【コラム】ひとりごと–橋下大阪府知事は何処を向いている—
○またしても大阪府民は、間違った選択をしてしまった。先の選挙で、タレントで「弁護士」の橋下知事を誕生させてしまった。○テレビに良く出ていたというだけで、若い人たちは、橋下に投票したのだろう。東京・石原、宮崎・東国原、大阪・橋下と続いている。○今回の知事選挙では、選挙直前になって、前知事の金銭管理問題が浮上し、民主・自公ともに、前知事の推薦を断念することとなった。選挙の1ヶ月前のことであった。○そして従来の支持構造が変化した。昨年11月の大阪市長選挙では民主対自公の構図で、民主候補が勝利したこと、政権交代・衆院選挙も睨んで、地方における相乗り批判、与党対野党の構図がまず生まれていた。そこへ失地挽回をめざす自民党の要請を受けた橋下が乗っかり、民主も大学教授を擁立するという構図で、事実上、与野党3候補の立候補となったわけである。○このように短期戦であったため、知名度が決定的であったことは否めない。○橋下候補は、知名度を逆に生かして、ドブ板作戦。何もしなくても人は集まる。民主候補は、有名人・政党首脳も乗り込んでの街頭作戦となった。○結果は、ダブルスコアーで橋下知事が誕生したのであった。それでも、短期戦、知名度で劣勢であったとは言え、民主候補の100万票近い得票は、評価できると思っている。民主の力も捨てたものではない。大阪の良識票と評価したい。○そこで、橋下知事である。残念ながら品格も良識もない事が、2週間も経たない内に露呈してきているのは、当然と言えば当然でもある。○公約は、すでにいくつかが放棄された。府債発行は一切認めないと当選時に発言したが、レクチャーの後に撤回。○首相との面談や駅伝参加など、マスコミ受けする行動はお好きなようで、府民・府政よりも、カメラがお好きなようである。○また、現代っ子よろしく、よく「キレル」。これもマスコミネタ提供サービスでもあろうか。○「大阪府は財政破綻状態、破産企業の職員の賃下げは当たり前」と言い放つ。賃金カットで財政再建ができるとでも思っているのだろう。しかし、すでに知事部局職員は1万人前後(20年前は2万人以上だったはず)。警察・教員も含めて、財政破綻の責任は職員にあるという論理は、どこまで通用するのだろう。それこそ、職員組合、議会含めて、橋下包囲網が早晩形成されることだろう。○さらに、効率の悪い公共施設の身売り・廃止を打ち出している。人権関連・労働関連の施策・施設に対しても同様に、縮小の対象とするのは必至であろう。これでは、単なる貧乏神である。与党には擦り寄るだけ。地方から政治を変える気概もない。○そもそも橋下は一体何が専門の弁護士なのだろうか。債権取立ての代理人に、彼の名前をみた行政マンは多いはずであるが・・・○彼を担いだ自民・公明府議団が、誤りに気付くのはそう遠くはないはずで、むしろ、もう気付いているのではないか。○府民・職員・議会を敵に回すことは確実であろう。ただ、信念も政治信条もあるのかないのか、分からない方なので、直ぐに豹変し、撤回し、媚を売る方向に修正する可能性も大いにある。政権交代があったら、与党の言うことは聞きます、とまた豹変するのだろう。ノック知事に続いて、この知事である。大阪府民は、また一から学習しなければならないとは、不幸という他はないのである。(佐野)
【出典】 アサート No.363 2008年2月23日