【翻訳】 日本はもっとドイツ的であるべきだ。
(Japan Times 記事 on Nov. 25, 2014)
Japan should be more German :
by Mr. William Pesek, Bloomberg View columnist based in Tokyo
日本は、三つの事を重視すべき:
1. 革新 “Innovation” と小/中規模中堅企業 “Mittelstand”
2. 近隣諸国の重視、とりわけ中国
3. 人口減少問題/及び女性と退職技能者の活用
“Made in Japan” が時代おくれの方向に押しやらているその時に、ここ15年ほどに渡り“Made in Germany”ブランドがすくすくと成長してきているのは何故であろうか?
競争の激しい世界市場にあって、高い賃金、ユーロの過大評価および近隣諸国の財政危機にもかかわらずドイツは繁栄してきている。その秘訣は、日本株式会社でさえ思いつかないような方法での順応と革新ある。
SLJ Marco Partners (1*) のMr. Stephen Jen, Managing Directorは述べている。即ち、ドイツの経営者は、為替相場について不平を言わなかった。彼らは、それを描き出して再構成した。事実世界経済の混沌がこの為替変動を導いているように見えた。ドイツはこの変動と向き合わず、共に歩んできた、と。
安倍首相によるこの突然の解散総選挙は、最近の経済の低迷から日本を奇跡的に目覚めさせることにはならず、ドイツ経済がかって経験した同じ課題を学ばねばならなくなるであろう。即ち、上記に掲げた三点である。
1. 革新がすべてである。”Innovation is everything.”
GDP (US$ 3.6兆)と人口(8千万人)で調整すれば、ドイツは今でも世界一の輸出国である。もっとも絶対額では、ドイツは中国と米国の後に続いているが、自動車、機械、電気、薬品、光学製品、プラスチック等の分野おいては、独自性を保持している。この成功は、企画/構想力の調和、生産性向上への注力、さらに調査/研究と開発における積極的投資や、旧来のリスク覚悟の投資を呼び込んでいる。ドイツは相対的優位性を引き出すために、競争力の向上と雇用の極大化の間に生じる緊張をうまくバランスさせてきている。
他方、日本の製品は、世界的デフレの中にあって、価格面で弾力性に乏しい傾向にある。
また日本の経営者は、既存の商品や生産工程の追加的な改良を好む、inter-net 時代になって趣向の変わっている消費者に対しても。
Mr. S. Jen と同社所属の経済学者Ms. Joana Freire は論じている、即ち、問題は日本株式会社 (“ Japan Inc.”) は心理的に“バンド戦術”に陥っている。野球用語を使って言えば、ゴールはホームラン目当てで強振するのではなくて、ただ塁に出ることである。アベノミクスはブレークスルーを狙ってマクロ(デフレ予測)とミクロ(構造的硬直性)という障害の取り除く手助けは出来ようが、それ以外に何かが必要であると。
日本は再度、もっと野心的に考えることを学ばねばならない。
小さいことは、大きいこと。ここ二年の「円」の30%の下落は、ソニー、トヨタ、海運大手の商船三井そして建設機械の大手コマツ等の円高による切迫性を緩和してきている。
代りにロボット企業のファナック、スマホアプリ開発のコロブラ、オートメーション装置のキーエンス、バイオ創薬のぺプチドリーム(2*) 等 -これらの企業は日本の“ミッテルスタンド”(3*)を構成しているーの企業に国は何らかの助成をすべきであろう。
小及中規模中堅企業はヨーロッパの大きな経済のバックボーンを形成している。ドイツ政府は、機械装置の時代にあって、すべての仕事の芽はより小さい企業から出てくると理解している。これら企業は、ほとんどは家族所有で、長い目で考える。そして、価格よりも品質と創意において秀でており、バランスシートは健全で、強力な政府の支援に浴している。日本もまた、従業員300人以下の新しい企業の後押しをする必要がある。実際にこれらの企業は、革新し、人々を雇い入れ、見方/考え方を変えている。
2. 近隣を重視すべき。”Think Regionally”
ダイムラー(Daimler)(4*) は言っている。ドイツはアメリカと中国と多く取引している。そして来年には、メルセデス・ブランドにとってこの二国は最大のマーケットとなるであろう、と。
しかし、Mr. S. Jen と Ms. J Freireは、種々データが以下のことを暗示していると述べている。即ち、輸出における”global super-power” としてのドイツの出現は、日本が頼っている世界化/国際化(”globalization”)よりもより地域化(“regionalization”)、また障害のないEU諸国への接近に負うところが大きかった、と。
米国やその他の国々とのTPP(Trans-Pacific Partnership)成立は日本のもっとも硬直化した産業部門の解放の助力となるであろうとの算段のもとで交渉に臨んでいる一方で、安倍首相は、アジア諸国との関係修復に注力して、中国も含めたこれらの国々と二国間自由貿易協定を結ぶべきである。
3. 移民受け入れと熟練退職者及び女性への権限付与:
安倍首相はまた商品同様に国民に対しても扉を開くべきである。ドイツの人口構成は日本よりも健全である。しかし、65歳以上の人口が21%を占めている現実より(日本は26%である)ドイツは素早く行動している。さらなる移民受け入れ歓迎の政策と共に、技能熟練した退職者に対して労働力として復帰するよう説得してきており、また女性に対しても権限を与えてきている。
日本はこれら3項目すべてにおいてドイツの先例に習うべきである。
ドイツは、確かに問題も抱えている。6.7% の失業率とユーロ通貨危機等。そしてトルコやその他の国からの移民の流入にたいして、国民には不満も生じている。しかしドイツは、日本がいかにもっと活気ある未来を作り出すことができるか、の事例をを示している。(訳:芋森)
(1*) London拠点のHedge Fund
Mr. S. Jen はone of the world’s best known exchange strategist の評価あり。
(2*) 東京大学発のバイオベンチャーでペプチド治療薬の発見と開発を目指す。
(3*) ミッテルスタンド” Mittelstand” : ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)における用語でsmall & medium-sized enterprisesを意味し high employment and productivity を誇っている。
(4*) Daimler AG : ドイツの自動車メーカーで、乗用車はメルセデス・ベンツ、スマート等のブランド販売されている。またトラックでは世界最大手である。
【出典】 アサート No.445 2014年12月27日