【投稿】トランプ:泥沼・迷走から、対イラン「和平合意」へ

<<ぶち壊しのイスラエルによるベイルート爆撃>>
6/15、米・イラン間の「和平合意」仲介役を果たしてきたパキスタンのシャリフ首相(Shehbaz Sharif)は、「和平合意完了」を宣言し、署名式は来週金曜日(6/19)にスイスで行われることを明らかにした。
シャリフ氏は、「激しい協議の末、私たちは喜ばしくも発表いたします。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国との間の平和協定が締結されました。双方は、レバノンを含むすべての戦線における軍事作戦の即時かつ永久的な終了を宣言しました。公式な署名式は、6月19日金曜日にスイスで行われます。
この紛争に対する外交的解決策を見つけるための取り組みに対し、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国に感謝の意を表します。また、この調停努力における私たちの兄弟、カタール国の偉大な指導部に対し、この合意達成への支援に対して心からの感謝を申し上げます。私はまた、サウジアラビア王国およびトルコ共和国の先見の明ある指導部に対し、この点における多大な貢献に対して特別に感謝いたします。」と表明している。

ところが、である。「双方は、レバノンを含むすべての戦線における軍事作戦の即時かつ永久的な終了を宣言」したにもかかわらず、その合意を台無しにすべく、直前の6/14未明、イスラエル軍は、レバノンのベイルート南部ダヒヤを2回にわたって、再び攻撃し、ゴベイリー地区の集合住宅の2つのアパートを直撃したという。少なくとも3人が死亡し、負傷者を多数出している。イスラエル国防軍(IDF)は、「ネタニヤフ首相とカッツ国防相の指示に基づき、IDFは現在、ベイルートのダヒエ地区にあるヒズボラの標的を攻撃している」と声明で述べている。
イスラエルは、「トランプの屈服・イランの勝利」という「和平合意」を拒否する姿勢を明確に示したのであろう。

あわてたトランプ大統領は、「今朝のベイルート攻撃はあってはならないことだった」とTruth Socialに投稿している。「我々はレバノンを含む地域に平和をもたらす合意に非常に近づいており、すべての当事者は攻撃を停止すべきだ。イスラエルはレバノン国内のいかなる場所においても攻撃をしてはならない。また、ヒズボラを含む他のいかなる勢力もイスラエルに対する攻撃をしてはならない」と述べているが、今回の攻撃は「非常に小規模で無意味な」攻撃への報復であり、負傷者は出なかったと付け加えている通り、トランプ政権は詳細な情報さえ確認できていないのが実態である。

こうした事態に対して、イランの首席交渉官モハマド・バゲル・ガリバフ氏は、レバノンへの死傷者を出した攻撃の直後、イスラエルによる攻撃を容認しながら外交を進めている米・イスラエルの戦略を厳しく批判し、「イスラエルによるレバノン爆撃は米国の偽りの約束を露呈した」、「シオニストによるダヒヤ侵攻は、アメリカが約束を果たす意思も能力も欠如していることを改めて示した」と述べている。イラン外務省は、今回の攻撃はレバノンの主権と、「停戦合意」の両方に違反するとして非難し、イスラエルの行動に対する「直接的な責任」は米国にあると主張し、今回の攻撃は地域の平和と安全に深刻な影響を及ぼす可能性があると警告している。

<<「和平合意」14項目と核問題>>
肝心の「和平合意」とは、いかなるものか、イランのメフル通信は、米国との和平合意草案の詳細を以下のように報じている。
もちろん、草案の14項目には、レバノンを含む「あらゆる戦線」での即時かつ恒久的な停戦が含まれている。それが第一項目に挙げられている。

その主な内容は以下のとおりである。
1. レバノンを含む全戦線における戦争の即時かつ恒久的な停止
2. 米国によるイランの内政不干渉と主権尊重の約束
3. 30日以内の海上封鎖の完全解除
4. イラン周辺地域からの米軍撤退
5. イランの取り決めに基づき、30日以内にホルムズ海峡を再開通させること
6. イラン産原油、石油化学製品、および派生製品に対する制裁措置の停止、および関連資金への完全なアクセス
7. 米国とその同盟国による、少なくとも3,000億ドル相当の復興計画の提供
8. 核問題、制裁緩和、および関連する国連安全保障理事会決議とIAEA理事会決議の撤廃に関する最終合意に達するための60日間の交渉期間
9. 核不拡散条約(NPT)に基づくイランの核兵器不生産の新たな約束
10. 米国の増税の停止地域における軍事力の維持と、協議期間中の新たな制裁措置の回避
11. 凍結されているイランの資金240億ドルの解放(交渉開始前に半額を解放)
12. 履行を確実にするための監視メカニズムの創設
13. 国連安全保障理事会決議による最終合意の承認
14. 最終協議は、イランの凍結資金の半額が解放され、石油制裁が停止され、海上封鎖が解除された後にのみ開始される。

最終合意は、濃縮物、制裁緩和、経済復興に焦点を当てる一方、イランのミサイル計画と抵抗勢力への支援は議題から除外されると報じられている。

確かにこれでは、イランの全面的勝利、と言えよう。
これからの交渉議題とはいえ、とりわけ、トランプ氏がこれまで強引に主張してきた、「核施設の破壊・濃縮ウランの米への引き渡し」要求は、「イランの核兵器不生産の新たな約束」という、従来からイラン側が一貫して明確にしてきた公約の追認に取って代わられているのである。

米ABCニュースが指摘している通り、「同じ約束は10年以上前にオバマ大統領の核合意の最初の段落にすでに登場していました。最初にオバマ氏の合意がありました。次にトランプ氏はそれを破棄しました。今、トランプ氏は同じ核心的な約束を基盤とした合意を祝っています。」

ところが、トランプ大統領は6/12、「イランがフェイクニュースにリークした条件は、書面で合意された条件とは全く関係ありません。彼らが言ったこと、合意があったという弱々しく情けない声明も含めて、真実とは何の関係もありません。非常に不名誉な相手です。彼らと取引するにあたって、誠意ある取引などありえません。」と自らのメディア TruthSocialで表明している。

過去2ヶ月間、トランプ大統領は合意が目前に迫っており、署名間近だと38回も宣言してきた。わずか3日間で、彼は想像の中で4回も「副大統領をパキスタンに派遣した」とまで述べている。

そして米国内においても、支持率が激減し、CNNは、「インフレ大好き」とうそぶいたトランプ氏は、「トランプは歴史上、インフレに対する支持率がマイナス50ポイントに達した唯一の大統領だ。彼の経済的失敗は前例がない!」と指摘されている。

こうした、トランプのタコス(「Trump Always Chickens Out」 – トランプはいつも尻込みして退く)またもやかと言われるほど、いつ逆転するかも含めて、危なっかしい事態の進展は、それほどに、トランプ氏は追い詰められてきたという、証左でもあろう。

(生駒 敬)

 

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