【コラム】ひとりごと—第2のセーフティネット論について—

【コラム】ひとりごと—第2のセーフティネット論について—

○昨年末の日比谷公園・「年越し派遣村」の経験から、新政権はこの年末を迎えて、就労・住居・低利融資・多重債務・自殺防止など、様々な問題について、離職者・求職者・失業者を対象に、11月30日にワンストップサービスの取り組み(試行)を行った。全国の政令都市を中心に77箇所のハローワークで実施され、2404名の利用があった。○失業・離職対策には雇用保険給付があるが、実態として、非正規雇用の場合、雇用保険にさえ入っていないケースが大半である。ハローワークにおいては、就職斡旋に加えて職業訓練と生活給付がセットになった「基金訓練」や、求職活動中の生活資金貸付などの支援策がある。○ただ、これらの新制度が利用できない場合、生活保護は福祉事務所へ、また低金利の融資の場合は、社会福祉協議会へ、と窓口が異なり、利用できる人が制度を知らされないまま、という状況も生まれていた。○そこで、反貧困ネットの湯浅氏の提言もあって、新政権の下で、失業や住居をなくした人たちへの総合的な相談窓口を全国のハローワークを拠点に整備しようという試みとして計画されたのである。○09年に入って以降、厳しい雇用環境もあり、全国で生活保護受給者が急増している。特に大都市圏である大阪・名古屋においては、昨年比5割増を越える申請があり、12月議会に提案された09年度補正予算の大半が生活保護予算の増額というのが実態である。生活保護現場は人員不足もあって、許容範囲を越えた激務となっている。○「すべり台社会」と言われるように、最後のセーフティネットである生活保護制度が、最初のセーフティネットとなっている。そこで、最近主張されるようになってきたのが、「第2のセーフティネット論」である。○2・3年前は、弁護士同行でホームレスさんが福祉事務所に申請に来るケースがよくあったように記憶している。当時は、自立支援センターがある場合、そちらを優先して利用する場合が多かった。弁護士からは、生活保護の申請権を犯していると批判されたものだった。しかし、自立支援センターでは、多重債務については弁護士相談が実施され、職業訓練を希望する方には、入所中に訓練を受けてもらい、求職希望の方には、ハローワークから出張して出向いてもらい、就職の斡旋を受けることができた。結果、生活保護に至らず、社会復帰することができる方が多かった。まさに、社会復帰のための「ワンストップサービス」が提供されていた。○逆に、「貧困ビジネス」の餌食になり生活保護を受けたが、ひどい仕打ちをうけたホームレスが続出し、搾取される悲劇があとをたたない。○最後のセーフティネットの一歩手前の対策の充実が、必要なのである。生活保護に至らないように、職業訓練給付や低利融資などを充実するということである。私も大いに賛成である。企業内福祉が枯れ、家族の支援も得られない場合従来であれば生活保護がしかない。しかし失業状態にある人々は、働く力があっても仕事がない。これまでは失業しても職業訓練やスキルアップを給付付きで保障する仕組みは真剣に制度構築されてこなかった。○生活保護制度は、最後のセーフティネットということもあり、資産調査などが厳しく「入りにくく、出にくい」制度となっている。私はもっと簡素な制度設計にしていく必要があると感じている。○働く力と意欲のある方には、雇用対策の充実こそ必要である。○数年前から、生活保護のメニューの中に、「自立支援・就労支援」が盛り込まれた。昨今の厳しい雇用情勢、すなわち、解雇自由に近い派遣など非正規雇用の増大とその縮小という資本の側の勝手な都合で生み出された現下の厳しい雇用情勢の責任は、企業と社会が、その再構築のコストを負担すべきなのである。○雇用・離職者対策はハローワーク、住宅手当・生活保護は福祉事務所、低金利貸付は社協、というように、元々別々の機関で、別々の予算で実施されている。今回のワンストップサービスは窓口の一本化を目指しているが、本来は失業対策自身の総合化的な発想が必要なのである。12月は21日を中心に再度の取り組みが行われる。諸制度の総合窓口化に止まらず、安心してリスタートできる雇用対策の再構築と充実が求められている。(2009-12-14佐野) 

 【出典】 アサート No.385 2009年12月19日

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