【投稿】 直下に「活断層」の敦賀原発を廃炉にし、日本原電の会社清算を!

【投稿】 直下に「活断層」の敦賀原発を廃炉にし、日本原電の会社清算を!
                             福井 杉本達也 

1 敦賀原発2号機の真下に「活断層」
 大飯原発に続く調査で、原子力規制委員会は12月10日、敦賀原発2号機の真下を走る断層が活断層の可能性があるという判断を下した。田中規制委員長は「今のままでは再稼働の安全審査はできない」と述べ、2号機は、運転再開できずに、今後廃炉の可能性が出てきた。敦賀原発敷地内には「浦底断層」と呼ばれる活断層があり、浦底断層とそこから枝分かれするように延びて2号機の真下を走る「D-1」という断層を中心に、地面を掘って断面を調べるトレンチ調査の現場などで検証した結果「2号機の真下を走るD-1断層が、活断層として活動していて、浦底断層と同時にずれたと考えられる」とした。国の指針では、活断層の上に原子炉などの重要な施設の設置を認めていない。(NHK:2012,12,10)
 
2 恣意的だった日本原電のこれまでの敦賀原発活断層調査
 浦底断層は延長35Kmといわれるが、その後の研究で浦底断層の敦賀湾を挟んで東側にある柳ヶ瀬断層と連動し総延長100Km「濃尾地震」(1891年の愛知・岐阜県を襲った日本最大の内陸型地震・マグニチュード8)級の地震を引き起こす可能性があることが分かってきている(中日:2012.12.11)。
 日本原電のこれまでの活断層調査は非常に杜撰なものであった。既に、30年以上前の2号機建設時の国の安全審査で、今回焦点となっている2号機直下の破砕帯「D-1断層」や敷地内の活断層について日本原電が密かに追加調査をおこなっていた。ところが、1980年当時の通産省は浦底断層について「活動時期が古い」と評価し問題ないという結論を下している(福井:2012.12.12)。
 活断層判読は ①リニアメント判読ではない、② ボーリングデータをどう解釈するかで大きく間違う恐れがある。①-リニアメントとは地表に認められる、直線的な地形の特長(線状模様)のことを言う。崖、尾根の傾斜急変部、谷や尾根の屈曲による直線的な地形、土壌や植生の境目などが直線的に現れる部分であり、断層や節理など地下の地質構造が反映されたものがあるとされてきた。(Wikipedia)活断層とリニアメントの関係を説明すると、これまで日本原電は直線的な崖に注目してリニアメントを決定したが、そこでは何のズレも見つけることはできなかった。リニアメントと認定して掘ってみても何も出ない。調査したが何も出ないから、「断層がない」ということになりかねない。まず正しい位置認識をするのが、第1に必要だということである。変動地形学が注目したのは、「川が曲がっている」、「谷底平野が折れ曲がっている」ような場所を連ねて(断層)と判読したのである。(渡辺満久: 地球惑星科学連合2008大会 2008.5.27)
 次に、②―ボーリングで分かるのは、(ボーリング地点の情報=点の情報)だけなので、ボーリングとボーリングの間に関しては推定で書いている。日本原電が本当の活断層の場所を外して恣意的に図を書くことができるのである。日本原電は敦賀3、4号機増設の申請書で、ボーリング調査を基に作成した地下断面図を示し、敷地内を通る浦底断層は少なくとも約5万前から動いていないと結論づけ、耐震性検討の対象から外している。これに対して渡辺満久氏は、原電の作った断面図では2本のボーリングの間で、基盤岩と堆積層のなす面が地表の砂礫層のさらに下で途切れているように描かれている。しかし、これは原電の勝手な想像に過ぎないと述べ、もっと地表面近くまで断層面が伸びている可能性も否定できないと指摘している。(渡辺満久:グリーンアクション主催講演会2008.7.13)
 
3 破砕帯のトレンチ調査で明確な活断層の証拠を突きつけられ、焦る日本原電
 これまで、日本原電は「D-1」破砕帯の上に乗る地層にズレや変形がないとして活断層を否定してきたが、今回のトレンチ調査で、あっては困る「D-1」破砕帯の上に「何らかの変形が…1回もしくは複数回動いたかもしれない」(宮内宗裕千葉大教授・変動地形学)「破砕帯の上に乗っている層に変形が認められた。浦底断層によって働く力に極めて近い力が働いた結果、動いたのだろう」(島崎邦彦規制委員長代理)という動かぬ証拠を見つけてしまったのである。(福井:2012.12.03)
 まさかこの段階で「クロ」の判断が下されるとは思っても見なかった日本原電は12月11日、規制委に対し、異例とも言える公開質問状を提出した。「科学的根拠を含めた説明がなされたとは言えず、理解に苦しむ」とし、「原電の追加調査の結果を待たずに結論づけが可能とした理由」など10項目の反論を行った。
 
4 日本原電は解体しかない
 このまま、敦賀2号機の再稼働ができなければ、日本原電は苦しい立場に追い込まれる。敦賀1号機は1970年の稼働であり、既に42年が経過している。40年基準を適用すれば廃炉は避けられない。しかも、福島第一の事故を起こしたGE マークⅠ型である。さらに、1号機は3.4号機が完成する時点では廃炉にすることが地元でも合意ができている。いまさら稼働延長は言い出せない。また、敦賀3,4号機については新増設を行わないという方針で建設がストップしている。しかも、3,4号機についても、今回の活断層評価の影響は避けられない。浦底断層の至近距離にある。県外では茨城県に東海第2原発があるが、先の3.11大震災・津波で大きな被害が出た。あと一歩で福島第一の事故と同様の炉心溶融を起こすところであった。そのような原発に金をかけて再稼働を目指すとなれば、東京は全滅である。しかも、地元東海村の村上達也村長は再稼働に反対を表明している。
 日本原電は、1957年に商用原子力発電を導入するために、電気事業連合会加盟の電力会社9社と電源開発の出資によって設立された国策会社である。したがって、持ち株は東電が28%、関電が23%、中部電力が16%、北陸電力が13%などとなっている。原発からの電気を地域電力各会社に販売することによって経営している。もし、敦賀2号機が廃炉となれば売る電気はなく、即、経営問題に発展する。現在、電力社は日本原電に対し「基本料金」という名の経営維持【負担金】を支払っている。各電力は出資比率により支払っており、関電の場合は年間466億円であり、電力料金に上乗せされている。12月14日電気事業連合会会長であり関電の八木社長は、敦賀原発が廃炉になった場合の費用負担について「枠組みを国と協議しながら検討する」とし、国にも費用負担を求める考えを示した。(日経:12.15)日本原電は、原発に特化した卸電気事業者であり、原発の発電した電気の売電だけが唯一の売上である以上、廃炉となれば会社として存続することは不可能でもあり、意味もない。早急にこの国策会社を解体し、清算すべきである。むろん、その株主には廃炉費用を含め応分の負担を負ってもらわなければならない。いま、東北電力の東通原発を活断層と分かりながら建設を強行してきたことが明らかとなりつつある。各電力会社は今後、動かない原発設備の負担を抱えつつ企業を存続していくことは不可能になりつつある。それは、12月11日の電力株暴落からも伺える。
 
5 地元、福井県・敦賀市も焦る
 焦ったのは日本原電だけではない。地元・西川福井県知事は「国として、十分は科学的根拠に基づき、立地地域と県民が理解し、納得できるような調査とすべきだ」とコメントした。(福井:12.11)また、川瀬敦賀市長は「慌てて結論を出すのではなく、調査を行い、しっかりと確認をして欲しい」(福井:12.12)と議会で答弁、地紙・福井新聞は「規制委が即危険かどうか不明な原発の廃炉を命じる法的根拠もない」(12.11)との居直りの論陣をはった。
 確かに、敦賀原発が廃炉になれば、地元雇用や財政に大きな影響を及ぼすことは明らかである。しかし、活断層を頬被りして事故が起これば地元どころか日本国中にとって重大な危機となる。しかも、1960~70年代・エネルギー革命で石炭が閉山となった九州や北海道・常磐などと比較すると地元に密着した雇用は少ない。閉山政策の場合は30万人もの炭鉱労働者の雇用をどうするかという問題に直面したが、電力の場合にはそれほどでもない。元々、原発労働者は全国を渡り歩く労働者が多く、地元に留まる労働者ばかりではない。(吉岡斉:もんじゅを廃炉へ全国集会:2012.12.8)
 しかも、敦賀市は大阪ガスのLNG基地計画を日本原電出身のK議員を表に立てて潰した前歴がある(裏は関電)。地元の新たな産業振興をせず、原発だけに頼ってきた敦賀市に地元雇用を云々する資格はない。
 
6 総選挙大敗北後の原発政策は
 12月16日に行われた総選挙で、脱原発の民主勢力・各政党・議員は壊滅的敗北を喫した。投票率も大幅に下がった。敗北の原因は2009年の選挙により手に入れたはずの政府の頭部を米国とそれに従属する日本の官僚機構による謀略も含めた様々な手段により乗っ取られてしまったからである。しかたなく、柄谷行人のいうように、異議申し立てをするには「街頭に出よう・デモに行こう」となったのであるが、それに続く戦略を見通せないまま選挙戦に突入させられてしまった。「低成長社会という現実の中で、脱資本主義化を目指すという傾向が少し出てきていました。しかし、地震と原発事故のせいで、日本人はそれを忘れてしまった。まるで、まだ経済成長が可能であるかのように考えている。だから、原発がやはり必要だとか、自然エネルギーに切り換えようとかいう。…原発事故によって、それを実行しやすい環境ができたと思うんですが、そうは考えない。…地震のあと、むしろそのような論調が強く」なってしまったと述べている。(柄谷行人HP)日本人が「経済は成長しない」ということを自覚しない限り脱原発は難しい。今後、日本は米欧の核の植民地と化し、原発事故の放射能による安楽死が待っている(ベラルーシ、ウクライナもロシアもチェルノブイリ原発事故後、急激に人口が減少している)。 

 【出典】 アサート No.421 2012年12月22日

カテゴリー: 原発・原子力, 杉本執筆 パーマリンク