日韓GSOMIA失効、その背景と今後の動き*

韓国政府は8月22日、日韓GSOMIAの延長を行わないと決定した。同協定は「北朝鮮ミサイル危機」を背景に2016年11月に締結されたものである。

当時、韓国は日本との軍事連携に消極的であったが、北朝鮮の長距離弾道弾を脅威とするオバマ政権の後押しで、朴政権が渋々承諾した経緯がある。

その後、アメリカ、韓国で政権が交代し、それに伴う東アジア情勢の変化で同協定の本来の根拠は消失した。同協定は惰性的に更新されてきたが、この間の日韓関係の悪化の中で有名無実化しつつあった。

これについて日本国内では、文大統領側近の疑惑隠しのため等々、もっぱら韓国の国内事情に要因を求める論調が大半である。

しかし、文政権がことを急いだのは、GSOMIAを含む日米韓の軍事連携がトランプ政権により、当初の対北朝鮮から対中国へと重心を移されていることが、大きな要因としてある。

8月21日、来日したバーガー海兵隊総司令官は記者会見で「日本と韓国は違いがあるが中国の脅威とアジアの安定に対処するため共通の利害を持っている」と述べ、日米韓軍事連携の主要な対象が中国であることを明らかにした。

また同司令官は、GSOMIAについて明確な回答をしなかったが、楽観的な見通しを示唆した。しかし沖縄を経て韓国へ向かった司令官を待っていたのは、破棄決定だった。

過日THAADミサイル配備で中国の反発を招き、窮地に立たされた韓国としては、中国に矛先を向けるのは避けたいところである。今回韓国政府は、アメリカに相談すれば待ったがかかるため、事前調整なしに、GSOMIA破棄を決断し、軍事連携から離脱した。この決定に、アメリカ政府高官は相次いで「失望」を表明したが、この間北朝鮮のミサイル乱射を容認しているトランプが「失望」する謂われはないだろう。

8月中旬に行われた米韓合同軍事演習は、部隊の実動を伴わないバーチャル演習であった。これに対する北朝鮮の対応は過剰反応であったにもかかわらず、トランプは気にしていないどころか、「米韓演習は金の無駄」と言い放つ始末である。

GSOMIA破棄に対するアメリカ政府の対応は、明らかに対中国軍事連携の一角が崩れる事態への憂慮である。米露INF失効に際し、アメリカは中距離ミサイルの開発は対中国の為と表明、今後新型ミサイルのアジア地域への配備を示唆した。

安倍も口では中国との関係改善を唱えながら、経済、軍事面での対抗を急いでいる。8月30日の第7回アフリカ開発会議では、金の力で「自由で開かれたインド太平洋構想」への支持を取り付け、「債務超過での支援はよくない」と中国を批判した。

こうした日米の動きを牽制すべく、中露は東アジアでの軍事連携を強めている。7月中露編隊が日本海から東シナ海を巡航し、ロシア機が初めて竹島(独島)付近で「領空侵犯」を行った。

日本政府周辺は「GSOMIA失効で不利益を被るのは韓国」と喧伝しているが、この間の動きの探知能力は韓国が先行しており、対北朝鮮についても偵察衛星や通信傍受などでは自衛隊が優位であるが、ヒューミントといわれる人間を介しての情報収集は、脱北者を見ても分かる通り韓国の情報量が圧倒的である。

(9月2日、韓国の李首相が日韓議連の河村会長に、輸出優遇措置とGSOMIA復活をセットとして述べたのも、輸出で困るのは韓国、GSOMIAで困るのは日本という現実を踏まえての「ウィンウィン」の提案であろう)

今回のGSOMIA失効は東アジアにおける、日米韓軍事連携の破綻を決定づけるものであり、この地域での日本の孤立化が軍事面でも進行していく端緒となったと言える。

今後安倍政権は引き続き日米同盟の強化を標榜していくだろうが、トランプは日米安保見直しに言及している。日本政府は一層の軍拡、軍事的自立に傾斜していく他なく、それは過去最大の5兆3千億円となった、来年度の軍事費に如実に表れているのである。

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