【投稿】高速増殖炉もんじゅの運転再開

【投稿】高速増殖炉もんじゅの運転再開
福井 杉本達也

1 因縁めいた連立政権下でのもんじゅの再稼働
民主党は原子力推進が基本的立場となっている。昨年8月のマニュフェストでは、「安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む」とし、さらに政策集では、再処理や放射性廃棄物処分について、国が技術の確立と事業の最終責任を負い、安全と透明性を前提にして技術の確立を図るとしている。また、連立政権での3党連立政権合意書の中には、原子力政策に対する言及はない。合意書では「調整が必要な政策は、3党党首クラスによる基本政策閣僚委員会において議論し、その結果を閣議に諮る」としており、原子力政策は位置づけが全く不明確のまま地球温暖化対策という名目の下、強引な推進政策が展開されようとしている。
こうした中、高速増殖炉もんじゅは1995年12月に二次系配管室で起きたナトリウム漏れ事故から14年5カ月ぶりに5月6日に運転を再開した。14年間も停止した原子炉の再開は世界的にも例がない。ところで、16年前にもんじゅの稼働ボタンを最初に押したのは、当時、細川連立政権下で科学技術庁長官であった江田五月現参議院議長(当時:社民連)である。今回の連立政権下での再稼働は因縁めいた感触が拭えない。

2 全ての想定が誤りであった高速増殖炉開発
高速増殖炉を開発する目的は(1)ウランは希少であり,低コストで採掘できる鉱床は早期に枯渇してしまう。(2)増殖炉は,軽水炉との経済的競争カを早期にもつようになる。(3)増殖炉は,軽水炉と同じぐらい安全で信頼性のあるものになる。(4)増殖炉と、それに伴う燃料サイクルの核拡散リスクは,対処しうるというものであった。しかし、これらの想定は,すべて間違っていることが判明した。
2009年6月の「総合資源エネルギー調査会小委員会報告」の「天然ウラン需給の見通し」では「現在、核兵器の解体に伴うウラン供給等により、濃縮ウランの需給バランスが保たれているが、ロシアの解体核兵器からの濃縮ウランの供給は、2013年で停止される可能性があり、世界的な需要拡大に伴い世界的な供給不足に陥る可能性がある。」と書かれているが、OECDの原子力機関が「2008年に出した隔年報告書によると,インフレにもかかわらず,130 $/kgU未満で採掘できるウランの在来型確認埋蔵量〈世界全体〉比は約470万tから約550万tに増加している」(雑誌『科学』2010.2フランク・フォンヒッヘル「プルトニウムの科学・各国の増殖炉計画の経験と現状からの考察」)のであり、一時的に投機的な動きがあったとしても枯渇したり価格が急激に高くなることはない。
また、軽水炉との経済性では、「高速増殖炉の建設単価については、たとえば原型炉「もんじゅ」は電気出力28万kWに対して建設費5900億円となっており、発電容量あたりの建設単価は210.7万円/kWである」。また、使用済み後のウラン燃料の直接処分を1とすると、MOX燃料の再処理は1.87倍であり、「高速増殖炉は、建設単価、サイクルコストの両面で経済性がないと、現在よりもウラン価格が10倍以上高くならなければ、直接処分よりも経済的に優位ではないことがわかる。」(地層処分問題研究グループ 「核燃料サイクルのコスト評価について」2004.9)としており、全く破綻している。
増殖炉は、中性子の速度を落とす減速材(水)を使用しない。連鎖反応を継続させる中性子が「高エネルギー」(高速)のままでいるようにするためである。中性子は水の原子核と衝突すると急速に速度が落ちる。そこで、増殖炉の冷却材には,溶融ナトリウムを使用する。ナトリウムは,水と比べ,冷却材として安全性上の大きな短所をもっている。空気に触れると,水分と激しく反応し燃える。また、軽水炉においては,冷却材が失われた場合、連鎖反応は止まるが、増殖炉では,プルトニウムの濃度が高いため,冷却材がなくなっても,連鎖反.応を維持し続け、炉心はその高熱のため崩壊するに至り、さら高度な超臨界形状となり,炉心がチェルノブイリ原発事故のように吹き飛んでしまう可能性もある。さらに、冷却材である溶融ナトリウムは空気に触れると発火し・また、水のように透明ではないため、原子炉容器内の燃料取替えや修理を複雑かつ困難なものとしている(『科学』同上)。

3 プルトニウムの管理の問題
周知のように、プルトニウム約6kgで原爆1発が作れるという。日本における分離されたプルトニウムの量は六ヶ所村の再処理工場が“順調”に稼働すると仮定すると、海外処理の返還分と合わせ、2020年には約120トンという膨大なものになる(『科学』2010.2勝田忠広・「日本のプルトニウム需給バランス」)。しかし、このような大量のプルトニウムをどう管理していくのか。
わが国は、原子力開発利用を平和目的に限るとしている。また、核不拡散条約(NPT)に加盟し、全ての核物質に対して国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れることとなっている。もんじゅの運転は、回収されたプルトニウムの利用を前提としており、核不拡散問題について国際的に懸念を生じないよう、核物質管理に厳重を期し、必要な量以上のプルトニウムを持たないようにすることを“建前”としている(1981.8「我が国における核燃料リサイクルについて」)。当初の計画では、増殖炉の常陽・もんじゅで70~80トンのプルトニウムを利用する計画になっており、プルトニウムの収支は何とかつじつまが合っていたのであるが、予測される120トンという量は何とも説明がつかない。米国とその指揮下にあるIAEAがこれを“容認”にしているのは、日本を“核の傘”の下に置き、日本独自の安全保障戦略を無効化すること(考えさせないこと)、及び、プルトニウムという取り扱いの難しい物質を平時は日本の費用負担により管理させ、万が一の時に米国の管理下に置くことにある。

5 もんじゅは地域振興に寄与するのか?
もんじゅという「迷感施設を引き受けた見返りに地域振興を引き出そうとする受け身の姿勢を脱し、自立的な地域振興を図ろうと県はエネルギー研究開発拠点化計画を進める。」としており、地元はもんじゅを中心とした国際的研究開発拠点の整備としてFRBプラント技術研究センター、福井大学附属国際原子力工学研究所などの活用による新産業の創出や知の拠点になることを期待している(福井:2010.5.3)。また、県は北陸新幹線の金沢から福井までの延伸を要望している。
しかし、増殖炉や軽水炉などの原発は本当に新産業などの創出になるのか。周知のように、原発機器のほとんどは、三菱・東芝・日立といった重電メーカーが製造している。また、軽水炉の最重要部品である圧力容器などの鍛造品は日本製鋼所が製造している。こうしたメーカーの個別技術の集積が原発プラントを構成しているのであり、逆ではない。プラントがいくら集積しているからといって新しい技術を生み出すものではない。さらには福井県にはそのようなプラントを修理する企業の集積もない。これでは技術の波及効果を期待しても無理がある。地元の構想する「エネルギー拠点化計画」は幻想でしかない。また、こうした計画の一環として、福井県立病院内に陽子線がん治療施設を建設した。しかし、治療費は県が補助しても240万円もかかる。健康保険の適用外だからである。保険適用とならないのは陽子線治療が前立腺がんなど一部の治療にしか明らかな効果が認められないことにある。設備費はシンクロトロンなど約100億円といわれ、三菱電機が受注しており、財源は電源交付金であるが、カネはみごとに原発企業に回収されており、地元振興に役立つとは思えない。

高速増殖炉は将来、実用化につながる可能性はなく、経済的にも成り立たず、溶融ナトリウムの取り扱いに苦慮して欧米諸国も撤退した技術である。さらには、核兵器用の高純度のプルトニウムが容易に生産できる。しかも、もんじゅ直下には活断層の存在も明らかとなっており、耐震安全性についても疑問が深まっている。民主党の核燃料サイクルを強引に推進しようとする流れを転換させねばならない。

【出典】 アサート No.390 2010年5月29日

カテゴリー: 原発, 杉本執筆 パーマリンク