【投稿】全てのヒト・モノ・カネをイチエフへ

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                           福井 杉本達也 

1.またも全電源喪失
 3月18日、福島第一原発の1、3、4号機の使用済み燃料プール代替冷却システムなどが停電で停止した。2号機燃料プールは幸い別系統であり停止を免れた。20日に全面復旧したが、その間29時間もかかった。原因は配電盤に入ったネズミだという。中部大学の武田邦彦氏が電源喪失して以降の燃料プールの状況を次のように整理している。1)東電が電源系を回復させれば、それ以後は大丈夫、2)電源系が回復できなければ、徐々にプールの水の温度が上がる、3)水が沸騰するのは今週終わり頃と計算されます、4)蒸発熱は1キロ530キロカロリーと大きいので、それから1週間ぐらいは100℃を保ちながら沸騰する、5)核燃料棒は露出していないので、この段階では放射性物質は漏れません、6)さらに2週間ぐらい後に燃料棒の上部が露出しやや危険な状態になります、7)時間的余裕が3週間(武田:2013.3.19)と整理している(東電の発表では65度に達するまでの時間は、4号機燃料プールが一番短くて4.52日)。電源を喪失するということが原発にとって何を意味するのか、東電、この国の原子力技術者・官僚は3.11で十分分かったはずであろうに、予備の対策は何も取られていなかった。かれらには「反省」という言葉も、「学習」という言葉も、「責任」という言葉もない。
 今回の停電では原子炉格納容器窒素封入設備の一部も停止した。原子炉格納容器内は冷却水の放射線分解によって継続的に水素及び酸素が発生しており、可燃限界に達する懸念がある。このため、水素爆発を防止することを目的に、窒素を封入することで原子炉格納容器内の水素濃度を可燃限界以下(水素濃度:4%以下)に保つものである。窒素の供給が停止してから格納容器内雰囲気が水素の可燃限界に至るまでは最短でも約2日程度と評価している(『中期的安全確保の考え方』に関する東京電力からの報告書 2011.12.6)。 周知のように、1号機は水素爆発により破壊されたのであり、4号機の破壊の一部も水素爆発によると言われる。わずか2日で可燃限界に達する恐れのあるものが簡単に停電するとはとんでもないことである。

2.地下貯水槽からの汚染水漏れ
 こうしたぼろぼろの管理状況に輪をかけて4月5日には大量の汚染水が2号地下貯水槽から漏れ出した。当初120トン:放射能量にして1兆ベクレル(Bq)ということであったが、その後3号地下貯水槽など他の貯水槽からも漏れ出ていることが明らかとなり、さらには漏れ出ている貯水槽から他の貯水槽に移送する配管からも漏れ出す事故などが相次いだ。 汚染水タンクの容量不足から原子力規制委は当初、漏れていない地下貯水槽を継続使用する予定だったが、結局茂木経産相は、地下貯水槽の汚染水は全て地上タンクに移すという方針を示さざるを得なくなった。そもそも、地下貯水槽は管理型産業廃棄物処分場に使用される地面を掘り下げ防水シートを3重に敷いた簡単な構造である。極めて危険な放射能を含む汚染水用のものではない。規制委の田中委員長も「あれだけ(大きな規模)の貯水槽をビニールシートで作ることは普通ない。」と、地下貯水槽を作ったことを失敗だった認めた(日経:2013.4.14)。移送中に配管の継ぎ手から漏れた汚染水は22リットルであるが、1立方センチメートル当たり29万Bqの放射能が検出されている。漏れた水が汚染水浄化装置で取りきれないストロンチウム90を主体とするならば影響が大きい。高エネルギーのベータ線を放出し、水中では10㎜までしか届かないが、誤って素手で触った場合、皮膚表面の1cm2に100万Bqが付着した時には、その近くで1日に100ミリシーベルト(mSv)以上の外部被曝を受けると推定される。トリチウムの場合は経口摂取した場合に問題となる(原子力資料情報室)。さらに、東電は、地上タンクの増設が間に合わない場合もあるとして、5・6号機地下の圧力抑制室(サプレッションチェンバー)への移送も検討するとした(福井:2013.4.18)。その地上タンクも急ごしらえで、溶接すべき所をボルト締めしてあったりして、何年も持つようなシロモノではない。まさに泥縄である。漏れ出た汚染水は地下水と混ざり海に流れ出ているはずである。隠しきれないと見た原子力規制委は10年後にはストロンチウム90が福島の海を汚染すると発表した(福井:4.20)。福島第一原発の放射能漏れは止まってはいない。いや、今後何十年~何百年にも亘り東日本の海を汚染し続けるであろう。地上タンクはすぐにも福島第一原発の敷地を覆い尽くし、国道6号を越えてその西側にも林立せざるを得なくなるであろう。

3.原発労働者がいなくなる
 現在、放射線現場で働く労働者の被曝限度は5年間で最大100mSv、年間最大で50mSvである。原子力資料情報室によると、2011年3月11日から12年12月末日までの作業者の外部被曝と内部被曝の累積線量は、約30万人・mSv(=300人・Sv)と膨大なものとなっている。うち約70%は下請け労働者の被曝である。2011年3月、事故直後から対応にあたった東電社員が圧倒的に大きな被曝をしたが、翌4月以降は下請け労働者の被曝が大きくなっている。1ヵ月の被曝線量が10mSvを超えた作業者数は12年10月で20人(最大16.94mSv)、11月は15人(最大19.28mSv)、12月は8人(最大15.85mSv)となっている。2009年度のデータでは、作業者の年間被曝線量は94%が5mSv以下、被曝の最大値が19.5mSv、平均線量1.1mSvであったことを考えると、現在の福島第一原発がいかに厳しい現場であるかが改めてわかる。100mSv以上が167人、50~100mSvが1,030人、20~50mSvが3,631人、10~20mSvが4,024人である(全作業者25,398人中 2013.3.1)。これまでは、冷却用パイプの敷設や炉外の外周などの作業が多かったが、さらに汚染水への対応が加わる。あと5年もすれば福島第一原発にはベテラン作業員は一人もいなくなる。
 関電高浜3.4号機、九電川内原発、四電の伊方原発などを再稼働させる動きがあるが、そのようなことをやっている時間は日本には残されていない。このままでは、福島第一の全敷地が汚染され、崩壊した原子炉に近づくことさえできず管理不能になる恐れもある。全原発で使用済核燃料の管理などの最重要作業以外の全ての作業はやめ、全てのベテラン作業員を福島第一原発に集中しなければ日本は終わりである。

4.「異次元緩和」という資産収奪を許さずイチエフの対策に使え
 黒田日銀は4月4日「異次元緩和」を宣言し、月間で7.5兆円の国債を買い入れることとした。政府が毎月発行する国債は10.5兆円しかない。その7割を日銀が吸い上げれば市場には国債は出回らない。景気が低迷し運用難に悩む生保・都銀・地銀・ゆうちょ・年金資金は全て国債の購入によって安定した収益を上げてきた。これをなくして資金を米国債の購入に振り向けさせようという算段である(『東洋経済』2013.4.20)。生保業界は1980年代後半・米国債への大量投資を行ったが、急激な円高により巨額の為替差損を被った過去がある。結果、生保業界の一部はAIGやプルデンシャルなどの外資の軍門に下った。黒田日銀は国債市場を事実上閉鎖し、日本の全ての資金を米国に持っていくつもりである。 4月19日、生保協会会長・明治安田生命の松田社長は「外債買い増しを選択肢とする」と述べた。日銀との間に何らかの妥協をしたということである(日経:4.20)。そのようなことをすれば、金融円滑化法切れで青息吐息の中小企業の資金源を絶ち、将来の年金資金を枯渇させ日本経済を不況のどん底に追い込むものである。しかし、福島第一原発の対策には今後数百兆円もの資金がかかる。1980年代のような“余裕”は全くなくなっている。日本の支配エリート層は、国土を放射能と米軍に占領させ放置したまま、資産を米英金融資本に叩き売り、海外逃亡を図るつもりなのであろうか。 

 【出典】 アサート No.425 2013年4月27日

カテゴリー: 原発, 杉本執筆 パーマリンク