【投稿】イスラエルによるガザ大虐殺と中東から第3次世界大戦を画策する米産軍複合体

【投稿】イスラエルによるガザ大虐殺と中東から第3次世界大戦を画策する米産軍複合体

                           福井 杉本達也

1 イスラエルによるパレスチナの民族浄化

ユダヤ人国家のイスラエルは、第2次世界大戦のあと、1948年5月に、パレスチナを実効支配していた英国によって建国された。1)アラブには旧オスマン帝国(トルコ)にアラブ人国家の建設を約束。2)ユダヤ人に対しては、パレスチナにイスラエル建国を認める。3)フランス・ロシアには、旧オスマン帝国を3国で分割することを約束した。英国が得意な、三枚舌外交と言われる(バルフォア宣言:1917年)。この英国の外交が、戦後の、終わりなき中東紛争の原因である。米国・英国・フランスはイスラエルを支持し、イスラムの中東はイスラエルを不倶戴天の敵としてパレスチナ側である。イスラエルとアラブの和解は、イスラエルのパレスチナ占拠を正当化することであり、原理的にあり得ない。イスラエル建国のあと、第1次中東戦争から4次まで、大きな戦争が4回起おきた。2000年以降はレバノン侵攻(06年)、ガザ侵攻(06年)、ガザ紛争(08年から09年)、ガザ侵攻(14年)と、絶え間ない紛争が続いている。米国がテロ組織と決めれば、犯罪者であり、いつ攻撃してもいいということである。

10月24日の安保理でグテーレス国連事務総長「ハマスによる攻撃は、何もないところで突然起こったのではないことを認識することも重要だ。パレスチナの人々は56年間、息苦しい占領下に置かれてきている。彼らの土地は入植地によって着実に食い荒らされ、暴力に悩まされ、経済は抑圧され、人々は家を追われ、取り壊されてきた。自分たちの苦境を政治的に解決したいという希望は消えつつある。しかし、パレスチナの人々の不満は、ハマスによるひどい攻撃を正当化することはできないし、そうしたひどい攻撃は、パレスチナの人々に対する集団罰を正当化することもできない。」と述べた。

イスラエルはパレスチナを国家と認めていない。武器をもたない、ガザ地区のパレスチナ人は投石で対抗し、抵抗者は、イスラエルの兵士に惨殺されている。イスラエルのガサへの『入植』とは、パレスチナ人の放逐、占拠、強奪である。

2 ハマスについて

10月7日のハマスよる攻撃はイスラエルにとっては不意打ちではなく、攻撃は予想しており、大きな驚きではなかった。また、ハマスにとっても、イスラエルによる反撃・ガザ地区への無差別爆撃は当然に予想されていた。イスラエルのネタニアフは、ハマスの攻撃の計画を事前の知っていて、ガザ地区入植と惨殺で挑発していたととの説がある。ネタニアフの、イスラエルの世論の支持は低く、政権維持の困難に直面していた。世界最強とも言われるイスラエルのモサド(秘密警察)が、ハマスの攻撃計画のかけらも知らなかったというのは不自然である。ハマスの4万人もの軍の動きが分からないはずはない。ネタニアフが知っていたとすれば、奇襲したハマスをテロリストとして悪者にし、パレスチナ虐殺の理由作りだすことであった。

ハマスは、イスラエルが元々資金提供して育成したものである。目的は①過激派を育成して、ガザとヨルダン川西岸地域のパレスチナを分断し、パレスチナ主流派のPLOとアラファト議長を弱める。②国際世論でパレスチナへの支持を弱める。③恒常的に戦争状態として和平交渉進展させず、パレスチナ国家を永久に建設させず、パレスチナの地を全面的に支配し、大イスラエルを建設する、ことであり、そのためのパレスチナ人へのアパルトヘイトとホロコーストが含まれる。イスラエルの元国連常駐代表ダン・ギラーマンは「世界中がパレスチナ人のことを心配していて非常に困惑」しているとし、「パレスチナ人は非人間的な動物」だと発言している(Sky News2023.10.26)。「非人間的な動物」だから虐殺してもかまわないと。

ネタニヤフは2019年3月に「パレスチナ国家の樹立を阻止したい者は、ハマスの強化とハマスへの送金を支持しなければならない。これは我々の戦略の一部だ」と発言している。パレスチナ自治政府政府(ファタハ)は、ガザ地区のハマスと2006年以来、対立している。パレスチナは、1)ハマスが支配するガザ地区と、2)米国・欧州・日本が正統とするヨルダン河の西岸に分裂している。「ネタニヤフが明確に要求したように、ハマスを生かし、十分な資金を維持することは、永続的な不安定性を生み出します。不安定性は、今度は、平和ではなく、活発な戦争または戦争の絶え間ない脅威のいずれかに役立ちます。そして戦争はイスラエル国家の健康です。」(ベン・バーティー:『Zero Hedge』2023.1017)。

3 病院「爆撃」を巡っての情報戦

10月18日、ヨルダン・パレスチナ・エジプトのアラブ3カ国は、病院「爆撃」について、イスラエルとアメリカを強く非難し、バイデン大統領との4者会談を急遽キャンセルした。アル・アハリ病院の事件について、元米軍情報将校のスコット・リッターは、「戦争の霧は、イベント中に何が起こったのかに関する不確実性によって生成され、戦闘関連のストレスによって引き起こされる混乱の副産物です。しかし、時には、真実の追求を妨げるために、煙幕のように意図的に戦争の霧が生成されます。」と書く。ネタニヤフ首相のSNSアドバイザー、ハナニャ・ナフタリが削除したバプテスト病院空爆直後の投稿では「速報:イスラエル空軍が、ガザの病院の中にあるハマステロリストの基地を空爆。何人ものテロリストが死んだ。ハマスは、人々を人間の盾にして病院・モスク・学校からロケットを撃っている」と速報した。これがイスラエルにとって都合が悪いとして即、削除された。この投稿は、アルジャジーラによって提供されたビデオで見ることができるが、「イスラエルは、進行中の特殊作戦および・または諜報活動を公に認めていません。イスラエルの否定は、元のナフタリのツイートが正確な情報に基づいていた可能性を補強する」。もし、「攻撃がイスラエルの無差別爆撃の結果ではなく、ミホリット・ロケットを使って行われた」正確なピンポイントであるならば、「ハマスが病院の駐車場に詰め込まれたパレスチナの民間人を人間の盾と

して使用しているという物語に役立つ場合」、「一つの統一された事実とのひねくれた共謀:結果として生じる人間の大虐殺に犯罪的に無関心である2つの対立する力の間のより大きな権力闘争における悲劇的な駒としてパレスチナ」という図式が浮かび上がる(スコット・リッター:RT:2023.10,20)。ブリンケン国務長官がカタール首相に、アルジャジーラ放送の戦争の報道を「抑制」するように要請したことは、アルジャジーラ放送の信憑性を裏付けている。

4 狙いは、イラン・シリアを巻き込む第5次中東大戦争

10月27日、新たに米下院議長に選出された共和党のマイク・ジョンソン氏はその最初の演説で、「我々の親愛なる友人イスラエル」の支援に注力すると述べたが、ウクライナについて一言も発言しなかった。今、西側諸国の目をウクライナから逸らせる可能性があるのはイスラエルだけである。米国は4隻の空母打撃群などの艦艇30隻を地中海や中東周辺に派遣した。しかし、米国と欧州は、中東の勝利がウクライナの勝利より容易だと考えるなら、存亡の罠に足を踏み入れることになる。レバノンの、イスラム原理主義のヒズボラ(シーア派:戦闘員4万5000人)とイラン(シーア派:兵力は12万500人)までくれば、中東戦争である。米国はイランを標的にしようとたくらんでいるが、戦略における核心はホルムズ海峡である。ホルムズ海峡は、世界の石油の少なくとも20%(1日約1700万バレル)と液化天然ガス(LNG)の18%(少なくとも1日35億立方フィート)を通過させる。 イランはホルムズ海峡を一瞬にして封鎖することができる。

米国には、650万人のユダヤ人の団体があり、議会に対して強いロビー活動を行っている(アメリカ・ユダヤ人委員会:AJC)。こうしたロビー活動により、米議会の議員のほとんどはイスラエル支持である。しかし、近年、米民主党内のイスラエル支持は著しく低下しているといわれる(ジョン・ジョゼフ・ミアシャイマー シカゴ大学教授:2017年)。戦争がビジネス(お金儲け)である米国の軍産複合体は、政府予算獲得のために、危機をねつ造する。短期的に懸念されるのが、イスラエルが米国を中東→世界大戦に引き込むための偽旗作戦である。イスラエルは、1967年第3次中東戦争時に前科あり。米海軍リバティ号をイスラエル軍が攻撃し米兵34人死亡・174人負傷し、エジプトのせいにしようとした前歴もある。

米軍は、シリア、イラクに合わせて兵員3400人の米軍基地を維持しているが、クウェートからの補給路がアキレス腱となっている。イラク民兵組織はイラクで米軍と交戦する必要はなく、クウェートから米軍の兵站線を遮断するだけでよく、イラクとシリアのすべての米軍基地は避難せざるを得なくなる。米国がこれらの兵站ラインを確保したいのであれば、少なくとも10万人の米陸軍人員を配備する必要があるだろうとスコット・リッターは述べている(スコット・リッター:Short Sort News:2023.10.25)。総員45万人の米軍は、今、欧州に10万人が張り付いており、さらに10万人の派兵などは不可能である。

5 アラブの大義からイスラム・BRICSの大義へ

10月13日のサウジ・イラン両国首脳が会談で、サウジが「イスラエルとの和解は凍結する」と表明した瞬間から、事態は一気に急変していった。習近平主席は今年3月、サウジとイランを和解させ、その後「中東和解外交雪崩現象」をもたらした。今回、「中国は明確にイスラエルのガザ地区に対する過度な報復攻撃を非難し、アラブの盟主・サウジやイランあるいはロシアと足並みを揃えながらアメリカに対峙する姿勢を明確にしつつある」。「もしサウジがパレスチナ問題を放置したまま、その最大の敵であるイスラエルと国交を締結すれば、パレスチナの怒りが爆発し、そのパレスチナをイランが支援するとなれば、サウジは再びイランと対立することになるからだ。そうなると中東における数多くのイスラム国家が再び結束してイスラエルと戦う「中東戦争」へと拡大していく可能性がある。サウジは何としても、それを避けたい」(遠藤誉:yahoo:2023.10.18)。イスラエルは中東では、孤立している。米国は空母2隻を派遣し、イスラエルを支援、10月25日・27日イスラエルと米特殊部隊がガザ地区北部へ侵入し限定的な地上戦を行った。しかし、戦車が破壊されるなど大損害を受け撤退した(ダグラス・マクレガー米陸軍退役大佐)。

イスラエルはガザの地上戦を戦えるのか。ガザ北部は空爆でガレキと化している。そこに、ハマスは500㎞もの地下トンネルを掘っているといわれる。どこに戦闘員が潜んでるか見当もつかない。動くものは全て敵とみなされる。その様な市街地で戦闘すればさらに多くのパレスチナ人が虐殺される。既に、ウクライナでのバフムートでの市街戦でも、その困難さは明らかになっている。950万人の人口しかない中で、イスラエル軍に優位はない。予備役のイスラエル兵はそのような戦場で戦闘を行いたくないと考えている。2006年のヒズボラとの敗戦も脳裏にある。100万人のロシア人を始め彼らの多くは二重国籍で帰る母国を持っている。戦闘が膠着した場合、彼らはイスラエルを捨てて、二度と国へは戻らないであろう。イスラエルは地中海に追い出される。それはイスラエルという国家の消滅である。もし、イスラエルが国家としての存続を図るならば、パレスチナ国家の承認しかない。

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