【投稿】9.11から5年–「悪の枢軸」化する日米同盟

【投稿】9.11から5年–「悪の枢軸」化する日米同盟

<反米活動を拡散させたアメリカ>
 9.11同時テロ事件から5年が過ぎた。アメリカ、ブッシュ政権は「対テロ戦争」を口実に、アフガニスタン、イラクを攻撃、タリバン、フセイン両政権を崩壊に追い込んだ。
 しかし、この間にもスペイン・マドリードでの列車爆破(04年3月)、イギリスロンドン・での地下鉄・バス爆破(05年7月)、インドネシア・バリ島などでの連続テロなど、イスラム原理主義組織の犯行とされる事件が頻発している。
 先月には、イギリス発の米旅客機爆破を狙ったテロが、未然に発覚、国際テロは封じ込められるどころか、かえって拡散、増加していることが明らかになっている。またアメリカがテロの首謀者とするビンラディンについては、生死・所在も不明であり、アルカイダも「なりを潜め新たな攻撃を準備している」との見方がもっぱらとなっている。
 アフガン、イラクでは「新政権」が誕生したものの、その基盤は脆弱でNATO軍やアメリカ軍による事実上の占領が続いる。とりわけイラクでは、アメリカ軍による住民虐殺などが後を絶たず、国民の激しい抵抗が繰り広げられ、またイスラム各宗派などの抵抗組織同志の衝突やテロにより内戦状態となっており、開戦以来の市民の犠牲者は4万人近くに達している。
 さらにアフガンでも復興が進まない中、タリバンが勢力を盛り返してきており、各地で激しい戦闘が続いている。アメリカ中央軍司令部のキミット准将は「タリバンが強くなっていることに驚いた」と焦燥感を露わにしているが、アメリカ軍はイラクで手一杯で、アフガンへの増派の余裕はなく、治安回復の目処は立っていない。
 パレスチナでは、イスラエルがレバノンに大規模な侵攻を開始したが、ヒズボラの徹底抗戦で制圧に失敗、国連による停戦を受け入れざるを得なくなった。オルメルト政権は戦争推進派と反戦派の双方から厳しい批判を受け、窮地に立たされている。
 当初アメリカはイラク西部の強力な抵抗組織の壊滅と、それを支援するシリアへの圧力強化のため、イスラエルの侵攻を歓迎した。しかし、一般市民の犠牲が拡大し、日増しに高まる国際的な批判の前に、軌道修正を余儀なくされた。この事態にヒズボッラーやハマスを支援しているイランはますます自信を深め、アフマディネジャド政権は核開発を推進、アメリカとの対決姿勢を強めている。

<孤立深める日米両政権>
 キューバのバハナで開かれた非同盟諸国首脳会議では、イランだけでなく、ベネズエラのチャベス大統領を始め中南米、アフリカ諸国の首脳が相次いでアメリカの一国行動主義を非難、極めて反米色の強い共同声明を採択し、反米やいわゆる非米のうねりが強まっていることが確認された。
予想外の展開に、アメリカを軸とする有志連合の綻びが拡大している。欧州ではスペイン、イタリアの政権交代を受け、フランス、ドイツの「古いヨーロッパ」が優勢となり、イラン核問題、パレスチナ問題でも強硬姿勢を崩さず、イスラエル支持一辺倒のアメリカとの距離を広げつつある。アフガンに派兵しているNATO諸国も、情勢の悪化により方針転換を迫られる可能性がある。
 これまでアメリカの最大のパートナーだったイギリスも、ブレア首相が与党・労働党からの批判に晒され1年以内の辞任を表明、政府は混乱し末期的症状を見せつつある。欧州でアメリカへの支持を明らかにしているのは、対ロシア関係からアメリカに頼らざるを得ない、旧社会主義国のみと言っても過言ではない。
 このように「対テロ戦争」勝利の展望が一向に見えないなか、ブッシュは同時テロから5年目の9月11日、ホワイトハウスから国民に向けテレビ演説を行った。ブッシュは「今、敵を倒さなければ、核武装したテロ国家と急進的独裁者が支配する中東を子供たちに引き継ぐことになる」と戦争の正当性と中東民主化の必要性を強調し、国民の団結と支持を請うた。
 イラク侵攻の大義名分であった「大量破壊兵器」の存在や、アルカイダとフセインの関係も否定された今日、ブッシュは「対テロ戦争」を「文明を守るための闘い」「21世紀の重要な思想闘争」と強弁、詭弁を呈して、実は自らが最も危険な原理主義者であることをさらけ出している。
 しかし、中間選挙を目前にしながらブッシュの支持率は30%前後で低迷したままであり、国民の団結どころか「対テロ戦争」の口実となった「9.11」さえ、政府の「自作自演」ではないかと疑念が国民の間に広まっている。
またブッシュが議会に承認を求めている、「テロ組織メンバー」への拷問合法化を目論む特別軍事法廷設置法案に対しては、パウェル前国務長官をはじめ共和党有力議員からも反対の声が上がっている。こうした状況ではブッシュがいくら自らの戦線への結集を国民に、世界に訴えてみても空虚に響くのみである。
 孤立を深めるブッシュに対し、脱落しつつあるイギリスに変わってパートナーに名乗りを上げているのが、日本政府である。小泉首相は戦略外交の一環として中央アジア諸国、モンゴルを相次いで訪問した。これはアメリカが「不安定の弧」とするユーラシア地域で、影響力を拡大させつつある上海協力機構に楔を打ち込む狙いがあった。しかし、退任間際のあたふたとした外遊は、表敬訪問を超えるものではなかった。
 安倍新政権は、小泉の日米同盟の強化、東アジアでの孤立路線を継承、さらにそれを強めようとする構えである。新政権がこうした道を歩む限り、国際的な孤立は避けられず、それがますます日米同盟を危険なものとし、実はそれこそが「悪の枢軸」に他ならないと評されるだろう。(大阪O)

 【出典】 アサート No.346 2006年9月23日

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