【投稿】保守体制復活で勢いなくす「維新」
<兵庫 伊丹・宝塚市長選で維新派大敗>
去る4月14日、関西ではマスコミも大きく取り上げる動きがあった。14日投開票を迎えた兵庫県伊丹市、宝塚市の市長選で、維新候補は現職に大敗。大阪での勢いは、周辺都市では届いていない現実が顕になった形だ。
兵庫県の井戸知事は、道州制には慎重な姿勢であり、関西広域連合も、発足にあたって、「道州制に転化しない」との条件付で参加した府県もあった。大阪維新の会の松井知事などは、道州制に慎重な井戸知事に対抗し、7月知事選、11月神戸市長選に維新候補を擁立すると宣言し、今回の両市長選を前哨戦として、候補擁立に至っていた。
選挙戦では、浅田大阪府議会議長が、「尼崎、芦屋、西宮、伊丹、宝塚、そして神戸まで、大阪都構想に組み込まないと東京都に対抗できない」と発言し、兵庫県民から反発を招いたり、伊丹空港廃港論を唱える橋下代表に対する反発が維新勢力の兵庫県進出を阻んだとも言える。
橋下が乗り込もうが、大阪府域を越えた陣地戦では、その力は弱小であると言える。21日の名古屋市議補欠選挙でも維新候補は落選しており、維新勢力の伸び悩みは鮮明だ。
<憲法改正で、安倍・維新連合の動き>
先の党首討論に立った維新の石原代表は、「公明党は(憲法改正で)あなた方の足手まといになる」と述べ、自公連立を批判している。一方、公明党の山口代表は、憲法96条改正は、連立合意に含まれていないと発言し、安倍首相の動きをけん制している。(自公政権合意文章では、「7憲法審査会の審議を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深める」と慎重な表現となっている。)
憲法改正に向けた安倍・維新の動きが報道されればされるほど、大阪都構想が遠のくという現実も無視できない。都構想の中心である大阪市会では、維新だけで過半数に達せず、辛うじて公明党の協力があるため、橋下市長の政策が進んできた。
しかし、衆議院選挙も終わり、夏の参議院選挙では、公明と維新は議席を争う関係になる。この選挙が終われば、当分衆議院選挙もないと言う状況下、大阪市会での維新・公明連携も、より是々非々の関係になるだろう。
橋下市長が提案した大阪地下鉄民営化条例も、3分の2の賛成が必要と言う中、自民・公明・民主の賛成を得られず、継続案件とせざるをえなかった。また、大阪都構想を進める第二回法定協議会では、公明党委員から、特別区30万では大きすぎる、20万程度の身近な規模も検討すべきとの発言が飛び出し、議論が足踏み状態となっている。
<支持率低迷の維新の会>
各種世論調査も、維新の支持率が低下傾向にあることを示している。毎日新聞調査(4/22報道)では、政党支持率は3月調査と比べて、2%ダウンの7%。参院選で投票すると答えた割合も、2%ダウンの11%となった。同じく日経新聞調査でも、3月調査から政党支持率で1%ダウンの5%となっている。
共同通信調査では、3月調査で、維新支持が7.1%だったが、今回の調査では5.5%に低下し、近畿地区調査でも、11.5%から8.3%へと支持率を低下させているのである。
低迷の理由は明らかであろう。自民党に参議院選挙で過半数を許さないと言う一方、憲法改正では共闘できると言う。野党結集もできず、これでは第二極にもなれない。円安と株高で「支持」を増やしている安倍政権に対して、予算案にも賛成するなど、独自色が益々希薄になりつつある。元々、橋下以外は、民主党政権下で自民党から渡ってきた連中か、議員ポストに有り付きたいだけの連中が主流の政党である。参議院選挙後、次の衆議院まで存続するかどうか危うい「政党」なのであって、寄せ集め度は、民主党以上であろう。
低賃金と社会の閉塞感に便乗し、公務員攻撃で庶民の鬱憤をはらすためだけの政党に過ぎない。去る3月30日に開催された「日本維新の会」党大会で採択された綱領なる文書も、自民党と何を区別するのかわからないような保守文言で溢れ、「占領憲法の改正」「既得権の排除」「労働市場の流動化」など、小泉以上の新自由主義的内容である。さらに、原発エネルギー問題には一言の言及もない。
アベノミクスも、いずれ剥げ落ちるだろうが、それ以上に、有害な維新勢力との粘り強い闘いを進める必要があろう。(2013-04-22佐野秀夫)
【出典】 アサート No.425 2013年4月27日