【投稿】トランプ勝利と日本の針路
福井 杉本達也
1 日本のマスコミは米民主党の在日報道部
経済評論家の森永卓郎氏は11月5日のニッポン放送の「垣花正 あなたとハッピー!」において、「私だけじゃないんです。あの8年前にトランプを推した(フリージャーナリストの)木村太郎さんもフジテレビで同じようなことを言ってます」と卓郎氏。『あしたね、やっぱり日本の報道っていうのは中途半端で民主党寄りだったかなっていう空気がまん延して来て、あさって、ああみんなメディア間違えていたんだっていうことになると思います』と続けた。森永氏の予想どおりトランプが大勝した。
ネオコンのジャパン・ハンドラー芸人:パックンことパトリック・ハーラン氏は6日、BS-TBS「報道1930」にコメンテーターとして生出演し、「4年間、思い出して下さい。2回も弾劾されているんですよ?金正恩とラブレターを交換しているんですよ?プーチンともラブラブな状態になっているんですよ?権力を乱用しているんですよ?グローバルサウスを“クソダメ国家”と言っているんですよ?その人の未知数が今、知られているんです。グレーのところが白黒はっきりに見えているんです。僕から見れば真っ黒なんです」と思いをぶちまけ、「その真っ黒な人が、過半数の人に選ばれたことになりそうですね」と涙ぐみながら語った(スポニチ:2024.11.7)。
日経の7日の社説は「正確な情報や言論の自由が脅かされている現状は、その基盤によって立つ民主主義にとって危機的な状況だ。前回の大統領選の結果を否定し、連邦議会占拠事件のような暴動を招く言動をいとわない人物の復権は異常事態と言わざるを得ない。自由や法の支配を尊重してきた米国の民主主義は歴史的な転換点を迎えている。」と書いた。いかに日本のマスコミが米民主党よりの立場であり、民主党有利の情報を流していたかが分かる。我々は毎日毎日、米民主党の広報に洗脳され続けていたのである。
2 米民主党による2度のクーデターの失敗
今回の大統領選は最初からトランプ氏が優位とされていた。それをひっくり返そうと、民主党は2度にわたるクーデターを計画した。1度目は7月13日の米東部ペンシルベニア州バトラーで開かれた共和党のドナルド・トランプ氏の選挙集会での暗殺未遂事件である。
2度目は、バイデン大統領を無理やり大統領選から撤退させ、ハリス氏を選んだ、米民主党内の党内クーデターである。本来の民主党の大統領候補は、各州の予備選挙から勝ち上がってこなければならない。そうした、「党内民主主義の手続き」を一切無視して、バイデン氏を引きずり下ろし、ハリス氏を大統領候補としたことである。6月末のトランプ氏との討論会で、バイデン氏は言葉に詰まり、後4年間も大統領を務めるにはふさわしくないと思われた。民主党大会が行われる前のぎりぎりのタイミングである7月21日、バイデン氏はX(旧ツイッター)上で「大統領選を戦う党の候補者指名を辞退し、選挙戦から撤退すると表明した。後継候補にハリス副大統領を支持すると明らかにした」(日経:2024.7.23)。誰が、バイデン降ろしの背後にいるかは明らかである。イーロン・マスク氏はX上で、ジョージ・ソロス氏の息子で後継者のアレクサンダー・ソロス氏と仲良く写真を撮るハリス氏の写真に対し、「誰が次の操り人形になるか疑いを持たせないでくれてありがとう」と投稿した(Sputnik日本:2024.7.22)。
3 ウクライナ戦争はどうなるか
トランプ氏は「ウクライナ戦争を1日で終わらせる」とし、「ロシアとの関係を改善し、第三次世界大戦への転落を防ぐ」と公約していた。これに応えて「ロシアのプーチン大統領は7日、米大統領選で勝利したトランプ次期大統領と対話の用意があると表明した。トランプ氏も7日、米NBCテレビのインタビューで、『プーチン氏と話すことになると思う』と述べた(福井新聞=共同:2024.11.9)。現在は、冷戦後最悪の米ロ関係のあり、既にウクライナには米国の特殊部隊員も派遣されているといわれ、第三次世界大戦=核戦争の一歩手前までいっている。ここまで対ロ関係を悪化させたのは、NATOによる東方拡大にあり、オバマ=バイデン副大統領の時代に、ネオコンのヌーランドらが暗躍して、ウクライナ・ヤヌコビッチ政権をマイダン・クーデターで転覆したことにある。
4 軍産複合体・CIA・FBI官僚組織の一掃
トランプ氏は軍産複合体・CIA・FBI官僚組織を大統領になれば瞬時に一掃すると公言している。第一期トランプ政権の足を引っ張ったのは、こうした軍産複合体・ネオコンなどの組織である。トランプ氏はこれをディープ・スティトと表現している。共和党内の基盤の弱かったトランプ氏はこうした組織に妥協せざるを得なかった。金正恩氏と対話したものの、朝鮮戦争の終結もつぶされた。ハリス支持に寝返ったマイク・ペンス前副大統領や、根っからのネオコン:リズ・チェイニー氏、父親のディック・チェイニー元副大統領、ジョージ・ブッシュ(子)元大統領など軍産複合体を支える人脈は共和党内多々いる。トランプ氏は9日、新政権ではニッキー・ヘイリー元国連大使とマイク・ポンペオ元国務長官を起用しないと明らかにしたが(読売:2024.11.10)、どこまでこうした軍産複合体人脈を一掃できるかに、トランプ政権の成果がかかっている。
5 朝鮮戦争の終結と極東の冷戦構造の解体
11月8日の日経新聞は、「韓国はトランプ氏が安全保障の懸念を無視して、北朝鮮と直接対話に乗り出す事態を警戒する」と書いている。なぜ、今日まで自民党が存在するのか。「逆コース」といわれるが、1949年の中華人民共和国の成立と国民党・蒋介石の台湾逃亡、1950年の朝鮮戦争の勃発によって、岸首相他戦犯・旧支配層の公職追放が解除され、米産軍複合体に身も心も預け「親米保守主義」という名前に変えて今日まで政権の座に居座り続けているのが実態である。もし、「朝鮮戦争終戦」になるならば彼らの居場所はない。そのため、「朝鮮戦争の終戦」に反対すること・極東における緊張を煽ることこそ彼らの目的であり立場を守ることなのである。極東の緊張緩和をさせたくないというのが今日までの日本政府の一貫した姿勢である。韓国は、この間、北朝鮮兵のロシア派遣・ウクライナ戦争への投入という話を何の根拠も示さずに垂れ流し、日本のマスコミもそれに輪をかけるように報道している。トランプ政権が誕生することへの焦りと、米ネオコンらの軍産複合体の圧力である。再登板するトランプ氏が軍産複合体の圧力に屈せず「朝鮮戦争終戦」となるならば、在韓米軍は撤退し、在日米軍の必要性もなくなり、国体としての対米従属も崩壊し、存在基盤を失った寄生政党としての自民党は完全に解体へと向かう。