【投稿】民主党再建は可能か 

【投稿】民主党再建は可能か 

 3年前の政権交代が、ある意味で「歓喜をもって」迎えられたのと対照的に、今回の自民党の過半数獲得という総選挙結果は、「熱狂なき政権交代」と、どこかの新聞が報じている。景気対策の実行という自民党の主張が、景気低迷の日本にとって受け入れやすいものであったことは事実であるにしても、それだけが、今回の総選挙を規定するものでもない。むしろ、低投票率(前回は、69.28%、今回は59.52%)が象徴するように、政治不信が強まったことを直視することが必要であろう。前回の選挙では、民主党政権に期待し投票した国民の多くが、投票先に迷い、「第三極」の維新に流れるとともに、前回から棄権した票が1000万票に達している。(今回の比例票数は6017万票、前回から1019万票が棄権している)。壊滅的大敗を喫した民主党については、党再建そのものも厳しい状況に至っている。

<国民に見放された民主党>
 それでは、何故民主党は、3年前の支持を失ったのか、ということである。直近の最大の問題は、政権交代マニュフェストにもなかった消費税増税を、3党の密室協議を基に強行したことであろう。選挙結果が示しているように、消費税増税問題は、今回の選挙での争点になったとは言えない。増税法案に賛成した自民、公明が議席増となった。消費税増税反対の「未来の党」も伸び悩んだ。ひとり民主党が支持を失った。
 消費税増税を重要課題とするなら、あるいはそう判断したのであれば、増税を争点にして解散総選挙を断行すべきであった。この場合は、まさに国民に信を問うものであるから、政治の常道として、審判をうけることが出来る。なぜこのやり方を取らなかったのか。
 そして、増税法案の国会議決に絡んで、結果として党の分裂が起こった。前回の総選挙を仕切り、政権交代を実現した小沢グループを離党に追い込み、二大政党の枠組みから、政党の乱立という事態が生まれた。「維新」は、彼らの期待した結果に到達しなかったとは言え、比例票では民主を抜いて第二党となった(1200万票を獲得)。
 民主党は、負けるべくして負けたでのあって、まさに自滅選挙であった。自民党は比例票では、大敗した前回の比例票1881万票にも及ばぬ1662万票である。得票率もほとんど増えていない。自民党の単独過半数は、民主党の自滅によって生まれたと言ってよい。まさに「熱狂なき政権交代」なのである。
 
<原点を見失った民主党>
 1994年の民主党結党大会では、社会党の一部、そして日本新党G、社民連系などが、民主リベラル(中道右派?)の路線を軸に、政権交代可能なリベラル勢力になることを目標にして新しい政党=民主党が生まれた。その後、民社党系や小沢Gなどが合流し結党以来15年を経て政権交代にまでたどり着いた。
 反自民を掲げてはいたが、その内部では、社会民主主義的なグループは退潮し、どちらかと言えば松下政経塾出身者が主流となり、新自由主義的な傾向を強めていった。小沢Gの選挙指導によって、「生活が第一」とする、より社会民主主義的な政策をメニューの中心において、政権交代を実現できた。
 今回の、大量離党や維新への鞍替え組が相次いだことを見ても、看板は民主党でも、様々な思想的傾向の議員志向者の集まりだったことも明らかであろう。
 民主党は、参議院では第一党(88議席)であり、大敗はしたが両院国会議員では145名の議員数を数える。再建をめざすというのであれば、根本的な政策的一致を最優先し、党の路線を再度明確にすることから始める必要があると思われる。(2012-12-17佐野) 

 【出典】 アサート No.421 2012年12月22日

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