が相次いだ。」と日経新聞は書いているが(日経:2022.12.16)、誰の目かは一目瞭然である。「マスク氏は、記者らが自分の位置情報をリアルタイムで投稿しており、『事実上、自分が(狙われて)殺されかねない情報を公開しており、これは明らかなルール違反だ』と説明している。マスク氏は、これは『ドキシング(晒し行為)』であるとしている。」(Sputnik 2022.12.16)。
イーロン・マスク氏は11月25日、2024年の大統領選では出馬に意欲を示す共和党の若手ホープ、南部フロリダ州のデサンティス知事を支持するとツイッターで明らかにした(東京2022.11.26)。日本人のツイッター利用者の人口に占めるユーザーの割合では、米国の23%に対し47%と2倍近くになる(日経:2022.11.24)。もし、日本人や日本の言論人がツイッター上で真実の海外情報が得られるならば、日本の政治状況も大きく変わることができるのだが。