【コラム】ひとりごと—新潟知事選結果から学ぶこと–
○16日に投開票が行われた新潟県知事選挙は原発再稼働推進の自公推薦候補者を、告示わずか1週間前に立候補を表明した原発再稼働慎重派の「野党共闘」の候補者が6万票の大差を付けて破り当選を果たした。まさに、新潟知事選挙は、参議院選挙に続いて、明確な対立軸を設定すれば、圧倒的に有利な与党勢力に対抗し且つ勝利できることを証明する結果となった。久しぶりに胸の好く勝利であった。さらに「1月解散説」を流布し、TPP国会を強引に乗り切ろうと目論む安倍政権にも痛打を与える結果となった。○野党共闘と言っても、何とも情けない話だが、野党第一党の民進党は自主投票で臨み、拮抗した選挙戦を見て最終日に蓮舫代表が新潟入りし、辛うじて民進党の姿を選挙民に残したに過ぎない。代表の新潟入りについて聞かれた野田幹事長は「行けとも行くなとも言っていない」と答え、党としての「派遣」ではないニュアンスを匂わせた。何とも情けない。その心は、自公候補を支持した連合新潟に配慮したから、と言う事らしい。○確かに連合新潟のHPには、「連合新潟は、長岡市長選挙で三期目から推薦してきたことや連合新潟中越地域協議会と日常的に協力関係があったことなどをふまえて、四年間の県政に期待をこめ、森民夫氏を「支持」し応援します。」(2016-09-14自公候補支持を決定)との記事が掲載されている。原発推進の電力総連に遠慮をし、県民の抱く原発再稼働への不安に背を向けた態度である。○知事選挙では相乗りもありだろう(民主党政権時代には、相乗り一切まかりならぬという時期があったことを思い出すのだが)。しかし、国政選挙ではないからと言って県民の不安を軽視した自公相乗り姿勢は、県民の選択によって厳しい批判を受けた。原発再稼働・電力総連・民進党というキーワードが結びつく時、民進党の今後は限りなく厳しいものになると思う。せめて自主投票という選択も連合新潟にもあったはずだし、民進党にも自主投票から踏み込む対応もあったにも関わらずそれができなかったことは、蓮舫指導部の調整力、対応力の限界を示した。○さて、連合、共産党(全労連)、民進党の関係の話である。連合結成から27年が経過した。「自派のナショナルセンター」を持ちたいと考えた共産党指導部の意向で、産別分裂を強行した上で全労連は結成されて今に至っている。大企業・公務職場の人員削減と非正規労働者の増加の中で、残念ながら連合も全労連も組織人員は減少している。ここ数年の組織人員を、厚労省の労働組合基礎調査から調べてみた。H23年調査では連合666.9万人(683.9万人)全労連62万人(86万人)となっている(カッコ内は地域労組を加えた数字)。それが、H27年調査では連合674.9万人(689.1万人)全労連56.9万人(80.5万人)となり、全労連は5万人強の減少となっており、毎年の減少が続いている。全労連は150万人組織を目指しているというが、減少傾向に歯止めがかかっていない。○政党との関係では諸々の議論や課題があるものの、安倍政権に対抗して野党共闘がその力を発揮し始め、市民運動の努力もあり、野党は「共闘」を始めたわけだが、連合も各産別も結成30年を見据えて、労働戦線の再統一を目指すという目標設定はできないのか、と言う問題意識である。もちろん連合幹部にも「全労連」憎しの感情も実態も存在していることは承知しているが、それ以上に労働組合運動後退の危機の方が深刻なのではないか。組織統一や加盟問題は議論のあるところだが、長い目で見て決して無い話ではない。むしろ全労連の組織減少が今後も続けば、その可能性は高まる。○非正規労働者の権利擁護、悪徳労働環境の打破という課題では、労働組合は組織を問わず一致して運動できるし、しなければならない。「同一労働同一賃金」を安倍政権が掲げ、「働き方改革」と称して安価な労働力として女性労働を増やそうとしている時、力を合わせる努力が必要ではないのか。「野党共闘」路線に共産党が大転換し、来る衆議院選挙でも野党共闘が実現すれば民進党候補の推薦に躊躇はしないだろう。労働戦線における共闘の追及は、野党共闘をさらに強めることになると思われる。○そこで問題は、連合労働運動そのものであろう。未だに大企業労働組合中心の運動に留まっているのではないか。非正規労働者の拡大に対応した取組が行われているが決定的に不十分なのではないか。そして新潟県知事選でも表面化した原発への対応が、一部の原発推進産別の影響で国民・県民の意識とかい離している現実をどうするのか。国民的課題の上に産別利害を置くようでは、ナショナルセンターと言えるのだろうか。○滋賀・鹿児島・新潟と原発が存在するか、近接している知事選はいずれも原発再稼働を支持する自公与党候補が敗北しているのである。この事実から導かれる結論は明らかだろう。新潟知事選挙結果から学ぶことは大きい。(2016-10-18佐野)
【出典】 アサート No.467 2016年10月22日