【投稿】 究極の売国的行為―トランプ関税合意と「石破降ろし」という欺瞞

【投稿】 究極の売国的行為―トランプ関税合意と「石破降ろし」という欺瞞

                            福井 杉本達也

1 「日本は関税15%を80兆円で買った」―究極の売国的合意

自動車関税が15%で決着した日米交渉は、日本にとって「勝利」だったのか。日経は「車・相互関税15%に」「税率下げ日米合意」「対米投資を巡っても不明点が残ると報じた。・「日本は私の指示のもとに、5500億ドル(約80兆円)を米国に投資する」。トランプ米大統領は22日、自身のSNSに投稿した。米側文書は、資産と投資家を結びつける枠組みをさす「投資ビークル」と表現し、投資利益の90 %を米国が得ると説明した。80兆円という金額は日本政府の1年分の税収を超える。日本側の説明によれば、5500億ドルは政府系金融機関の出資・融資・融資保証の枠を指す。真水の財政支出ではなく、企業が対米投資に踏み切らなければ使われない可能性もある。」などと解説し(日経:205.7.25)、翌26日の記事では赤沢経財相が記者会見で『5500億ドルを米国にとられたという理解は的外れだ』との見解を示した。」との一方的政府見解を垂れ流した(日経:2025.7.26)。

カギは、米商務長官のハワード・ラトニック氏のBloombergで独占インタビューに答えにある。「アメリカがプロジェクトを選び、日本がその実行に必要な資金を提供するという形になります。」「運営は企業に任せ、得られた利益はアメリカの納税者に9割、日本には1割が配分されます。これは実質的に、日本がこの公約によって関税率を引き下げたことを意味します。」「日本は、アメリカが選定したプロジェクトを実現させなければなりません。」(Yahooニュース:2025.7.26)としている。

経済学者で京都大学・慶應義塾大学名誉教授の大西広氏はスプートニクの取材に応じた中で、合意を「自動車を守るために多くのものを手放した、売国的な合意だった」と述べている(Sputnik日本:2025.7.26)。5500億ドルの根拠は外為特別会計で保有する証券1兆1350億ドル(2025年6月末)の半分であり、財務省が保有する米国債の半分を米国向け投資に振り替えて長期固定化する。つまり米国債のように市場売却は不可能となり、利子配当も激減するのである。

『ビジネス知識源』はさらに分かりやすく、「トランプの任期の3 年で、日本が80 兆円を米国政府ファンドに預託した場合、毎年26.7 兆円のマネーを日本政府の保証で米国政府ファンドに預託することになります。資産は日本のものですが、運用益は米国というとんでもない条件です。日本政府が米国債への投資として運用したときの⾧期金利は、現在4.5%付近です。今回の米国の要求では、債券の運用利益の90%は米国政府の利益になって、日本に還元されるのは4.5%×0.1=0.45%です。」(ビジネス知識源:2025.7.26)。

小沢一郎氏も「そもそも政府は米国による一連の関税措置の完全な撤廃を目標としていたのではないのか。新たな関税負担は、サプライチェーンや多くの中小企業に影響を及ぼす。また、特にコメ等の農産物輸入拡大は、我が国の生産体制を破壊しかねない。外交交渉が「バナナのたたき売り」であってはならない。」「もはやトランプ氏による「商い」と化した交渉。あまりに品位に欠け、日本に対する敬意も欠く。高関税を圧力に対米投資を強要し、根拠なき数字により日本を脅す米国の態度はあまりに異様。対米投資80兆円などというが、そんな資金があるなら、まず日本国内に投資すべき。国民を犠牲にするつもりか」「最大の問題は、日米間に合意文書がなく、合意内容の認識も日米で大きく食い違っていること。トランプ氏が再び難癖をつけてくる可能性が高く、その場合は更なる不利益を被る。米国からここまで突き放されているのだから、逆に日本はこれを奇貨としてより自立する道を選ぶことも検討すべきだろう。」(X小沢一郎事務所:2025.7.28)と批判している。

これに対し、野党では立憲民主党の野田佳彦代表は「国益にかなった交渉だったのかは検証したい」といつもの煮え切らない見解に終始した。国民民主党の玉木雄一郎代表は「自動車を合めて15%にしたのは大きな成果だ」と評価した(後に撤回?)。維新の岩谷良平幹事長は「25%という最悪の事態を避けることができた点は政府の努力に敬意を表したい」と評価した。与党の公明党の斉藤哲夫代表は「粘り強い交渉の結果、日米両国の国益に資する合意となった」と評価した(日経:2025.7.24)。なんとも情けない限りである。

 

2 石破降ろし騒動は、売国的合意を隠すための茶番劇

7月23日付けの読売新聞号外の大誤報をはじめ、新聞各紙・テレビなどマスコミは石破降ろしの大合唱である。しかし、トランプ関税の究極の売国的合意とする報道はほとんどない。そもそも、参院選挙期間中に、この売国的合意は決まっていたはずであるが、選挙結果を恐れて、選挙後の発表となった。参院選挙後の自民党・新聞・マスコミ等の石破降ろしの大合唱は、売国的関税合意を隠す狙いが濃厚である。トランプ関税合意の詳しい説明は、米国からの一方的説明のみで、新聞でもテレビでも誰も解説もしていない。

スポーツニッポンでは赤沢経財相は5500億ドルの数字について「丁寧に説明すると、誤解がこれもあるんですけど」と前置き。「5500億ドル、“真水”という言い方をしますが、キャッシュで5500億ドルがアメリカに行くわけではありません」と説明した。5500億ドルの内訳は、出資、融資、融資保証だといい、取り分については出資の部分だけだという。出資について、赤沢氏は「プロジェクトに出資して、やった時の利益をどうやって分けるかという話(2025.7.26)と究極の売国的ごまかしをしているが、石破政府・自民党・自民党退陣要求派・財務省・外務省・経済界・マスコミ・野党等々を含め、こんな関税合意を「勝利」などとし、喧伝しているが、政府・自民党・財務省・外務省・財界・マスコミ・野党を含めての解体的出直しがなければ、日本は米国と共に沈没するしかない。一刻も早く、ドル基軸体制からの離脱を図り、中国やロシア・東南アジアやBRICSなどと協力関係を築くべきである。

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