【投稿】新潟県知事選と野党共闘 統一戦線論(29)

【投稿】新潟県知事選と野党共闘 統一戦線論(29)  

<<首都圏大規模停電と原発再稼働>>
 10/12に発生した、埼玉県新座市での爆発を伴う東京電力・地下送電線の火災は、軽く見過ごされてはならない深刻な問題を提起している。この火災による首都圏の大規模停電は、東京都新宿区、豊島区、板橋区、練馬区、中野区、北区、文京区など広範囲に及び、延べ58万6千戸が停電、政府中枢施設や鉄道・交通網にも影響が出たのであるが、問題はその原因である。
 第一は、電力設備の重要かつ不可欠なインフラである送電線網が極度に老朽化・劣化しているというごまかしようのない事実が露呈されたことである。問題の電線ケーブルは、最長25年という耐用年数を無視して、設置以来35年を経過していたこと。中には敷設から57年経過したケーブルもあるという。しかも、保守点検は年に1回、目視検査だけであったこと。さらにこの出火した送電ケーブルは「OFケーブル」と呼ばれるタイプで、電気が通る銅製の電線が通り、その内側に絶縁のための油が流れるパイプがあり、電線の外側にはパイプからしみ出た油を含んだ絶縁紙が巻かれているが、東電は10/12の記者会見で、「(経年劣化により)絶縁紙にひびが入るなどして、高圧の電流が漏れて火花が発生。油に引火して燃え広がった可能性がある」と説明して、経年劣化による漏電、引火、爆発の可能性を認めている。いったん事故が発生すれば、引火が連鎖し、容易に消火することができないため、東京消防庁はこの「OFケーブルはガソリンスタンド並みに危険」と指摘していたが、それを無視して埋設高圧線に使用され続けてきたのである。現在はより安全度の高い「CVケーブル(架橋ポリエチレンビニルシースケーブル)」(油を使わないプラスチック使用ケーブル)が実用化され、この古いOFケーブルを新しいCVケーブルに交換する作業を進めているが、東京電力管内のケーブルのうち、7割が35年以上交換されていないのである。現時点で約1500kmものOFケーブルが残っており、このうち設置から35年以上経過したOFケーブルは約1000kmもあるという。

<<人為的・意図的な安全軽視>>
 第二は、原発事故との密接不可分な関係である。今回の東電の大規模停電事故で露呈された「メンテナンスには金をかけない」「事故が起こるまで使い続ける」というどの電力会社にも蔓延している「利益第一」「コスト削減」優先体質である。各電力会社が抱える老朽化原発が実際にはどうなっているかという極めて重大な安全点検が実際の詳細な点検を経ずに、40年も超えて老朽化が明らかなのに配管の全数点検は行われず、事実上書類審査だけですまされ、動かしてみなければわからないという根源的なずさんさが電力会社にも原子力規制委にも蔓延してしまっていることである。そして現実に、東京電力柏崎刈羽原発では、国の基準に違反して敷設されたケーブルが1700本以上、工事の設計管理不備が700件以上あり、原子力規制委から指摘されていた。関電高浜原発では、重要な1次系高圧バルブの点検が8年間も行われていなかった。九電では、復水器の冷却用配管を全数検査しておらず、細減肉や 腐食 損傷の全数点検も行われていない。四国電力の伊方原発の送電、受電所は、問題の可燃性「OFケーブル」を使用しているにもかかわらず、原子力規制委はこれを問題にもしていないまま再稼働を強行させている。
 こうした実態と、今回の首都圏大規模停電が明らかにしたことは、地震や津波といった自然災害のみならず、人為的・意図的な安全軽視による原発事故が非常に高い確率で発生し、それは大量の放射能を放出する重大な苛酷事故の現実的可能性をあきらかにしたことである。大手マスコミも原発立地の地元マスコミも、電力業界の広告宣伝費の甘い汁にむらがって、こうした現実をほとんど報道しようとはしていない。原発再稼働容認路線は、人為的・意図的な事故原因隠蔽路線と一体のものであり、「人類的な犯罪・破滅への道」なのである。警鐘乱打されなければならない事態である。

<<新潟県知事選、再稼働容認路線を拒否>>
 10/16・投開票の新潟県知事選挙は、この原発再稼働容認をめぐる激しいせめぎあいであった。実質上の野党統一候補が、圧倒的優勢を伝えられていた自民・公明推薦の原発再稼働推進候補を打ち破ったのである。大逆転であり、歴史的、画期的な快挙といえよう。「柏崎刈羽原発の再稼働は認めない」という県民の明確な審判が下されたのであり、原発再稼働を推し進める安倍政権にとっては、決定的な敗北であり、今後の政局を左右しかねない痛打である。
 「脱原発」「再稼働反対」のシンボルでもあった泉田裕彦知事が地元紙・新潟日報との対立で間際になって突如、立候補を辞退し、再稼働推進派で自公推薦の森民夫・前長岡市長の無投票当選の可能性さえ出ていた新潟県知事選。今年7月の参議院選挙では、野党共闘の森ゆうこ氏が自民公認・公明推薦の中原八一氏を僅差で勝利している。しかし、比例代表の票では、自公両党の得票は計57万票余り、対する民進、共産、社民、生活4党の合計票は43万票余り。そこへ民進党の有力な支援団体である連合新潟が、柏崎刈羽原発の再稼働に前向きな自公推薦の森民夫候補の支持を表明した。連合新潟の代表は「連合新潟の一番大きな母体は電機連合で、原発を動かしてほしいとの思いで森候補を決めた」と語っている。
 民進党は、候補者選定ができないでいるうちに最大の支持団体の連合新潟が森氏支持を決定したため、自主投票にとどめてしまった。代表選で「野党共闘は維持する」と表明した蓮舫代表であったが、この時点でその約束は早くも反古にされ、原発再稼働推進の自公連合側にほぼ勝負あったとみられていた。

<<原発再稼働反対を明示した野党共闘の前進>>
 だが、告示が9/29に迫る中、民進党の次期衆院選新潟5区候補として総支部長を務めている米山隆一氏に、新潟県の野党各党と幅広い立場の市民で構成する「オールにいがた平和と共生」や「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」などに結集した新潟県の市民グループなどが粘り強く努力し、出馬を要請。民進党県連が自主投票を決めたため、いったん出馬を見送っていた米山氏は、これに応えて民進党に離党届を提出し、無所属での立候補を決意、記者会見を行ったのが9/23であった。米山氏は「県民の命と財産を守り、子どもたちの未来、ふるさとのさらなる発展のためこの身をささげたい。世界最大の柏崎刈羽原発を擁する新潟県として、泉田裕彦知事の『福島原発事故の検証なくして、再稼働の議論はしない』との路線を継承し、県民の安全・安心を確保する」と力説。さらに「医師・弁護士の経験を生かし、子育て支援、医療、介護、福祉の充実をはかる。新潟の農業を守るため、TPP(環太平洋連携協定)では県民の意思を主張していきたい。情報公開を強め、県民と対話していきたい」とその政治的立場と政策の基本を明確に示した。民進党は逆にこれを受けて、民進党本部が、党新潟県連からの要請に従い、米山隆一氏の新潟5区総支部長解任を決定、米山氏の公認内定を取り消し、見放してしまったのである。
 しかしこうした事態の進展は、形式的な連合、お付き合い、野合ではなく、実質的な野党共闘の進展に大いに寄与したとも言えよう。民進党本部、民進党新潟県連の決定にもかかわらず、選挙戦は自公陣営を追い詰める切迫した激戦に発展。終盤近くになると、取り残され、遅れてはならじと多くの民進党の国会議員が米山氏の応援にかけつけ、前原誠司衆院議員、近藤昭一衆議院議員、阿部知子衆院議員、松野頼久衆院議員、黒岩宇洋県連代表などが米山候補の応援に立ち、実態的には4野党の共闘にまで発展してしまったのである。いたたまれなくなったのであろう、ついに民主党の蓮舫代表までが米山氏の応援にかけつける事態となった。選挙戦の最終盤、10/14、「新潟に新しいリーダーを誕生させる市民の会」が、新潟市万代シティの街頭で緊急市民集会を開き、そこに駆け付けた蓮舫氏は、「この場に立って何としても応援したいと思って来ました。県民の命と安全を守る政治、ママたちの声を受けとめ、同じ母親として子どもたちの未来を守るため、一緒になって頑張っていきたい」と訴えたのである。この緊急市民集会には、共産党の笠井亮衆院議員ら野党各党国会議員、民進党の阿部知子、小熊慎司両衆院議員、自由党の山本太郎参院議員も応援に立ち、河合弘之弁護士、佐高信氏、五十嵐暁郎・立教大学名誉教授や市民ら十数人が次々に訴え、市民の会の佐々木寛共同代表が強調したように、「この知事選は原発再稼働が最大の争点。無党派と普通の市民が立ち上がる選挙になっている」という、これまでの戦争法反対の野党共闘からさらに進んで、原発再稼働反対を政策として明示した新しい野党共闘の質的な前進が形成されたのである。
 民進党は、政党として自主投票を掲げながら、党首が応援演説をするという変則事態に直面し、野田佳彦幹事長は「(蓮舫氏が)行くと言っても止める」と語っていたにもかかわらず、それも果たせず、市民レベルで原発再稼働を容認しない巨大な運動の波と世論の転換に置き去りにされてしまったのである。草の根レベルの統一戦線の前進が、政党間の思惑をも乗り越える貴重な教訓を提起したと言えよう。
(生駒 敬)

【出典】 アサート No.467 2016年10月22日

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