【投稿】バイデン政権のノルドストリーム爆破テロ--経済危機論(102)

<<「衝撃のレポート」>>
2/8、ピューリッツァー賞受賞者で、米国の著名な独立調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ()の独自調査レポート(How America Took Out The Nord Stream Pipeline)「アメリカはいかにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したのか?」「ニューヨーク・タイムズ紙は『ミステリー』と呼んだが、アメリカは今まで秘密にされていた海上作戦を実行した。」が発表、ネットで公開された。

内容が衝撃的である。
ロシアとヨーロッパを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリーム(Nord Stream 1,2)の妨害・破壊工作は 米CIA、米海軍の秘密作戦であった。計画は2021年12月、米国国家安全保障顧問のジェイク・サリバンの下に特別タスクフォースが結成され、CIAは、議会との関係でアメリカの特殊部隊を使わない作戦として、準備と実行は徹底した秘密作戦でなければならないと主張、海軍は、パイプラインを直接攻撃するために新たに就役した潜水艦を使用することを提案、空軍は、リモートで起動できる遅延ヒューズを備えた爆弾を投下することを提起。「次の数週間で、CIAのワーキンググループのメンバーは、深海ダイバーを使用してパイプラインに沿って爆発を引き起こす秘密作戦の計画を作成し始めた」。2022年の初めに、CIA 作業部会はサリバンの省庁間グループに「パイプラインを爆破する方法がある」と報告。議会に通知する必要がある秘密作戦ではなく、米軍の支援を受けた高度に機密の諜報作戦として、この秘密作戦計画が策定されたのであった。行政府が議会の承認なしにこうした戦争行為を行うことは、アメリカにおいても憲法違反なのである。
「次に来たのは驚くべきことでした。」とハーシュのレポートは言う。「ロシアのウクライナ侵攻が避けられないように見える3週間前の2月7日(2022年)、バイデン大統領はホワイトハウスでドイツのショルツ首相と会見、その直

後の記者会見で、「If Russia invades . . . there will be no longer a Nord Stream 2. We will bring an end to it」(ロシアが侵攻すれば、Nord Stream 2 はなくなります。私たちはそれを終わらせます)と断言したのであった。その 20 日前に、すでにヌランド国務次官は、

国務省のブリーフィングで本質的に同じメッセージを発し、「今日ははっきりさせておきたいと思います」、「ロシアがウクライナに侵攻した場合、いずれにしてもノルドストリーム 2 は前進しません」と述べていたのである。ハーシュの情報源は、「それは、東京

ヌランド、パイプライン爆撃を称賛。

に原爆を置いて、それを爆発させるつもりだと日本人に告げるようなものだった」と語っている。「バイデンとヌランドの無分別さが、一部の計画立案者を苛立たせたかもしれない。しかし、それはまた機会をも生み出した」のであった。
ハーシュは、「作戦計画を直接知っている」ある情報源を引用し、米海軍のダイバーが2022年6月、BALTOPS22として広く知られたバルト海でのNATO演習を隠れ蓑に、研究開発作業に関わる演習を装って、遠隔操作で爆発物を仕掛け、3カ月後の2022年9月26日、米海軍が演習場から退去した後に、ノルウェー海軍の P8 哨戒機が一見通常の飛行を行い、投下された「超音波ブイ」・ソナーブイによって爆発させられ、4本のNord Streamパイプラインのうち3本を破壊した、というのである。ハーシュの情報源は、この作戦の実行命令がバイデン大統領のオフィスから直接出されたことを強調している。
この情報源は、この作戦はノルウェーと調整されていたとハーシュに語っている。ノルウェーは、精鋭の米海軍の深海潜水チームが作戦を遂行するのを支援する上で、ロジスティクスとインテリジェンスの重要な役割を果たしたのであった。ノルドストリームの破壊により、ノルウェーとアメリカは自国の天然ガスをはるかに多くヨーロッパに販売できるようになったのは当然と言えよう。ノルウェーはロシアのガスを年間約400億ドル、直接置き換え、次いでアメリカが急速に増大させている。いずれもロシア産ガスよりもはるかに高価、高コストである。インフレの高進と政治的経済的危機のさらなる深化を決定づける戦争行為でもあったのである。

<<「なぜ、サブスタックなのか?」>>
このハーシュ・レポートは、タイムズ紙(英国)、ロイター通信、およびロシアの国営メディア、その他のメディアによってすぐに報道され、ロシアのRIAノーボスチに対しハーシュ氏が「もちろん、私が書いたのだ」とノードストリーム爆発に関する記事の執筆を確認、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、この報道に対して「ホワイトハウスはこれらの事実すべてについてコメントしなければならない」と述べ、ホワイトハウスは無視する構えであったが、

「もちろん、私が書いたのだ」

反論せざるを得なくなった。
バイデン政権は、2/8、直ちにこのレポートを全面否定して、「まったくの虚偽であり、完全なフィクションである」と述べたのである。
しかし会見した米国務省の報道官ネッド・プライスは、シーモア・ハーシュの記事を読んでいないことをはからずも認めてしまい、何が論点なのかを把握していないことを露呈し、冷静さを失い、この記事はとにかく「プロパガンダ」だとして一方的に攻撃し、ハーシュの誹謗・中傷に終始してしまったのであった。

ところが、すでに1/27、トップ外交官で、同じ国務省のヴィクトリア・ヌランド副長官が、米上院公聴会で、ノルドストリームパイプライン破壊攻撃を称賛して、「ノルドストリームが現在、海の底にある金属の塊であることを知って、政権は非常に満足していると思います。」と発言して、米政権が直接関与していることを事実上、自ら暴露しているのである。ブリンケン国務長官も、欧州をロシアのガスから引き離す「とてつもない機会」だとまで述べていたのである。
前回すでに紹介したように、米国防総省系のシンクタンクである RANDコーポレーションの報告書は 「最初のステップはノルドストリームを停止することである」「ヨーロッパ諸国はロシアのガスの輸入を減らし、米国が供給した液化天然ガスに置き換えるようにしなければならない」と提唱していたのである。

2/10、ロシア外務省のザハロワ報道官は、パイプライン破壊工作に関するハーシュ氏の記事を「ナンセンス」と一蹴する米国務省の試みは、アメリカの歴史に対する驚くべき無知を示す明白な嘘であると記者団に述べ、「米国はまたしても生放送で嘘をつき、正当な質問をしたジャーナリストを公然と馬鹿にしている」と述べている。さらに、ザハロワ報道官は、デンマークとスウェーデンがロシアからの調査協力の申し出を拒否し、ノルウェーもEUの制裁を理由に拒否したことを指摘し、このことは3カ国政府が真実を解明することに関心がなく、むしろ隠蔽することに関心があることを示していると告発している。

しかし、日本も含めて西側の主要メディアは、このハーシュ・レポートを明白に、そして故意に無視し、抑制し、バイデン政権に追随しているのが実態である。ほとんど報じていないし、短い紹介すらしていないのである。当初は、このパイプライン破壊攻撃をロシアになすりつけていたのであるが、最近になって、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』が、モスクワの関与を示す証拠はないことを認めたに過ぎない段階である。西側「民主主義」の実態は、現実と真実を否定する共謀関係にあるとも言える事態である。

 シーモア・ハーシュ氏は、このレポートを、個人でニュースレターを配信することができるプラットフォーム・Substack (サブスタック)で発表している。
『なぜ、サブスタックなのか?』と題して、ハーシュ氏は、「私はキャリアの大半をフリーランサーとして過ごしてきました。1969年、私はベトナムで恐ろしい戦争犯罪を犯した米軍兵士の部隊の話を紹介した。彼らは、数人の将校が知っているように、敵のいない普通の農民の村を攻撃するように命じられ、見つけ次第殺すように言われた。兵士たちは、敵のいないところで何時間も殺害し、強姦し、手足を切断した。この犯罪は18ヵ月間、軍の指揮系統の最上層部で隠蔽されていたが、私がそれを暴露するまで続いた。私はこの仕事で国際報道部門のピューリッツァー賞を受賞したが、アメリカ国民の前にこの記事を出すのは簡単なことではなかった。私の最初の記事は、友人が経営するかろうじて存在する通信社の下で発表されたが、当初は『ライフ』誌と『ルック』誌の編集者に拒否された。『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたときには、国防総省の否定と、リライト担当の無思慮な懐疑論で埋め尽くされた。2004年、アブグレイブでのイラク人捕虜への拷問に関する最初の記事を発表した後、国防総省の報道官は私のジャーナリズムを「ナンセンスの織りなす物語」と呼んだ。…今でも優秀なジャーナリストはたくさんいるが、報道の多くは、私がタイムズ紙で毎日記事を書いていた時代には存在しなかったガイドラインや制約の範囲内で行わなければならない。…そこで登場したのがSubstackです。ここでは、私が常に求めてきた自由があります。このプラットフォームで、出版社の経済的利害から解放され、文字数やコラムインチを気にすることなく記事を書き、そして何よりも読者に直接語りかける作家を次々と見てきたのです。」と述べ、「今日読んでいただく記事は、私が3カ月かけて探し出した真実です。出版社や編集者、仲間たちから、ある特定の考え方に沿うように、あるいは彼らの恐怖心を和らげるために内容を縮小するようなプレッシャーを受けることなく、この記事を書き上げました。」と結んでいる。

バイデン政権は、時間軸はたとえ長短ずれたとしても、いずれ追い詰められ、政治的経済的危機のただなかで右往左往し、出口を模索せざるを得ないであろうし、追い込む平和への闘いこそが要請されている。
(生駒 敬)

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