【投稿】イラン核施設攻撃と停戦の真相
福井 杉本達也
1 イラン核施設への攻撃
6月22日、トランプ大統領は、米軍がイラン国内にあるフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの三つの核関連施設に対し爆撃を実施し、破壊したと発表した。爆撃の対象となった核関連施設は、放射性物質を含む施設であり、放射性物質が拡散した場合、長期的かつ回復不能な環境災害を引き起こす。イラン原子力庁は同日、核施設が米軍の攻撃を受けたことを認めたうえで「放射性物質による汚染の兆候は確認されず、周辺住民に危険はない」と発表。また、IAEAも、現在までにイランの核施設での放射能漏れは確認されていないとしている。しかし、イランのアラグチ外相は26日、同国の核施設に対する米国の攻撃が「広範かつ深刻な」被害をもたらしたとの認識を示した(CNN:2025.6.26)。もし、稼働中の原発や放射性廃棄物貯蔵施設が破壊された場合、福島原発事故やウクライナのチェルノブイリ原発事故を上回る放射性被害が出る恐れがある。稼働中の原発には広島型原爆1000発分の放射能が含まれており、核関連施設への攻撃は極めて悪質な犯罪行為である。
2 核施設攻撃を当然視する危険な論調
6月23日付けの日経新聞トップの見出しは「米、イラン核施設空爆」「3カ所攻撃、地下貫通弾も」とあり、核施設の攻撃が、地球全体に核爆弾よりもさらに大きな被害をもたらす恐れがあるという認識は薄い。どのように破壊するのか、破壊されたのか、されなかったのかという軍事面に偏った見出しである。イスラエル・イラン停戦合意後の共同=福井新聞の見出しも「なお核開発能力、禍根」というものであり、軍事に視点を置いたままである(福井:2025.6.25)。トランプ米大統領が広島、長崎への原爆投下を引き合いに、米軍の攻撃がイスラエルとイランの戦争を終結させたと発言したことを、イランのセアダッド駐日大使は「言語同断」だと厳しく批判した(福井:2025.6.28)。さらに続けて「被爆国である日本に「もっと声を上げて欲しい」と注文した(同上)。欧米のみならず、日本のマスコミの論調の低さにはあきれかえる。このままでは、近い将来、全面核戦争に引き込まれてしまう。米国のジェフェリー・サックス・コロンビア大学教授は「イスラエルによるイランへの攻撃は、本格的な戦争へとエスカレートする恐れがあり、イスラエル側には米国と欧州、イラン側にはロシア、そしておそらくはパキスタンも巻き込むことになるだろう。近い将来、複数の核保有国が互いに対立し、世界を核による破滅へと引きずり込む事態が見られるかもしれない。終末時計は午前0時まで89秒を指し、1947年の設置以来、核による終末に最も近づいている。」「ネタニヤフ首相の手を止めない限り、核によるハルマゲドンで私たち全員が滅亡することになるかもしれない。」(2025.6.19)と述べている。
3 IAEAの犯罪的役割と結果責任
今回のイスラエルによるイラン奇襲攻撃で明らかになったことは、IAEAの犯罪行為である。今回、イスラエルは、「斬首作戦」ともゆうべき、イランに対して、核計画、科学者、軍幹部を標的とした前例のない攻撃を行ったが、各科学者の名前などが、IAEAを通じて、事前にイスラエルに流れていたという。「IAEAグロッシが6月13日から24日にかけてイランの核施設を巡る事態についてコメントした方法は、『IAEAの主な機能は監視ではなく、隠蔽された諜報活動であることが明確に示している』と指摘した。『クレムリンは以前からこの事実を知っていた。グロッシが現在、ロシアのカリニングラードを越えて移動することを許可されておらず、ロスアトム以上の高官と会談することを禁止されているのは偶然ではない』」と政治アナリストのザロフ氏は指摘している(2025.6.25)。元々、IAEAは核保有国の核独占という都合のために作られた組織であり、これまでも旧ソ連邦のチェルノブイリ原発事故における被害の隠蔽や、日本の福島第一原発事故においても、放射能汚染水の海洋放出へのお墨付きを与える行為、また、ロシアのウクライナ侵攻においても、ウクライナ側によるザポリージャ原発への度重なる攻撃についても、攻撃主体をあいまいに発表するなどの犯罪行為を積み重ねている。しかし、今回のイラン核科学者の名前の漏洩は非常に悪質である。「IAEAは核施設が攻撃された事実を深刻に捉える必要がある。そうでなければ、今後、世界ではますます核施設への攻撃が容認される。そうなれば、相手も敵国の核施設に報復攻撃を行うことになる。この結果についてIAEAはどのような結果責任を負うのか説明する義務がある。」(olivenews 2025.6.25)。
4 イスラエルは崩壊の瀬戸際まで追い詰められた
元米情報将校のスコット・リッターは。「この問題の本当の目的は核ではなく、政権転覆にある」と指摘する。だから奇襲攻撃で軍幹部・核科学者を標的とした「斬首作戦」を行ったのである。しかし、結果、イスラエルは「10年、もしくはそれ以上かけて築いた諜報作戦を自ら台無しにした」「ドローン操縦士の中に工作員を潜入、ドローン工場への浸透、その全てが消えた。」「彼らは全員モサドの工作員だ。そのネットワークは壊滅した。」「通信面でもイスラエルはあらゆる手を使った。あらゆるトリックを駆使してイランに仕掛けたが、うまくいかなかった。今やイランは体制を立て直しつつあり、もはや通用するトリックは残っていない。イスラエルの正体は完全に露呈した。要するに、イスラエルとイランが再び戦闘に突入しても、F-35やF-22の運用方法には限界があり、イスラエルはそれら全てを使い切った。」と述べている。
また。『アラバマの月』のコメントでは「計画が進展するにつれ、48時間以内、あるいはその直後にイランが降伏することを本質的に予想しているように見えた主要な目標を達成することができなかった。イランがAD能力を回復し、イスラエルに対するロケット弾攻撃を成功させ始めると、紛争は急速に性格を変え、イスラエルにとって非常に破壊的な形で発展した。これは、イスラエルがロケット弾攻撃を止め、面目を保つことを可能にする何らかの出口を提供するよう、アメリカに嘆願する必要があった。」(2025.6.27)。と述べている。