【コラム】ひとりごと—政治を堕落させている自民党・公明党政権—

【コラム】ひとりごと—政治を堕落させている自民党・公明党政権—

○奇妙な政権末期である。内閣支持率は小沢ショックによって一時回復したが、鳩山問題で、再び25%(09-06-15日経調査)、朝日・毎日調査では、20%を下回っている麻生政権に対して、「発言には気をつけて」のような苦言は出ても、政権離脱も含めた連立そのものの是非についてのメッセージが公明党から出てこない。○そして今回の総選挙も連立に向けた政策論議や連立政策の提示・公開もないまま、自公連合のままで総選挙に臨みそうな様子である。○これほど政権に擦り寄る「政党」があっただろうか。ここまでくれば、自由公明党でも合同・結成して、国民の信を問うために総選挙に臨むべきなのである。○国民の声に耳を傾けず、政権入りだけが目的、これが現在の公明党の姿であり、公明党=創価学会の組織力なくして選挙も闘えない自民党。このふたつが「野合」しているものが、現在の麻生政権に他ならない。○最近2冊の公明党=創価学会を扱った書籍を読んだ。1冊は、矢野絢也氏による『黒い手帖–創価学会「日本占領計画」の全記録』(講談社2009-02)であり、もう1冊は、白川勝彦氏による「自公連立解体論」(花伝社2008-10)である。○矢野絢也氏は公明党委員長経験者だが、今は学会から異端者として執拗な攻撃を受けている人物である。学生以来学会員だった矢野氏が昨年5月に家族共々に創価学会を脱会。「黒い手帖」には、公明-学会の暴力・陰謀・マスコミ支配までも、すべて明らかにしたという内容となっている。○矢野氏によると、公明党ー創価学会はこれまでに三つの大きな危機を乗り越えてきたという。一つ目は、1970年の言論出版妨害事件による政教分離問題、第二は、日蓮正宗との対立と破門、三つめは、1990年代中盤の選挙制度の改正=小選挙区制の導入であった。○しかし、小選挙区制は、一面では公明党議員数の拡大に歯止めをかけることになったが、自公連立という枠組の中では、学会票と動員力を駆使して、逆に与党自民党を「支配」することが可能になった。○現時点では、次の総選挙において、自公が少数派に転落する可能性もあり、矢野氏は、公明ー学会幹部は、戦々恐々の状態であるといい、今まさに、4つ目の危機を迎えていると指摘する。○本来公明党には、平和と福祉の党というイメージがある。矢野氏もかつてはそうであったという。しかし、池田大作氏を守るために、連立与党に参加する選択をした以上、消費税にしろ後期高齢者医療、自衛隊の海外派遣などに対しても、自民党との連立を優先して、賛成の立場に回らざるをえなくなり、すでに党内議論も圧殺されているという。○矢野氏は、公明党=創価学会からの脅迫・「暴力的」対応に対して、裁判も起こしている。黒い手帖とは矢野氏の国会議員時代の克明な記録を記した100冊に及ぶ国会手帖である。政教一致があったとする手記を文藝春秋に掲載した矢野氏を批判する学会側は、貴重な資料としての国会手帖を、元公明党議員3名を矢野氏の自宅に向かわせ、脅迫によって持ち去った。生命の危機すら感じさせる状況も綴られているのである。○一方、白川氏は元自民党国会議員であったが、自公連立に原則的反対の立場であった。そのため、当時の野中幹事長によって重複立候補順位を後位にされ、惜敗率はトップであったが落選。その後も執拗な妨害を受け、現在は弁護士活動をされている。○白川氏の論理は明快である。憲法20条に照らして、公明党=創価学会の政権参加は憲法に抵触するというものである。憲法20条には「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と書かれているのである。○そして、自公政権について、森田実氏の文章を引用して批判する。すなわち、「・・・大義名文がなくなった自民党との連立を(公明党は)解消すべきである。自民党と公明党の連立の唯一、最大の大義名分は、参議院での過半数確保にあった。参議院での自民党の議席数が過半数に不足したため、数を補うために連立したのである。だが、去る7月29日の参議院選挙で自民・公明の合計が過半数に達しなかっただけではなく、民主党単独の議席数をも下回った。自民党は衆議院では過半数を上回る議席をもっている。これで政権は維持できる。公明との連立してもしなくても状況は変わらない。自民党と公明党が連立する意味も、大義名文もなくなったのである。それでも両党が離れられないほど一体化しているのであれば、合同すべきである。大義名分なき連立は政治を堕落させる。」と。○さらに公明党は、選挙区での自公連携を通じて、足腰の弱った自民党を支え、実質「支配」していると、白川氏は、その危険性を指摘しているのである。○いよいよ総選挙が近づいている。自民党と連立を組んでいる公明党が、野党に転落した場合どう動くのだろうか。○一方、民主党は、マニュフェスト作りを加速させており、最近になって社民党と国民新党が、総選挙後の連立に言及をし始めたことは、民主党を中心とする政権交替の可能性・現実性の印象を国民に与えている。政策の一致を前提にしているが、連立の土俵に乗ろうという意思、政策の一致点を追及しようという姿勢はまったく正しい。○小泉改革の評価をあいまいにしつつ、不況下の景気再生論議だけで政策転換させつつある自公の「政治的堕落」と対照的である。○名古屋市・さいたま市・千葉市と続いて政令都市市長選挙では、民主党推薦候補が自公候補者を倒して当選し、いよいよ東京都議選が来月に迫っている。○投票率が低ければ、自公協力で勝てるなどという「民主主義否定」の野合連立に引導を渡す日が近づいている。(2009-06-16佐野)

 【出典】 アサート No.379 2009年6月21日

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